テレビ局をジャックして「宣言」をしてから二日後。
外を出歩いて最初に思ったことは、道路が閑散としていたことだろうか。ヤニカスと自家用車とバイクを消すとこんなにも変わるもんやなぁ、
全然人がいねー!気分が良い。
ただ、素顔を晒すと誰もが俺を見て騒ぐというのが欠点か。まぁ良い、今はあえて素顔を晒しておく。何故なら――
「おい!おめぇやろ!?こないだあのワイドショーでおかしなことを言ってたガキは!!ふざけたことしてんじゃねーぞ!俺の車をよくも――」
――グシャ!!
ほらな。こうやって「見せしめ」を示すことで、俺がマジだってことをさらに分からせるのに有効やからな。
悲鳴を上げて俺から逃げていく有象無象どもを鼻で笑って書店へ行く。最新刊出てるかなーっと。
さらに一週間後、気まぐれで外出して帰りに何か買って行こうと思った道中で...
「っははは!実際に見るとは思わなかったなァ!スゲーや、まさかこの国で......リアル戦車を目にするなんてなァ!」
目の前にはなんと、アニメや漫画で見たようなあの戦車があった!デカい砲筒を搭載した戦車が十台はある。
しかも上空には戦闘機も飛んでいる。おお~~銃器搭載のこれまたフィクションでしか見たことないやつや!で、人間の方は...警官に自衛隊...あれは「スタット」とかいう特殊部隊か?
あと...米軍もいやがるなぁ。沖縄からわざわざ出向いたのか。なるほど、この国の全ての武力をかき集めて俺に差し向けたゆーわけか。
「一応聞くけど、お前らは俺とドンパチでもおっぱじめる気か?俺言ってたはずやけどなぁ、軍隊が来ても返り討ちにできるって」
「杉山友聖!お前のやってることはただの殺戮だ!これ以上お前の好きにはさせない。お前を殺害する許可が下りたので、ここでお前を殺すっ!!」
恰幅の良いオッサンがよく通る声で俺の死刑宣言を唱えた。
「殺すってw へぇ~~平和が売りの日本国が、穏やかじゃない指令を出したんやなぁ。誰の差し金?」
「これ以上話をする気は無い!罪の無い国民をたくさん殺した罪をここで贖え!!――攻撃用意!!」
俺との対話を早々に切り上げて、早速攻撃を仕掛けてきた。平和ボケした国だとばかり思ってたが躊躇しないで殺しにきたな。嫌いじゃねーぞそういうのは!
「けど...相手が、悪過ぎた、なァ!!」
弾丸の雨を、強固なバリアーで全て防ぐ。弾切れしたタイミングを狙ってすかさず前を駆ける。俺が本気で走ったら、低レベルの戦士には俺を目で捉えることすら不可能になる程に速くなる。当然コイツらには俺が見えてへんやろーな!
「はい、ズババババババババババッ!!」
完全に俺を見失って隙だらけの間抜けどもを、素早く剣でぶった斬った。
そのまますぐに真上に跳躍、上空を飛んでいる戦闘機にへばりつく。
「俺も操縦してみたかったな~~残念。墜ちろ」
素手で翼を千切って、思い切り蹴り落とす。下には丁度戦車がありそこに激突して大爆発。けっこうな数の兵士と警官を巻き込んだ。
「まだまだっ!めんどいから一気に消してやろうっ!!」
上空で浮いた状態から、巨大鉄球をいくつも落として敵をぺしゃんこにしていく。そしてその鉄球は数秒後大爆発を起こした。
「ほらほらぁ!俺を殺すんやなかったんかァ!?はははははっ!!」
鉄球に続き炎の槍をいくつも投げ落としていく。他にレーザーや硫酸の雨、破壊光線などを敵方面にデタラメに放って蹂躙していった。
異世界で殺戮した時よりも歯応えが無さ過ぎる。魔力と魔術という概念が無いとここまでレベルが違ってくるとは。魔術は偉大なんやな、やっぱ!
空からの攻撃を止めて地面に降りた頃には、敵はほとんど残っていなかった。まだ残っている敵は全員絶望した顔をしていた。戦意を完全に失くし、俺を化け物を見る目で見ている。逃げ出している兵士もいる。
俺を殺すと宣言したオッサンがまだいたので、また話しかけてみる。
「これがお前ら雑魚とチート化した俺との格・圧倒的な差ってやつや。で、自分らまだやるつもりなん?」
「............」
俺の問いかけにオッサンは身を震わせることしかできないでいる。コイツもややパニックに陥っているようだ。オッサンの肩を気さくに掴み再度質問をする。
「なぁ自衛隊のオッサンよぉ、これは誰の差し金なん?防衛大臣か?それとも...」
嫌味を含めて質問する。やがて震えた口調で答えを告げた。
「.........内閣総理大臣、だ」
「おおー国のトップが、俺を殺害しようと!そうかそうかー。
じゃあ、用済みだから消えろ、俺の敵ども」
その後は、まさにワンサイドゲーム。戦意を失った兵と警官どもを次々斬り捨てていく。戦車も全て破壊して、軍は完全に滅んだ。
「「ぐがぁ!!」」
あえて最後に残したあの刑事二人を重力で縛って這いつくばらせる。これも何かの縁だ、少しくらい話をするか。
「お前らは確か、俺が復讐で殺した連中から得た手がかりを辿って俺を嗅ぎ回ってた公僕やったな?俺が嫌いな警察... “個”に目を向けずに雑な仕事しかしない、本当に救いを求めている人間にはまともに手を差し伸ばさない、無能で最低な偽善者の組織...それがお前らや」
「.........」
「俺らが、偽善者やとぉ...!?」
「事実やろ?理不尽な虐めを受けているもしくは受けていた奴。自分は悪くないのに職場でハブにされて不当な扱いばかりされる奴。
他にも虐待や鬱とか色々あるけど…そういったものに苦しんで本当に救いを求めている奴らの味方になってくれる事例って、いくつあった?
全く無かったやろ?なァそうやろ!?」
「何を、言って...ぐおっ!」
「ああ、所詮お前ら偽善の精神で正義の味方ごっこしているカスどもには少しも理解できねーやろうな。自分らは国民の安全と秩序を守ってますーって、守れてすらいない薄っぺらい正義に酔ってるだけの連中に、本物の弱者と虐げられていた人間の訴えなど分かるわけもないよなァ!?
かつて俺がお前らを頼ろうとしても軽くあしらわれて無視されたように、お前らは国民一人一人救えやしないクソ無能偽善集団や!!この日本の腐った汚物どもがァ!!」
ゴゴゴゴゴゴゴ...!!
「ぐおおおおおおおおおおおあああああ...!!」
「す、ぎ山...!お前、まさか昔、俺のところに相談にき―――いぁああああ”あ”あ”......っ!!」
さらに重力を強める。痛めつけるのも飽きたな。
「お前らと話すことはもう無くなった。俺はこの後この日本を、俺好みの日本に改造する。お前ら警察組織が要らない国にでも変えてやるから、安全と秩序を守るお仕事は俺に任せて...死んじゃえ――」
グシャッッッ!!
処刑を終えると欠伸をして体を伸ばして、先を見据える。
「よし、行くか...!」
周囲にある屍の山を全て消し去ってから、次に行くべき場所へ飛んだ――。