『そもそもの話、俺が何でこんなことをしているのかやけど…。まぁ当然この11人のクズどもが俺を理不尽に痛めつけて辱めてきたっていうのが一番の理由や』


 演説のように語りだす俺を、全員が緊張と怯えが混じった顔で注視している。

 『それなら、ただこの11人だけが悪いのでは?ってそう思う奴はおるんとちゃうか?
 自分らは関係無い、そもそも知らなかった…って言いたくてしゃーない連中はそれなりにおるやろうな。特に一年生どもなんかはそう思ってるやろ。
 だけどそんなの俺にとってはどうでもいいことやねん!悪いけどお前らにもな、この虐めの件に関しては連帯責任として処刑されてもらうで!
 恨むなら俺を虐めたこの11人と、虐めを放置してた教師どもにするんやな!十割そいつらが悪いんやからさぁ!』

 残酷な死刑宣言を告げられた大半の生徒らは、ここからでも分かるくらいに顔色を悪くさせているな。中には首をやたら振ったり口を必死に動かして叫ぼうとしてるのもいる。

 『あーあー、お前らが理不尽だって文句言いたい気持ちは伝わってきたわ。そらそうやな、関係無い・知らない自分らが殺されるとか納得いかへんわな?何でお前らを殺すのか、連帯責任なんて言ったのか』

 そこで俺は苛立たしげに床を思い切り踏みつける。全員ビクっとして静まり返る。

 『俺はこの二年半で!この学校に対して心底憎悪を抱くようになった!
 虐めの主犯ども、教師ども、クラスメイトども!それらをひっくるめてこの学校が憎くて仕方がない!!
 俺を虐めるわ辱めるわ、そんな俺を助けようともせーへんわ助け呼んでも反応してくれへんわ、虐めの件どうにかせーへんわ隠そうとするわ!
 この学校は俺の“敵”になったんや!
 だから全部潰す。全部滅ぼすことにしたんや......当然お前ら全員殺すというやり方で...!』


 言葉に怒りと憎しみ、狂気を乗せてここにいる全ての生徒・教師に聞かせる。クラスメイトや教師陣は俯き、他は震えているだけ。


 『そうや。ここらでちょっと、お前らに質問するで?


 《《誰のせいで》》俺をこんな人間にしたんやと思う?《《どいつらのせいで》》お前らまでこんな事態に巻き込まれたんやと、思いますかー?』


 途端、体育館内の空気が変わった。主に関係の無い生徒どもが顔色を変えて俺を注視している。良い傾向や...。

 『いったい何が原因で、自分らは今こんな目に遭ってるんやろうなァ?俺がこんなになるまで追い詰められて、凶暴化して、みんな殺すーとか言うようになってしまったんは...どこのどいつらが原因なんやろ...?
 はい、ここでお前らに答えを言う権利を上げます!挙手せんで良いから答えてみ?あ、ちなみに質問の答え以外のどうでもいい発言した馬鹿は、ぶち殺すから』

 そう告げてから、全員の口枷を解いてやる。教師どもも解放してやったが、脅しが効いたのか誰も意見する奴はいない。この学校の教師どもは肝が小さい小物ばかりやな。

 と、やがてどこからかポツリと声が上がった。


 「............壇上の上にいる人たちの、せい?」
 「全く止めようとしなかった先生たちとか...」
 「あの人のクラスメイトらも止められたのに何もせーへんかったよな?」

 ―――十分や。今ので良い答えが聞けた。ほな、話進めよか...!


 『―――そうやっ!!原因は、このクズ11人と、コイツらに対し何のお咎めもしなかったクソ教師ども、さらには虐めを傍観していたこことは別のとこへ隔離させてる俺のクラス連中や!!
 コイツらが俺に対して散々で理不尽な仕打ちと無視をしたせいでなァ!
 それで俺はこんな人格・性格になってしまって、無関係なはずのお前らまでここに連れて来られてきたんや!
 この低脳なゴミクズどもと、あの無能教師どもと、傍観者を決め込んだ薄情なクラスメイトどもが全部悪いんやっ!!
 こいつら全員が俺に理不尽を強いた結果がこの状況や!!

 全部全部っ、主にこの11人と学校を運営している大人どもが悪いんやっっ!!!』


 俺の感情的な訴えで、空気が変わった。有象無象どもの視線が俺から今指定した連中に移る。だがそれらの視線には先程の恐怖や怯えは無く、非難や憤りの感情が込められていた。


 「お、おい...何やねんお前ら......」
 「な、何睨んでん、ねん......」
 
 クズ11人は荒い言葉で脅しているが、数百人からの非難めいた視線に気圧されたのか迫力が全く無かった。
 教師らも奴らの異様な雰囲気に呑まれてやや萎縮し出している。生徒にナメられまいと必死に威厳を保とうとしている奴もいるが、この状況下ではただの虚勢だ。教室内にいる五組の連中もこの空気に恐怖している。