ある程度の質問をして、それら全部答えてもらったことで、現在の状況を大体分かることができた。

 今の「俺」になる前の自分が気絶してから三日が経っていて、今日は土曜日だ。学校は少なくとも二日欠席していたことになる。次に登校する日は明後日だ。年月については俺の記憶を見たことで分かっている。

 俺は中学3年の15才で、今月は10月だ。



 いくつか問答をした後、退院したいと言ってみたが首を横に振られる。なので――




 「一応検査とかしなあかんから今日一日はここで安静にし――」
 「 “いえ大丈夫なんで。今すぐ俺を退院させて下さい”」




 医師と看護師を凝視して、二度目の人生でよく使っていた催眠魔術を発動してみる。


 「.........せやな。何も問題無いようやし。この後退院手続きを――」
 「“もう手続きも終わったんで、帰らせてもらうで?”」
 「.........ああそうやった。もう終わったんや。じゃあ、気ぃつけて帰りや」




 実験は成功。以前と同じ、催眠術が使えているってことは“引継ぎ”は成功している!体内で力を込めると魔力も感じられることから、魔力と魔術ともにしっかり宿しているし使えもするようだ!




 “この病院内に勤めている人間全員、俺に関すること全ての記憶が消える”




 パンッと手を鳴らして俺がここで入院されたことはなかったことに書き換えて病院を出た。ここは河内総合病院。ここから自宅まで歩くと40分はかかる距離だ。
 試したいことはまだある...身体能力検査だ。
 人払い結界を大きめに張って誰もいなくなってから運動を始める。まずはダッシュ......した瞬間、もの凄いスピードが出てそのまま建物に勢いよく突っ込んだ!壁に思い切り激突したにも関わらず体には傷一つついていない。砕けた壁の大きめの厚い破片を握ると砂粒状に砕けた。
 結果、スピード・耐久性・筋力全てが引き継がれていることが判明。


 「強くてニューゲーム」に成功したことを理解したぜ...!


 さらに手を空に掲げて、炎、風、水、雷など様々な属性の魔術を放ってみた。全て以前と同じ出力だった。これも問題無し。




 「完全に二度目の人生で死ぬ前の時と同じスペックや!違うのは顔と身長と体重...この体の器くらいか。それ以外は全て引き継がれてる!大成功や。俺はあの力を持ったままこの時代にやって来れたぞっ!!」




 両手を上げて快哉を上げる。中学生になってから久々に笑顔になった気がする。


 「そういえば、今の俺は......二度目の人生の俺の人格が中学生の俺を完全に乗っ取ってる状態なんか、この時代通りの俺なんか、どっちなんやろ...?」


 生前の俺か、15才当時の俺か。まぁどっちも俺だ。俺は俺や。どっちでも良い。意思は同じ、意志も同じなら問題無いやろ。
 試運転を終えて俺は瞬間移動で自宅へ戻った。夜時間になっているから中には二人とも在宅している。インターホンを押して母を呼んで開けてもらう。俺を見た母が驚いた顔をして俺に質問をする。




 「いきなり倒れてビックリしたけど...もう体は平気なん?」
 「ああ平気や。騒がせてしまったみたいでごめんやで」




 感情の無い声でそう返してズカズカと玄関に入り自室へ籠った。医師から聞いたが、俺が入院した以降、一度も家族は訪れなかったそうだ。分かってはいたがここまで無関心だったとは笑えるわホンマ。




 お陰で何の躊躇いなく「実行」できるわ...。




 「決行日は明後日か。明日は復讐のプラン編成と魔術の試し撃ちをやろうか。身長が縮んだ分、筋力は少し衰えているからそんなにデバフをかけないで良いかもな。どれくらいの加減が丁度良くあいつらを長く甚振れるかの調整と、どうすればあいつらにいっぱい地獄を見せられるかのプラン練りを早速するかぁ、くくく...」


 異世界で復讐の準備をしていた頃のワクワク感を滾らせながら俺は準備に取りかかった。


 日曜日は予定通り丸一日復讐の準備活動にいそしんだ。



 その一方で、俺が死ぬほど嫌っている行為…路上喫煙をしていたゴミクズどもの「粛清」を、ノリノリで行ったりもした。やり直し人生初めての粛清…殺人だ!




 「「「っぎゃあああああ”あ”あ”あ”あ”っ!?」」」
 「るせーんだよこのクズどもが。ヤニカス行為だけじゃなく騒音も起こすつもりか?クソゴミが」




 路上喫煙していたヤニカスどもを実験台にして色々試し撃ちを実行した。

 標的は三人。一人は50代くらいのサングラスかけたオッサン。一人は短髪で眼鏡をかけた30代の小太り男。一人は同じく眼鏡をかけた白髪頭の60代老人。どれも面識は無いのだが、こいつらの顔を見ると何故だかもの凄く苛つく、殺したい衝動に駆られる。前世で会ったことがあり、こいつらに不快なことをさせられたのかもしれない。だったらこれは復讐にもなる。存分に地獄の苦痛を与えてから殺そう。


 さてまずは実験だ。どれくらいの濃度の酸が丁度良いか、どれくらいの圧力と重力で丁度良く苦しめられるか、どれくらいの強度の闇魔術がより長くあいつらに地獄を体験させられるか等々...このヤニカス三人を使ってしっかり調節してみた。




 「お、お”れだぢが、何じだっでんや!?だのむ”やめでぐれっ!!し、死ぬ...っ!!」
 「臭い口で言葉を発するな、この世の害悪が。喋れる元気がある以上はまだ大丈夫そうやな。なら少し強度上げて続けてみよか...ほいっ」
 「~~~~ヂオfんれ得GpgrpFvbkdfdふぃづ...!!」




 慈悲をかけることなく、泣き叫ぶヤニカスどもをたっぷり拷問して実験をした。途中から実験のことを忘れて、復讐をただ楽しんでいた。


 ゴッ「ぐげぁ!」ガスッ「っべぇ!」ドガッ「や、べで………!」


 小太りの眼鏡男をぶん殴って地面に這いつくばらせたのち、その顔面に拳と蹴りをさらに打ち付けまくる。泣き叫ぼうが無慈悲に、楽しみながら暴力を続けた。


 ゴン!×3「……っ!!」ドギャ!「ご…………ぇ」


 サングラスのオッサンの全身をオリハルコン製のバッドで滅多打ちにする。一振りごとに骨が砕ける音がした。頭を殴ると即死するのでそれ以外の部位を殴りまくった。途中うっかり睾丸をぐちゃりと潰したがギリギリ死ななかった。面白いくらい顔を歪めて絶叫してたので爆笑した。


 グサドスザク!「いぎあ”あ”あ”あ”あ”あ”!!痛いいだいいだ――――ッ!!」


 白髪頭の老人には痛覚を倍増させてから食器のナイフとフォークで全身を刺しまくった。刺す度に断末魔の叫びを上げるその声は汚くて耳障りだった。喫煙なんてするからそんな汚い声になるんや……なんてな。


 最後はヤニカス三人を汚い花火に変えて跡形も残らず消去してやった。


 「いずれはこの世界でもお前らみたいなクソゴミクズどもを皆殺しにしてやるからな―――」




 夜は部屋で明日のプランをずっと練っていた。あーでもないこうすべきかとしっかり考えて、悪魔をも震え上がらせるような地獄コースを練った!


 
 そして夜が明け、最高な日になるであろう月曜日は訪れる――




 「そうだ。まずはあいつらからにしようか」


 虐めの主犯連中の前に、復讐って程じゃないがどうしても「落とし前」をつけないといけない奴らがいるので、まずはそこから始めることにした...




 「お前らは俺なんか家族とも思ってへんのやろ?無関心だけかと思えば俺を内心見下して蔑んでいるクソ姉。俺が虐められているというのにロクに対応しようとしなかったクソ母。お前らなんかもう家族じゃねーよ。俺に無関心でいるなら、その感情もう要らんやろ、なァ」

 「ぐ、ぅ...!?」
 「ゆ、う、せい...!?」




 クソ母とクソ姉を、壁にめり込むくらいに押し付けて拘束して締め上げる。死なないレベルでミシミシと音を立てて締め付けながら俺は自ら家族の縁を切ることを二人に宣言する。同時に二人からある物を奪うことも告げる。


 「何、何なん...!?ごほっ、苦し...ッ」
 「友聖、止めてっ!どうして家族に、こんな...酷いこと、を...!?」
 「か、そ、くぅ??どの口がそう言ってんだよ?俺は今までずっと苦しんでいたのに親のお前は何一つ俺を気に掛けることをせずに、それどころか俺が悪いだのと突き放して、助けることはしなかった!

 お前なんか親じゃねぇ!!今日から赤の他人や。同時に、お前らから人としての感情を全部消したるわ...。

 我が子や弟にさえ感心を持たないようなお前らには、感情なんか必要無いやろ?身内を見捨てるような血も涙もないクズには無感情がお似合いやっ!!」


 俺の顔を見た母は、俺が本気だと分かったのだろう。必死に俺に制止の声をかける。
 
 「友聖!あなたがそんなに思いつめていたなんて...!私が間違ってた!お願い!これからはちゃんと友聖と向き合うって約束するから!だから家族の私たちをこんな目に遭わすのは止めてっ!!」
 「ゆう、せい...!早く、ほどい、て...!!」
 「あなたの母親を、あなたの姉をこんな目に遭わすように育てた覚えはないよ!?止めて、目を覚まして!!お互いきちんと向き合って――」


 「お前らが、今の俺にしたんやろーが。何が家族や......“消えろ”」


 そして俺は無慈悲に二人の中身を消してやった。心と感情を無に書き換えて、感情が無い蛇のような人格に作り替えた。




 「俺にはお前らから優しくされたこととか、愛情を向けてくれたこととかの経験と記憶がもう無いんやわ。何も思い出されへん。せやからお前らを蛇みたいに変えることに何の躊躇もなかったわ。家族って言っても所詮は他・人・や...。我が子を自分のことのように想う親なんて全然存在せえへんのやろうな...。じゃあな、最低のクソ家族ども」




 未練も後悔も感じてはいなかった。俺は正しいことをした。もう迷いは無い。
 前座は終わった。いよいよ本番だ...!!