粛清編
あの後、復讐対象の平塚大輔以外は殺さずにしておいた。誰一人として俺にヘイトを溜めさせていなかったし、どうでもいい連中だし。
いつもの瞬間移動で山形の拠点にひとまず戻......ったまでは良いのだが…
「ん...?」
アパートの前にパトカーが数台停まっておりアパート内も少し騒がしい。住人も戸惑いの顔を浮かべて警察の行動を見ている。
奴らを検索してみると、大半が地元の警察署から来た刑事と警官だが、そのうち二人の刑事は山形警察の人間ではないようだった。
「大阪府の刑事?何でわざわざ北国のここに、それも俺がいるアパートに......いや、ああそうか...!」
考えてみれば簡単なことだった。俺が復讐で暴れ回ったことで発生した事件を辿れば、俺のところに辿り着いたってわけだ。いくつもの殺害現場から僅かに残った手がかりを集めれば、まぁ犯人が俺だってこと気付くわな。
それにスーパーや色んなところの監視カメラに対してちゃんと姿を隠さないで行動していたものだったから、バレるわな。
で、大方俺の出生と経歴を全て調べ上げて結果、ここに辿り着いた…ってことか。最近はここでも復讐活動したから、この地域が俺の拠点だって確信したのだろうなぁ。
(ほ~~、こういう犯人の捜索レベルってフィクションドラマの中ばかりやと思ってたけど、現実でもここまで嗅ぎつけられるのかぁ。日本の警察も、無駄な部分では優秀なんだな...)
こういった犯人特定・捜索スキルはとても優れていて有能なのに、肝心の“予防スキル”とやらは底辺ゴミレベルやもんな、警察って。
だってそうだろ?あいつらはいつも“事件”が起きてからしか動けねーもんな。未然に防ぐという能力は未だ皆無じゃねーか。
俺が進行形で虐められててもあいつらは動かない。傍観者同然の姿勢を取るだけだ。
虐めは犯罪だとか抜かしておいて、その犯罪行為を未然に防いでみせたことは果たしてあったのか?ストーカー被害に対する護衛もしてくれない、マスゴミのプライバシー侵害レベルの取材への対処もロクにしようともしない。
交通についてもそう。交通マナーの取り締まりがザル過ぎて、簡単に事故死を許してしまう。
これのどこが、国民の安全を守ってますなんて言えるのか。
お前ら警察は“全”の治安秩序にしか目を向けることをせず、“個”の人権・平穏・治安などには毛ほども対応しない。歯牙にもかけていない。
だから虐めで人が死ぬんだ。だからストーカーに殺されたりするんだ。だから労働環境が底辺の会社も出てくるんだ。
俺は警察という組織が堪らなく不快だ。簡単な理由、俺を救ってくれなかったからだ。
学校もダメ、家族もダメ。じゃあ警察......もやはりダメ。
お前らに相談した自分が惨めになったあの日はマジで辛かった。国民の税金で生活している公僕どもは、国民の平穏など全く守れてやしねーんだよ。
......いつの間にか変な回想をしていた。とにかくその警察どもが何故ここにいるのかだが、確実に俺に用があるのだろうな。本人を捕まえて事情聴取をして、証拠が揃えば俺を逮捕でもするつもりなんだろうな。
まぁ?今の俺ならあんな公僕組織なんか一瞬で灰にできるし。事後処理も完璧にできるし、足も全く残さないし。ここは、挨拶するとしましょうか...。
躊躇いなく俺の拠点部屋に入る様を見た警官らが慌てて俺の前に立つ。
「ちょっと君。大学生...なのかな?この部屋は今警察による捜査が入っているから部外者は立ち入り禁止になってて......」
「じゃあ大丈夫だ。俺は部外者じゃねーから」
俺の返答に警官が戸惑っていると、刑事がこっちに来た。
「その青年はどちらさんで.........おい待て。そいつ、まさか...!?」
中年刑事が俺の顔を見た途端、驚愕の表情をしてポケットから写真を取り出す。それと俺の顔を交互に見てから険しい声で俺に質問を投げかける。
「お前さん......杉山友聖やな?」
「はいそうです。わたすが杉山友聖です......何つってな」
刑事の関西訛りが混じった問いかけに俺は馬鹿にした口調で答えた。直後、周りの警官どもが俺を取り囲んだ。
「穏やかじゃねーなァ?俺にいったい何の用?
大阪府から来た刑事お二人さん?」
「.........用件はただ一つ。お前に連続殺人事件の容疑がかかっている。今すぐ大阪の署までご同行願ってもらうで」
すっとぼけた様子でいる俺に構うことなく中年刑事は刑事手帳を見せてそう告げた。対する俺はというと...
「――お断りいたします☆」
“全員ここから撤退して元いた所へ帰る。今日のこと全ては忘れること”
――パンッ!!
手を叩いた直後、警察全員は部屋から出て行き、パトカーに乗って去って行った。
心が広い俺は今回は見逃してやる。次また俺の前に立ち塞がるようであれば、その時は慈悲無く殺すとしよう...。
何にせよ、全ての隠蔽工作は完了。今日いっぱいはここで過ごして、明日からまた新しい住居に移る。そして次の活動に入るとする...!
「今日はその次の段階に向けて英気を養う日でもある。さぁ買い物に行こう」
数十分後、大量の高い食品と上等な酒を買って戻り、夜は盛大に食って飲んで過ごした。
「ああ...改めて最高の気分だ...!俺はやり遂げたんや。俺を虐げたり排除したりした奴らに復讐を果たした。まぁ一部寿命や事故で先に死んで殺せなかったクズもいたが...何はともあれ俺は最高の復讐が出来た!憎い奴らをたくさん、たっくさんぶち殺した!」
因みに復讐出来ずに終わったのは近所トラブルの元となったあのクソ犬とその飼い主だ。飼い主が事故で死んで、犬は寿命で死んだ。まぁ少しでも溜飲を下げるべくあいつらの墓場を盛大に荒らして汚してやったが。
「気持ちいいっ。復讐がこんなにも甘美で快楽的だなんてなァ!心が洗われた。闇を払拭した。屈辱と悔恨と無念全てすすぎ落とした!ずっとこびりついていた負の垢が...落ちた気分や!
あ~~~~~~~~最っっ高っ!!っはははははははは!!くぅははははははははははははっ!!!」
奴らへの復讐の余韻は数日間続き、結局引越したのは三日後となった。
拠点は利便性に富んだ大阪の、大阪市内。比較的孤立してる一戸建てを俺の永住地にする。元の家主には悪いが、催眠術で実家に帰ってもらって家を明け渡させた。そこにまた私物を全て配置して揃えて、あっという間に理想の部屋を創り上げた。
作業が終わったところで一休みしていると、外から明らかに騒音レベルのバイク音が響いてきた。
「......だからぁ、たかが移動でそんなうるさい音出す必要がどこにあるんだ!?るっせぇんだよ!!」
致死性のホーミング弾を指先から放って、騒音の元凶であるガイジ野郎を消し飛ばした。少し遠くから破壊音が聞こえた後、あのうるさい音は消えた。
はぁ......今の騒音通行にしろ、喫煙所外での歩きタバコにしろ、歩行を遮るような横断をしてくるマナー違反のクソ運転にしろ......そろそろああいうの全てを消さなきゃアカンよなぁ。
というか復讐が終わった次は、この日本を俺が理想とする秩序に改造することを前から決めていた。今こそ、その目論見を実行する時がきた!俺が問題視していることを誰も改善しようとしないなら、俺が改善してやれば良い。
変えるんだ...俺が変える。呼びかけとか罰金とかそんな生温い手段じゃねーぞ――
「“粛清”...。これから行うのは俺の為だけの粛清だ。俺にとって害になる人間全てをこの世から抹消して、この国を改造する...!復讐の時とは比べ物にならない規模の殺戮...そう、あの異世界での復讐以来の量の血を流させてやろう...!!
―――革命を起こすぞっ!!!」
大阪府警捜査部署。
「くそ...!目的の人物が目の前におったのに、何で途中切り上げてここに戻ってたんや!?」
「僕も先輩と同じで、気が付くとここに戻っていて...」
怒りと困惑で頭を抱えているこの刑事二人。先日山形県にまで出張捜査をして、連行対象の人物と接触したのだが、そのすぐ後二人の身に異変が起こった。自分の意思とは関係無く、その人物のもとから退散してしまい、何もせず署まで帰ってきたのだった。
「少し前に山形県警から報告がきたのですが、彼らも気が付けば各署に帰ってしまっていたそうです。それもあの日から三日も経った状態で...」
「三日か...。俺らも同じや。杉山友聖と対面したあの日からもう三日も経ってる。俺らはその間ずっと眠ってたわけないゆーてたな。ここにいる皆は俺らはいつも通り出勤してたって聞いたし」
「あと報告の続きなんですが...あのアパート部屋はもぬけの殻になっていたそうです。杉山の私物は一つ残らず消えていたそうです。恐らく県外へ逃亡したと考えられますね」
「薬物か何かで俺らを催眠にでも落としたゆーんか。益々警戒せなアカンでこりゃ」
「......やはり杉山が例の連続惨殺事件の犯人として進めるべきですかね?」
「せやろな。あの時直に奴と対面したけど......アレは普通やないで。人を殺したとかそんなレベルやない、人間かどうかすら怪しい存在やっておもたわ...」
中年刑事の深刻な顔でそうぼやく様子を、後輩刑事は茶化すことはしなかった。
しばらく沈黙が続いた後、若い刑事が二人のもとへやって来た。
「ここにおられましたか!市内で突然惨殺事件が発生しましたっ!」
男の突然過ぎる報告に二人はまさかといった顔を浮かべて行動に移った――
*
この国は色々腐っている(俺視点で)。
主に性格や人格が(俺基準で)破綻してる低脳な連中と、マナーを全く守らない連中、そしてモラル意識が底辺の連中が、世の中にたくさん蔓延ってるからだ。
そのせいでこの日本という国の社会は、もはや俺にとって受け付けられないレベルに堕ちてしまっている。どうしようもなく腐ってしまっている。
せっかく漫画・小説やアニメ、ゲームにおいて豊富で発達した文化を持ち、美味い食い物も揃ってる素敵な国なのに、そんな低脳でクズな連中のせいで台無しだ!
ああ、なんて嘆かわしい現状だ!?魅力的で優れた文化がありながら、人間・社会の環境といった要素のせいで全部台無しにしてるとかクソ過ぎる、冗談じゃねーぞ!?
俺が転生する前から、この国は相当腐っていた。そして今の時代も死んだ方が良いクズ人間が蔓延っている。事実、復讐に走っている間、俺を不快な気持ちにさせたクズが何人いたことか...。
だからこの国に住む人間は、俺にとって害が無く、生活と文化を支える仕事をしている人間だけにする。それ以外全ては殺す、皆殺しにする。
それが為せれば、この国は俺が理想とする素敵なものとなるだろう。
しかしそういった選定作業は些か面倒だ。だからまずは、俺が特に不要で消えるべきだと断定している腐った人種どもを殲滅していく!
何、やり方は簡単だ。この検索魔術は全てを俺に教えてくれる。誰を消せば良いかなんてあっという間に分かるし、あっという間に全員消せる。
理想国家………唐突になるが、「ド〇えもん」のエピソードには“どくさいスイッチ”という大変興味深い道具があったな。
あれは自分にとって邪魔者・気に入らない者を、スイッチを押すことでこの世から消し去るというそれはそれは愉快……いや、恐ろしい道具だとか。スイッチ一つで人を抹消するのもヤバいが、あの道具のもっとヤバくて怖いところは...スイッチを使用した者を除く全ての人間から、消えた奴に関すること全てが記憶から消去されて、初めからいなかったことになるということだ。
だがあの道具は、使用者の欲求をただ満たす物ではなく、独裁的な者を懲らしめる為の物だとか。次第に孤独という状況に陥らせて反省させるのが目的だとか。
まぁとにかく俺がこれから何をするのかと言えば、その“どくさいスイッチ”と同じことをするということ。
ただ、人をパッっと消すだけでは済まさない......最初のうちは今まで殺した連中と同じようにやろう。大衆の前で害悪どもを消していく!見せしめと宣伝の為にな。
俺は自分の力で邪魔者どもを消していく!!
強い決意とともに俺は粛清活動を開始した。
*
「ここはァ、喫煙して良い場所じゃないよなぁ!?タバコ吸う場合は喫煙所でするのが常識でありマナーであり、法律でそう決まってるはずやろ!
にも関わらずこんなところで吸うヤニカスは、俺の中では重罪人です!
だからこうして、 “粛清”してやりましたーー!」
路上喫煙していたヤニカス(既に死体、殺した)の胸倉を掴んで、周りの奴らに聞こえる音量で、殺した理由を丁寧に告げてやった。
この後記憶操作をして今の出来事を忘れさせる...なんてことはもうしない。もう隠す必要が無くなった。むしろ見せつけるようにしなければ何の意味もなさない。
これからこの国を俺好みに改造するのだから...!
「あーあー!安心しろー。別にお前らを無差別に殺す気は無いぞ。こいつを消した理由は、ここで歩きタバコをしてたからや。
喫煙は喫煙所でするという当たり前のことを、このクズは守ることなく受動喫煙を俺にさせようとした。だから殺しましたー。
お前らもこうなりたくなければ絶対に歩きタバコは止め――あらら、全員聞いちゃいねー。騒いで逃げやがったか。まぁいいや。これを続けていればいずれ伝わるやろーし」
ここいらはパニック地帯になっちゃったから、少し移動する。数十キロ離れた区域に移り再び散歩を開始。そして数分後、横断歩道を渡る途中で横から車が入ってきて俺を横切って通過しやがった。
「歩行優先という交通ルールを守らなかった。よって“粛清”」
直後、引力で今通った車を引き寄せて真っ二つにする。さらに中からクソ運転者を引きずり出してその腐れ野郎の頭を掴む。
「ひ、ひぃ...!?」
「ひぃじゃねーよゴミクズが。お前俺が歩道渡ってるの見えてへんかったんか?歩行者と自転車が渡ってる間は、白線の前で停止して通過するのを待つこと...常識やろがああ!?ああやって歩行を邪魔されるのがもの凄い不快だって分からねーかなァ、ええ!?」
「あああああああんた、何言ってんだ――」
「反省の余地無しと見た。よって死刑に処す」
――ブチャアアアアァ
有無を言わさずに殺す。ゴミ箱にゴミを捨てるように死体を道の端っこに放り捨てて何事も無かったかのように散歩を再開。
周りから悲鳴が聞こえる中、ひと際うるさい耳障りな音が辺りに響く...バイクだ。必要無いだろう騒音を出して通過しようとするバイクを不快気に睨みながら“粛清”をする。
「俺の前で、そのうるさい音を出すのを止めろやッッ!!」
虚空から巨大な岩を召喚してそのまま下へ落とす。ちょうどバイクが岩の真下を通って......そのままグシャリと下敷きになって潰れた!
「ええか!移動するのにあんなうるさい音出す必要は無いはずや!運転してる本人はスピード出して気持ええんやろうけど、俺にとってはそのうるさい音が堪らなく厭で不快や!!
だから“粛清”した!俺に耳障りな音を聞かせるクズどもは皆殺しやッッ!!」
これもまた聞こえるように叫んで、移動する。見せしめ活動はまだしばらく続行する。
「死ねヤニカスどもっ!!!」
ズバン!グシャア!!グチャア...ッ!
「歩行者と自転車を優先しろっ!!横断歩道の真ん中で止まんな!!消えろっっ!!!」
ドガァン!!ゴキャア...ン!!
「うるせェンだよ!!静かに通過しろや!!!」
ヒュン...ドォオオン...ッ!!!
害悪もたらすクズどもが、次々と“粛清”されて消えていくのだった。
この国のクソなところを挙げるとするなら、いちばん初めに浮かぶ点はやっぱりこれになる。
喫煙モラルが低すぎる。
日本の喫煙モラルは頭おかしいレベル、狂ってる。何で平然と人前、それも非喫煙者の目の前でタバコ吸い始めやがんねん。
分煙推進、受動喫煙による人体の悪影響、悪臭......タバコに関する対処と悪影響とか色々問題視されて世界では昔よりだいぶ喫煙に対するマナーと配慮が改善されているのに。日本だけは何なん?
申し訳程度の喫煙エリアに、適当に置いてある灰皿......は?それだけ??ちゃんとした喫煙所はオフィス内だけ設置。コンビニとかデパートとか大衆が利用する施設内に設置してるとこはほんの僅かや。
せやから気が短くて我慢するということが出来ひん精神年齢がガキのニコチン依存のヤニカスどもが歩行路や道端でスパスパ喫煙し出すねん。
もちろん喫煙所外で、しかも禁煙区域で喫煙しやがる奴らが悪いけどな、ああいうクズどもに対してまともに対処していないこの国の運営そのものがおかしいし悪いねん。
いや造れよ設置しろよヤニカス収容所くらい。それくらい予算おろせるやろ。横領した金(憶測、ていうかどうせ政治家みんな横領とかしてるや) を返してそういうの増やせよ。お前らの無駄に高い給金をヤニカス撲滅に回してこいや。
お前ら国を運営している連中のモラルが低いから、勘違いしたガイジどもが平然と歩きタバコやったり人前で喫煙し出すねん。お前ら副流煙が人体にどれだけ害を及ぼしてるのかまだ分かってへんのか?
外で吸ったくらいなら濃度低いしええやろとか思ってんじゃねーぞ?
濃度関係無しに体に悪いの!!主に心肺機能に悪影響を及ぼすの!!肺炎になったり肺がんに対する免疫機能が落ちるの!!
別にお前ら喫煙者どもがいくら喫煙しようが勝手や。お前らの責任や。肺炎でも肺がんでも勝手にかかって勝手に死ねばええ。けど無関係の俺に、お前らが吸ってる煙よりも有害物質を含む煙を吸わせてんじゃねーよ!!この歩く害悪どもが!!!
という気持ちで書きました。
事実日本の喫煙モラルは低いです。中には子どもやペットの前でタバコを吸う親や飼い主も見かけます。成人した人間よりも未熟児・未成年の人間や猫・犬など小型動物らの方がタバコの煙による害が被りやすいという事実を、果たしてどれくらい存じているのでしょうか。
少なくとも喫煙者らは理解していないでしょうし理解しようともしていないでしょうね。じゃなきゃ普通子どもらの前で喫煙するとかあり得ないですし。人間の嗅覚でもタバコの煙は相当不快感を与えるから、動物なんかは大層ストレスになるでしょうね可哀想に。
最近ではそういう有害物質を多く出す紙巻タバコに代わって、電子タバコ・副流煙は一切出さない水蒸気タバコなどが普及......されてませんね全然。
あれらは値段が高い。経済に余裕がある人間しか買ってません。経済に余裕がないからああいうのを買えない、だから紙巻タバコを買う、そして我慢できなくなって(あるいは普通に吸って問題無いとか考えてるんでしょうね)途中で歩きタバコをする。
これが喫煙モラルが低い要因なのではと考えています。
たばこ税がまた上がり、一箱の値段がさらに上がったそうですが、それが何だというのでしょうか。そんな物に値を上げるよりももっとすることがあるのでは?
例えば電子タバコの普及を広める為の値段大幅下げとか、ちゃんとした喫煙所の増加とか。
普通に考えてできるはずが、どうしてそんなことが未だに出来ていないのでしょうか?この国はそこまで余裕がないのでしょうか?
――――――
とある小説のとある人物のセリフで、こんなセリフがある。
『人殺しは癖になる』
その言葉の意味は、一度殺人によって問題の解決を図った者は、次なる問題が発生した場合、やはり同じように殺人によって状況を打破しようと する必要のない殺人を、選択肢の一つとして考えている...というものらしい。
また、一度人を殺した人間が殺人の嗜好に目覚め、己の欲求を満たすために犯行を繰り返すようになる...という解釈もあるらしい。
殺人を癖にする者は、このどちらかを動機にしていると言って良いだろう。
しかし稀に、その両方を動機に殺人を実行する者もいるらしい...。
――――――
移動したところにヤニカスどもがまたいたから、その場で全員殺す。仲間を殺されて俺にキレてくる同じヤニカスどもや人間のクズどもも殺す。
また移動した先に、今度は俺の横断歩行を妨げた車が現れたから、そこからクソ運転手を引きずり出して虐殺した。
そしてさらに移動した先に、騒音をまき散らすバイクやカーが現れたからそれらを運転手ごと破壊した。
それらをひたすら繰り返す、繰り返していく……。
外を出歩いてから1時間しないうちに、俺は数百人ものゴミクズどもを見せしめに処刑していたようだ。
大阪の…一つの市だけでもこんな数ものモラルに欠けた人間、周りの人に平気で迷惑かける人間、マナーなど一つも守ろうとしない人間がいるとはな。
やっぱり俺の見立ては間違ってなかった。外に出たらモラルに欠けてる自己中なゴミクズとすぐに遭遇してしまう。
何故、どいつもこいつもああいった害悪どもをどうにかしようとしない?あんな奴らが蔓延ってしまってるこの世の中を良い方へ変えようとは思わないのか?
そして何故…モラルが欠けてる自己中どもは、歩きタバコや路上喫煙、歩行者たちの優先を無視したマナー違反運転といった害悪行為を平然と行えるのか。
お前らのその下らない自己中さがどれだけ俺に不快さと害をもたらしてるのか分からねーのか?クソどもが…っ
まぁどうせ?ああいった人間のゴミクズどもは所詮、自分の“快”のことしか考えてねーんだろうな。そんなことはとうの昔に分かってた。
分かってたが…やっぱり許せない、納得出来るわけがない。
俺よりも勝手やって迷惑かけてるクズを見るのは凄く不快で苛つくんだよ!
だから殺す。まずはヤニカスや交通ルール・マナーを違反する運転手どもを殺しまくって、自分が住む地域の浄化活動を成す!!
「ふぅ...。いやーけっこう“粛清”したなー。けっこう人減ったか?というか市内ほぼ一周したかも」
気が付くと自宅周辺の道路に戻って来ていた。目で見える限りは、俺が害認定している人種はもういなくなってる。見せしめが効いたみたいだ。
「んー、そろそろか?」
けど、まだ用件は終わっていない。そろそろ来る頃と思うが...おっ、聞こえてきたぞ......サイレンの音が、いくつも。
しばらくしてようやく公僕どもが到着した。あちこちで殺しをやったもんだから今頃は色んなところにパトカーが来ている頃か。
今来たパトカーが数台、俺を囲むように停止して警官と刑事が十人以上出てくる。中にははじめから銃を向けてくる奴もいた。
「ん......?おやおや、少し前に見た顔が混ざってるやんけ」
「杉山、友聖...!!」
俺を連行しようとした中年刑事とその後輩刑事が険しい顔で俺の前に立っている。
「あちこちで起こっている無差別殺人事件、あれは全てお前の仕業か?」
「ああ。殺したのは全部俺や。」
「いったい、何のつもりで人を大量に殺してるんや!?悪質なテロのつもりか!?」
「は?何でそんなこと答えなきゃならんわけ?まぁあえて答えるとすれば......これは別に無差別殺人でもテロでもねーぞ?俺は殺すべき人間をきちんと選んで殺して回ってたんやから」
「何...!?」
「指定した喫煙所外…特に禁煙区域で路上喫煙したり歩きタバコをしているヤニカスども。歩行者やチャリの横断を遮って通行してくる交通マナー違反者ども。騒音を出して通行しやがるバイクやスポーツカーとかのクソガイジどもなんかも、俺が殺すと決めてる連中や。
あいつらは俺にとっては害と不快感をもたらす害虫や!だからまずはこの地域からそいつらを“粛清”して回っている最中ってこと!理解できた?」
少し熱を込めてなるべく全員の警察どもに聞こえるように俺の行動詳細を説明してやった。しかし説明しても奴らの顔は、こいつ何言ってんだって表情をしてるものばかりだった。
「おい......そんな理由で人を大勢殺したんか...?」
「要するにお前は、自分が嫌だと思うことをしている人らを...気に入らないことをしている人らを問答無用で殺してると言いたいんか」
「おーそうそう!けど“そんな理由”って...。ハァ、やっぱりこの考えを理解できる人間はそうはおらへんかぁ...まぁ分かってたけど。お前ら小物如きに理解してもらおうとも思ってへんし?」
以前会った二人の刑事と向き合って俺は対話に乗ってやる。
「お前ら公僕や有象無象どもにとっては“そんな理由”なんやろうけど、俺にとってはそれだけ許されないことだって、分からんかなぁ。
まぁとにかく、今の俺は人を容易に殺せる力を手にした。本気を出せばお前ら警察にもバレないくらいの隠蔽もできるようにもなった!
だから俺はこうして行動を起こした!」
またも熱が入りベラベラ喋ってしまった。今は気分が良いし、もう少しお喋りしても良いか。中年刑事が再び話しかけてくる。合間に警官どもが俺を捕らえようと網や警棒、銃を構え出している。
「何で今になってお前は大々的に殺人を犯してるんや?数日前からお前は学校のクラスメイトやった人らとかつて勤めていた会社の同僚どもを殺していたそうだが、ほとんど証拠を残さずに、目撃者すら残さずにしていたな?何でそんなことを?」
「は?んなもん決まってるやろ、お前らみたいな偽善組織どもの邪魔を受けないようにする為や。復讐対象を護衛とかされたら面倒やろうからな(まぁ普通に殺せるけど)」
「そうか.........行け」
中年刑事が手を伸ばした直後、警官が一斉に俺を捕縛しにかかった。捕獲網が上から降ってくると同時に真正面から何か発砲してきた...あれは鉛玉じゃねぇな、大きめの...もち?トリモチ弾か!
べチャリと全身にトリモチがくっつくと同時に網が被さってきて完全に動きを封じられる。なるほど、これなら完全に身動きができなくなるわな。あとは――
――ドンッ
ああやっぱり、麻酔弾か。ハハハ、まるで猛獣扱いやな。これだけされれば捕縛は不可避やろうな.........普通の人間ならな――
“麻酔無効”――覚醒。 炎魔術――“マグマ溶解” 風魔術――“斬撃”
僅か数秒で、完璧と思われた捕縛があっさり対処されたことに、全員があり得ないものを見る目をして俺を凝視していた。
「ぐ......気ぃつけや!!この男は何か得体の知れない力を使ってくるで!俺らも以前その力に当てられたからな!」
そう警告を発したものの、今ので決めるつもりでいたからか、警官どもはただ困惑と狼狽するばかりだ。
「で...?こうして俺を捕らえるってことは、お前らは俺の“敵”ってことで良いゆうわけやな...」
ゆらりと身を揺らしながら伸ばした手から魔力を込める。そのまま相手の返答を聞く間もなく魔術を放った!
“錬成”地面よ槍と化せ――
―――グサササササッ!!
一瞬だった。警察どもが立っていた地面が鋭利な槍状の刃物に変化して、そのまま奴らを全員串刺しにした。
「な...な......」
「そ、んな......」
唯一あの刑事二人はあえて残しておいた。こいつらには宣伝役になってもらう為だ。
「さって、ここに居座られては生活の邪魔になるから、お前らには俺の住所に関する記憶を失くしてもらおう。あとさっき俺が言った粛清内容について宣伝して回ること。じゃあな、無能な公僕ども、“元いた場所へ帰れ”――」
――パチンッ
そしてまた俺の前からすごすごと消えて行く刑事らを見送ってから死体の処理を済まして、家に帰った。
翌日、俺は本格的に「粛清活動」を行い、日本の改造に努めることにした。
昨日市内で行った数百人の虐殺ですらも、単なる挨拶運動に過ぎない。
俺、杉山友聖が何を嫌悪しているのかの宣伝と、嫌悪しているそいつらを簡単に殺せるという事実を宣伝も兼ねた見せしめだ。
今の俺にはたった1時間くらいで数万もの人を殺せる力がある。俺がもの凄く強いチートであることよりも、こっちの世界の人間が弱過ぎることが理由かもな。
異世界の人間みたいに魔王軍と戦ったりもしないのだから、弱くて当然。手間取ることなくすぐに殺せる。
で、今日は何をするかというと...
「紙巻タバコを生産しているこのクソ会社を潰しに来ましたー!では早速、みんなさようなら」
そもそも、路上喫煙だったり歩きタバコだったりしたクズどもよりも先に消すべき奴らがいることを失念していた。
こんな健康を大いに損ねるよな嗜好品なんかを作ってる大元さえ消えて無くなれば、ヤニカスがこれ以上現れることもなくなるんじゃないか。
だから生産会社《根本》を絶つことにした!
ああ?暴論やと?知るかよ!じゃあお前らは受動喫煙を根絶できるんですか?できねーだろ?何故ならこの日本は、タバコをも経済を支える要素として扱っているという体たらくやからな。そんなものを消してしまったら国の景気が悪くなる、税金も激減する。だから昔も今もタバコ生産は廃れてないでいるんや。
だが俺にとってそんなこと知らん、どうでもいいことだ。そういう姿勢が“個”を疎かにしているって言うんじゃクソが。それのせいで生前の俺は体を壊したことがあったんやからな。
俺にとってはタバコなど消すべき忌まわしき愚物や。ここで完全に消し去ろうではないか!!
「さ~~~~あっ!!どんどん消えろ!!タバコ生産してるカスどもは皆消えろ!!タバコなんかこの世から滅べぇ!!!」
大阪府内のタバコおよびその生産会社と生産者どもを全て葬った後は、そのまま勢いを絶やさずに全国すべてのタバコを消去した。
「よっし!これでこの国の空気は少しは良くなったやろ。タバコに利なんか一切無い。あったとしてもそれはただの麻薬効果と変わらん、そんなものは滅ぶべきや!」
タバコは消えた...が勿論ここで終わりにはしない。ほらまたうるさい音を出して通過するバイクがいるわクソが!
ドゴォン!(バイクを破壊)「さて、次は...乗り物を減らすとしようか」
騒音を出す乗り物は要らないはずだ。というか、俺は「瞬間移動」やチャリがあるからマジで乗り物は要らん。けど全部消しちゃったら、物の流通が一気に不便になり、生活の利便性に支障が出ることに。
だから先に消すのは――
「この国にある全ての自家用車とバイク、スポーツカーを消しまーすっ!!!」
直後、俺の全身から幾千万ものレーザーが発射されて、バラバラに飛んで行った。すると早速近くの住宅街から爆破音が聞こえた。車やバイクが破壊されたようやな。数秒後、遠くからも爆破音が聞こえた。
十分程経った頃、検索魔術で国内の様子を見てみると、目論見通り国内の自家用車と大きな音を出すバイクと爆音を出すスポーツ(レーシング)カーなど、電車や新幹線、飛行機やトラックなど生活や社会に必要なものを除く全てのうるさい乗り物をこの世から消してやった。
これで騒音は勿論、マナーを守らないクソ運転手どもをも消すことにも成功した。
「よしっ!この国の風通しがさらに良くなった!身近にある健康を損ねる物質の根絶に騒音の素の消滅、さらには安全で煩わされない横断歩道の実現!いや~~~ますます俺にとって住みやすい国に近づいてきた!」
この後、全国のバイクやスポーツカーなど比較的うるさい音を出す乗り物の製造会社を全て破壊、製造者を殲滅した。これでああいう不快でうるさい乗り物が増えることは無くなった。
だが人間は、これまで無から色んな物を創ってきた。“記憶”さえあれば、たとえ生産者と製造者どもを絶滅したってまたそれらを創り出す輩が出てくるに違いない。
「――と、いうわけで!煙草や必要以上の大きな音を出す乗り物といった、害悪をこれ以上つくることがないよう、この場を借りてお前らに脅迫しようという所存でしてっ!」
そこで俺は大胆にも、視聴率が高いワイドショー番組をジャックして、カメラの前でそう宣言してやった。
ここからが本格的な日本改造計画の実行だ!
「初めまして~。俺は杉山友聖って者です。大阪府大阪市に住んでます...はい、自己紹介は以上。で、この人気ワイドショー番組をジャックしてまでこんなことをした理由やけど、まずはコレをご覧下さーい」
そう言って俺はノートパソコンを起動してとあるビデオを再生したそこには先日俺が実行した“粛清”の様子が映っていた。
「「「「「な...!?」」」」」
収録現場にいる奴らが全員息を呑む様子を一瞥してから再びお話をする。
「これは特撮でもCGでも無い...本物や。何なら現場に行ってみたらええよ、面白いモンが残ってると思うから。
というかお前らもコレが嘘やないってこと察してるやろ?最近、身近で突然何人か殺されるという事件が起きてへんかったか?アレも全部俺がやったんや。要するに俺には人を簡単に殺す力があるゆーわけや。それも軍隊よこしても一瞬で返り討ちにできる武力が、や。
そんな俺が要求することはな?まずタバコの生産をしないこと。車会社は自家用車の製造を今すぐ止めること。俺は何でも知ることができるからな、隠れて生産・製造しても無駄や。もし造ってたら今の映像通りに消しに来るからな...!」
最後にドスを利かせた口調で脅して、俺はテレビ局から出て行った。その後も、色んな人気番組をジャックして同じ文句をカメラの前で言って回った。これで全国民に俺の存在と俺の要求が伝わっただろう。これでもし要求通りにしなかった場合は......武力を行使せんとなァ...!
*
「―――猶予など与えている場合ではない。《《アレ》》をたった一人でやったことが事実である限りは...!」
首相官邸にある会議室。現内閣総理大臣は厳かにそう告げる。会議室に同席しているのは防衛大臣、警視総監、警察庁長官、自衛隊の各幕僚長など限られた者のみである。
「内閣総理大臣のもと命じます。件の賊の排除を速やかに。その際に要する手段は問いません。国が有する全ての戦力を投入することを許可します。
そして賊をその場で葬ることも...許可します!」
建国史上初となる、たった一人の人間に対する軍隊の投入。その馬鹿げた決定に異論を出す者が一人もいない事態も異常であった。彼らとて、あの映像と実際の現場を目にしなければ、こんな決定を受け入れはしなかったであろう。
現内閣総理大臣は歴代総理の中でも危機意識が高いことで有名だった。だからこそ今回の対処は当然と言えば当然であった。
そして国は、たった一人の青年に牙を向けるのであった―――。
テレビ局をジャックして「宣言」をしてから二日後。
外を出歩いて最初に思ったことは、道路が閑散としていたことだろうか。ヤニカスと自家用車とバイクを消すとこんなにも変わるもんやなぁ、
全然人がいねー!気分が良い。
ただ、素顔を晒すと誰もが俺を見て騒ぐというのが欠点か。まぁ良い、今はあえて素顔を晒しておく。何故なら――
「おい!おめぇやろ!?こないだあのワイドショーでおかしなことを言ってたガキは!!ふざけたことしてんじゃねーぞ!俺の車をよくも――」
――グシャ!!
ほらな。こうやって「見せしめ」を示すことで、俺がマジだってことをさらに分からせるのに有効やからな。
悲鳴を上げて俺から逃げていく有象無象どもを鼻で笑って書店へ行く。最新刊出てるかなーっと。
さらに一週間後、気まぐれで外出して帰りに何か買って行こうと思った道中で...
「っははは!実際に見るとは思わなかったなァ!スゲーや、まさかこの国で......リアル戦車を目にするなんてなァ!」
目の前にはなんと、アニメや漫画で見たようなあの戦車があった!デカい砲筒を搭載した戦車が十台はある。
しかも上空には戦闘機も飛んでいる。おお~~銃器搭載のこれまたフィクションでしか見たことないやつや!で、人間の方は...警官に自衛隊...あれは「スタット」とかいう特殊部隊か?
あと...米軍もいやがるなぁ。沖縄からわざわざ出向いたのか。なるほど、この国の全ての武力をかき集めて俺に差し向けたゆーわけか。
「一応聞くけど、お前らは俺とドンパチでもおっぱじめる気か?俺言ってたはずやけどなぁ、軍隊が来ても返り討ちにできるって」
「杉山友聖!お前のやってることはただの殺戮だ!これ以上お前の好きにはさせない。お前を殺害する許可が下りたので、ここでお前を殺すっ!!」
恰幅の良いオッサンがよく通る声で俺の死刑宣言を唱えた。
「殺すってw へぇ~~平和が売りの日本国が、穏やかじゃない指令を出したんやなぁ。誰の差し金?」
「これ以上話をする気は無い!罪の無い国民をたくさん殺した罪をここで贖え!!――攻撃用意!!」
俺との対話を早々に切り上げて、早速攻撃を仕掛けてきた。平和ボケした国だとばかり思ってたが躊躇しないで殺しにきたな。嫌いじゃねーぞそういうのは!
「けど...相手が、悪過ぎた、なァ!!」
弾丸の雨を、強固なバリアーで全て防ぐ。弾切れしたタイミングを狙ってすかさず前を駆ける。俺が本気で走ったら、低レベルの戦士には俺を目で捉えることすら不可能になる程に速くなる。当然コイツらには俺が見えてへんやろーな!
「はい、ズババババババババババッ!!」
完全に俺を見失って隙だらけの間抜けどもを、素早く剣でぶった斬った。
そのまますぐに真上に跳躍、上空を飛んでいる戦闘機にへばりつく。
「俺も操縦してみたかったな~~残念。墜ちろ」
素手で翼を千切って、思い切り蹴り落とす。下には丁度戦車がありそこに激突して大爆発。けっこうな数の兵士と警官を巻き込んだ。
「まだまだっ!めんどいから一気に消してやろうっ!!」
上空で浮いた状態から、巨大鉄球をいくつも落として敵をぺしゃんこにしていく。そしてその鉄球は数秒後大爆発を起こした。
「ほらほらぁ!俺を殺すんやなかったんかァ!?はははははっ!!」
鉄球に続き炎の槍をいくつも投げ落としていく。他にレーザーや硫酸の雨、破壊光線などを敵方面にデタラメに放って蹂躙していった。
異世界で殺戮した時よりも歯応えが無さ過ぎる。魔力と魔術という概念が無いとここまでレベルが違ってくるとは。魔術は偉大なんやな、やっぱ!
空からの攻撃を止めて地面に降りた頃には、敵はほとんど残っていなかった。まだ残っている敵は全員絶望した顔をしていた。戦意を完全に失くし、俺を化け物を見る目で見ている。逃げ出している兵士もいる。
俺を殺すと宣言したオッサンがまだいたので、また話しかけてみる。
「これがお前ら雑魚とチート化した俺との格・圧倒的な差ってやつや。で、自分らまだやるつもりなん?」
「............」
俺の問いかけにオッサンは身を震わせることしかできないでいる。コイツもややパニックに陥っているようだ。オッサンの肩を気さくに掴み再度質問をする。
「なぁ自衛隊のオッサンよぉ、これは誰の差し金なん?防衛大臣か?それとも...」
嫌味を含めて質問する。やがて震えた口調で答えを告げた。
「.........内閣総理大臣、だ」
「おおー国のトップが、俺を殺害しようと!そうかそうかー。
じゃあ、用済みだから消えろ、俺の敵ども」
その後は、まさにワンサイドゲーム。戦意を失った兵と警官どもを次々斬り捨てていく。戦車も全て破壊して、軍は完全に滅んだ。
「「ぐがぁ!!」」
あえて最後に残したあの刑事二人を重力で縛って這いつくばらせる。これも何かの縁だ、少しくらい話をするか。
「お前らは確か、俺が復讐で殺した連中から得た手がかりを辿って俺を嗅ぎ回ってた公僕やったな?俺が嫌いな警察... “個”に目を向けずに雑な仕事しかしない、本当に救いを求めている人間にはまともに手を差し伸ばさない、無能で最低な偽善者の組織...それがお前らや」
「.........」
「俺らが、偽善者やとぉ...!?」
「事実やろ?理不尽な虐めを受けているもしくは受けていた奴。自分は悪くないのに職場でハブにされて不当な扱いばかりされる奴。
他にも虐待や鬱とか色々あるけど…そういったものに苦しんで本当に救いを求めている奴らの味方になってくれる事例って、いくつあった?
全く無かったやろ?なァそうやろ!?」
「何を、言って...ぐおっ!」
「ああ、所詮お前ら偽善の精神で正義の味方ごっこしているカスどもには少しも理解できねーやろうな。自分らは国民の安全と秩序を守ってますーって、守れてすらいない薄っぺらい正義に酔ってるだけの連中に、本物の弱者と虐げられていた人間の訴えなど分かるわけもないよなァ!?
かつて俺がお前らを頼ろうとしても軽くあしらわれて無視されたように、お前らは国民一人一人救えやしないクソ無能偽善集団や!!この日本の腐った汚物どもがァ!!」
ゴゴゴゴゴゴゴ...!!
「ぐおおおおおおおおおおおあああああ...!!」
「す、ぎ山...!お前、まさか昔、俺のところに相談にき―――いぁああああ”あ”あ”......っ!!」
さらに重力を強める。痛めつけるのも飽きたな。
「お前らと話すことはもう無くなった。俺はこの後この日本を、俺好みの日本に改造する。お前ら警察組織が要らない国にでも変えてやるから、安全と秩序を守るお仕事は俺に任せて...死んじゃえ――」
グシャッッッ!!
処刑を終えると欠伸をして体を伸ばして、先を見据える。
「よし、行くか...!」
周囲にある屍の山を全て消し去ってから、次に行くべき場所へ飛んだ――。
改造編
東京都千代田区にある首相官邸。
この日、建国史上類を見ない凶悪のテロリストが、この場を占拠していた。
「テロだなんて随分な...。俺はただこの国のことを思って行動しているだけやのに」
俺は官邸に突然訪問をして、現総理大臣および全大臣を集合させた。全員をテレビで何度か見たことある国会議会所まで強制連行して、空いてる席に無理矢理座らせると、俺を議長とした緊急座談会的なものを始めたのだった。
「へぇ、テレビに映ってるものでしか見たことなかったけど、中身はこうなってんのかぁ。無駄に広いな。こんなに無駄に場所を取って定期的に議会をやってたんか。無能な政治家も出席させて、無駄な議論をさせてたりもして……」
国会議会所を見回しながら、嘲りを含んだ大きめの独り言を発する俺に対して誰一人口を開く者はいない...正確には開けない、が正しいか。
「ああ、ゴメンゴメン。どうでもいい前置きは切り上げて本題に入ろっかー。お口チャック解除っと」
手を叩くと同時に「見えない鎖」を解除して連行した国を運営する中心人物らを楽にさせる。全員青い顔をして荒く呼吸をしながら俺を見つめる。得体の知れない化け物の様子を窺う態度を一瞥して俺から話合いの口火を切る。
「では改めて...手荒な連行をしてしまって悪いねー。俺は杉山友聖。ついさっき大阪からここにやって来た者で.....お前らの誰かの差し金で、俺を討伐しに来た軍隊を潰してからここへ訪問した」
軍隊を潰したというセリフに一部が息を呑む気配がした。そしてそいつが口を開いた。
「まさか......本当にあの規模の軍を!?戦闘機や戦車まで用意したというのに...あっさり破ってここまで...」
「......残念ながら事実だ。件の男が私たちをここに連れて来る少し前に、自衛将官から連絡が入った......我々の軍が全滅したと...!」
厳つい顔とガタイの良いジジイが悔しそうに震えながら事実を述べる。アイツが今の防衛大臣か。
「なぁ防衛大臣さんよぉ、あの軍を最終的に寄越すことを決定したのは、今喋った総理大臣だって現地で聞いが、ホンマなん?」
「......事実、だ。まさかたった一人で軍を潰すなんて予想もしなかったが」
「そこはもう相手が悪かったとしか言えないなァ。なんせ俺にはこの世ならざる馬鹿みたいな力を持ってるから...って言った方が分かりやすいか?お前らアニメや漫画の知識が少しでもあれば説明しやすいんやけど」
残念でしたね~といった調子で防衛大臣を詰って、続きを話す。
「とりあえずお前らに分かってほしい点をいくつか挙げるぞ。一つ、俺は軍隊を何度も寄越そうがそれを全て返り討ちにできる力があること。二つ、武力で俺を排除しようとしても悪戯に人を死なせるということ。今のところはこれくらいか。
俺は別に積極的に国民を殺戮しようとはしていないんで。これがどういう意味か。俺がどういう存在かは、少しは見えてきたんじゃねーか?」
「......今の発言、矛盾していないか?ならば何故お前は白昼往来の場で人を殺して回っていた?どういう目的で人を殺したというのだ?」
さっきよりかは落ち着いた様子の......環境大臣が糾弾してきた。
「あー、まぁ確かにお前らからにしてみれば矛盾はしてるわな。けど俺にとっては必要な粛清活動やったんや。あのな――」
俺はこの場の連中にも俺がこの世から消すと決めた人種について簡単に説明をした。したのは良いが、誰もが俺をコイツ何言ってんだって顔で見てきたんで思わずため息を吐く。
「...やっぱ分からないかぁ、この考えは。まぁこの考えに至った経緯を説明すると長くなりそうやから、まずは俺のかつての境遇について簡単に教えようか」
「―――俺は学校からも社会からも、世の中全てからも虐げられ続けてきた被害者だった。
中学高校で虐めグループからの酷い虐めに遭い、その間同級生も教師も警察も家族も他の大人も…誰一人として俺の味方になってくれはせず、助けてくれなかった。
そのせいで心を病んで勉強どころじゃなくなった俺は、成績不振に陥り、大学への進学も叶わずとなってしまった。
「社会人時代でも理不尽な扱いの日々だった。人間関係最悪なとこばかり。悪くもない俺ばかりが不当で意味分からない仕打ちを受けてきた。
お前らが用意した救済措置の労基に頼っても解決はせず。
そして悪いことをした相手が庇われて、どちらかと言えば被害者である俺が排除されて終わるばかり…。
これが社会だと言わんばかりに、どいつもこいつも俺を切り捨てるばかり……っ」
大臣らは俺の話を黙って...否、口を閉ざさせて黙らせて聞いている。一息ついて続きを話す。
「...とまぁそういうわけで。この国のどこにも俺の居場所は用意されてなくて、この国の誰も俺を味方してくれる奴はいないんだ……と確信して断定したんだ。
もはや俺に救いなんて存在しないって、そう思った。思わざるを得なかった。
お前らが形成してき社会が、俺を絶望させたんや」
正確には異世界での出来事が、俺を今の俺にしたんやけど、異世界については話す必要は無いな。
「だから、こんな味方一人いないクソッタレな世の中...今回は国に絞るが...俺は好き勝手に蹂躙することにした!手始めに俺を特に虐げた連中と理不尽に排除しやがった連中への物理的制裁...復讐を実行した!
そしてその次が、今進めているこの国の改造や。俺が要らないと断定した人間と要素をこの国から完全に消すことで、俺の理想日本に改造する!だから、あの往来での殺戮や会社の破壊だった!
ここまで話せば、俺が何がしたいか分かったんとちゃうか?」
数秒沈黙。最初に口を開いたのは、痩せ型のジジイ......あれは文部科学大臣か。
「杉山友聖、君は酷い虐めに遭ったと言ったな?そして助けを求めたがそれに応じる人さえいなかったと...。本当にそうだったのか?もっと視野を広くして――」
「あーあー。もうそういうの良いから。“もっと助けを求めてればよかったんや”“もっと色んなところへ行って相談すればよかったんや”
虐めの被害者にかける言葉は結局はそればっかり。被害者になったことない無関心な人間の常套句や。しかも悩み相談とか虐め対策とかを掲げている大人でさえそういう言葉を投げかける無関心で心が無い奴ばかりだった...!
それでもお前は、俺の行動に不備があったと、そう言いたいのかな...!?」
思わず殺気を全員に放つ。全員さらに青い顔をすした。
「ひぃ...!」
「というか文部科学大臣さんさァ、お前は学校の虐め問題に対して今までどう対処してたわけ?いや、対処も何も無いか。未だに虐めは無くならない...無くせないが正しいか。クソガキどもにいちいち虐めをするなって喧伝しても無理あるのが現実だ。じゃあ大人は?クソガキどもを正しく導く為に、学校に先生を置いてるはずが、その先生どもは全く機能してなかったのは俺の気のせいか?違うよなぁ?
お前はそういう教育分野の大臣を務めておきながら何一つ改善を成せてない、クソ無能野郎なんだよ!!」
「ぐ、ぅ……!何も知らないくせに、勝手な――」
「ああ知らねーなァ。知る機会なんてあるわけなかったからな。俺はただ祈るしかできなかった。早く虐めが無くなって欲しいってな。けど叶わなかった。お前ら代々教育分野を担当する大臣どもは何も機能していないクズだったんや!!」
ペッと唾を吐いて、今度は厚生労働大臣に目を向ける。
「なぁ。今この国の労働環境は、二十年前に比べてどうなってるんやろな?表向きでは残業を無くすことに成功してましたー。ブラック企業と呼べる会社は以前と比べて減りましたーって公開してるそうやけど、果たしてそうか?
俺は知ってるで?実は目に見えないところで残業を強制しているクソ会社がいくつも存在していること。人間性がクソッタレ過ぎる奴が上司をしていること。ブラック企業なんてまだまだ腐る程に存在していること。お前らの統計は嘘ばかりや。
俺の魔術では目を逸らしたくなるようなクソ事情を抱えているクソ会社が大量に存在してるぞ?何がアルバイトや社員の味方の労基や。
俺が相談してもあいつらは全く相手しなかったぞ!?味方とかほざくなゴミクズが!!お前ら代々労働大臣はまっっっったく労働環境の改善なんか成功してねーんだよクソが!!」
労働大臣に向けて針を投げる。頬をかなり抉って血を咲かせてやった。喚く大臣を無視して他の大臣に話しかける。
「喫煙所外で喫煙をしないという常識が、どうして未だに浸透出来ていないのかなァ――厚生労働大臣。このクソ野郎。
許可された場所以外で喫煙は法的に禁じていないのは何で?飲酒運転並みに罪深いって考えられへんわけ?あのさァ、肺がんや白内障の原因となる物質をまき散らす嗜好品が回ってることに何も思わんのか?あれも麻薬として扱わへんのはどういう違いなわけ?
ホントさぁ、お前らまで喫煙に対するモラルが糞溜めの底辺なんやな?上の人間が揃いもそろってこの体たらくやから受動喫煙が未だに横行してたんやろうが。まぁ俺が何もかも根絶するからもう終わるけどな」
「この国はロクに運転マナーがなってねーと思わなかったのか?お前を含む国土交通大臣さんらはさァ!?教習所はいったい何を教えてるわけ?車以外の通行者の通行は全て優先されるべき、絶対だってことを全然分かってねーカスばっかじゃねーか!あんな奴らに免許を与えるとかどうなってんのこの国の車免許の基準はよォ!?ああいうカスどもに車の運転なんか許すから事故がよく起きるんやろが!!
というわけで仕事以外で車を使う必要が無いと判断した俺は、自家用車を全て潰しました!
あとバイクの騒音も同然や!何が国土交通省や。ちっとも機能してやがらねぇ、カスだわお前らは」
「なぁ財務大臣さんよぉ?何で消費税なんか徴収してるわけ?しかも食品や薬とか生活に欠かせない物にも税をかけてるしさぁ。ンなもんを集めてまでこの国の運営には金が必要なん?全く良い方向に機能していないこの国に消費税なんか必要か?他の国の税制度を知らんのか?食い物と薬に税金かける時代は古いし終わってんだよっ!!」
などと、色んな大臣に向かって俺が昔から抱いていた日本の様々な不満と忌むべき風習を挙げては詰るを繰り返す。皆一丁前に反論してきたが、どれもくだらない理屈だったので黙らせた。
「まぁ何よりも、こんな日本を許してしまっているこの国のトップには、ガッカリさせられたわホンマ。なぁ、現内閣総理大臣さん?」
「.........」
青い顔で俯いたままでいる総理に話を振る。アイツは俺が死んだ当時の総理大臣と同じ家系の人間だそうだ。阿部だか阿武だか忘れたが...。そのアベ…何とかの名前の総理が反論をぶつける。
「世の中が、誰にとって良いものだと思うなよ...。私やここにいる彼らを含む世の中の人間誰もが、お前みたいに理不尽を経験したり輪から外されることだってある。その度に辛く思ったり嫌になったり、時には死にたくなることだってある。
だがそれでもどこかで皆は折り合いをつけて生きていく!皆がやっている、出来ているからこそこの世の中だ!
お前のそれはただの逃げだ...!何でも人のせいにしているだけだ!その幼稚な思考が却ってお前自身を苦しめていることが分からないのか!?」
何を言うのかと思えば、またそれっぽい言葉。
「ハァ...“皆同じ思いをしているから”“皆がやってることだ”“皆だって辛くて嫌なんだ、だから一緒に我慢して頑張ろう”
要はそうやって“全”を引き合いに出して、“個”を軽んじて疎かにしてどうでもいいと切り捨てている。俺にはどうしてもそういう解釈としか捉えられないんやけど?何が皆や......そんなことだからいつまで経ってもこの国はマシにならねーんだろが」
「だから――」
総理が激昂しかかったその時、「だが……」と遮って続きを言う。
「まぁそもそも人間である奴が、同じ人間どもを完璧に制御すること自体が無理やったんや。お前らを責めても仕方ないってな...んなのは分かってるっちゅーねん」
俺のいきなりの手のひら返し発言に全員が顔を向ける。
「だからこれからは...俺がこの国を運営することにするっ!お前らを感情の無い傀儡に改造して俺の意のままに動かす...これこそが俺流の日本改造や。面白くなってきたな~~!」
「「「「「な...!?」」」」」
俺の宣言を聞いた大臣どもは完全に呆気に取られていた。だがすぐにふざけるなだの、許されないだの、勝手にも度が過ぎているだの、非難ごうごうだ。
「あのな、コレもう決めたから。お前ら大臣どもや国民どもの意見とか知らねーから。俺の味方がいないこんな世の中どうなろうがもう知るか。
俺が楽しく幸せでさえいればもうしれでオーケーなの。だからお前らはもうええよ?いなくなって...さぁ――改造開始っ!!!」
そしてこの日、日本のトップが変わった――。
外見はそのままだが、中身は全て杉山友聖の意思となり、彼の思うがままに政治を進めた。
杉山友聖が理想とする日本が完成したのは、この日から約1ヵ月後であった――
*
国のトップどもを俺の傀儡にした次は、粛清し損ねている残ったゴミクズどもの完全根絶の作業に入った。
俺の検索魔術は全てを教えてくれる。誰が俺にとってこの国に不要で害にしかならないゴミクズなのかを。例えば...俺が蛇蝎《だかつ》の如く嫌悪している例の人種どもと、その人種になり得る予備軍ども。予防措置として早々に消さなければやな。
あとは......やっぱり虐めをしているクズどもとかもやな。正義感に目覚めたわけやないけどやっぱ不快やしな。ああいう奴らを消すとするか!
「――というわけでまた放送中に失礼しまーす!この国には俺にとって害となる人種が多過ぎるので、この後俺は消すべき人間どもを、赤いレーザーで一掃します!
安心してええで。何も無差別に殺すわけやないから、誤射することは無いから。俺がこの国に不必要やって断定した奴しか狙わへんから。今日はこのことを言いに来ただけや。
ああ逃げても無駄やからな?俺からは絶対に逃げられへん。まぁそのことはお前らがよく分かってるはずやろうから、諦めろ。今回俺に殺されることになってるクズどもは、自分のクソッタレな行いをしっかり顧みて来世に生まれ変われや。
んじゃ、これより...“選別”を開始しまーす」
宣言を終えると同時にスタジオから出て行き上空へ飛ぶ。両手から赤い魔力の塊を出現させる。中には濃密の魔力が詰まっている。ここから何万、何十万、何百万もの殺人レーザーが飛び出していって俺が要らないと思う日本人を殺してくれる。
さぁいよいよ仕上げや...!3・2・1とカウントした後、俺は一気にレーザーを放った!!
「この魔術の名前は……そうだなぁ。
“神による選別” とかかな。これだと厨二感が出てるか」
自嘲しながら全てを教えてくれる魔術本を使って、日本が今どうなっているのか、様子を見てみる。
まずは…政治家。日本在住の政治家の大半が消えていた。日本の政治家の大半が高給取りの無能どもって聞いたことあったけど、本当だったようだ。なら消えてしまっても全然困らないな!俺の生活を豊かにするのに全く貢献していない愚物どもなんか要らない。死んでオーケー。
次に……警察も全滅しているな。あんな偽善者が集う無能組織も、俺の役に立つわけがない。何が国民の安全と平和を守るだよ、笑わせんな。
守れてなかっただろうが、俺の安全と平和をよぉ。
その次は…学校関連。
どの学校にも一定数存在する虐めグループのクソガキども。そんなドが付くクズどもをよいしょと持ち上げて助囃し立てている、長い物に巻かれてるだけの質悪いガキども。さらには虐めを見て見ぬフリをして助けようとしない、クソ傍観者ども。
そして何より、虐めの事実をもみ消して、被害者たちを冷酷に切り捨てる、腐りきった教育者ども。
全て塵となって消え失せたようだ
どの学校も、虐めに遭っている被害者たちを除くほとんどの生徒・教育者どもが消えて無くなったようだ。ははは、一気に少子化を進めてしまったな。
最後にその他。今まで何度も直接殺してきたヤニカスどもや交通ルールとマナーの違反者ども。
さらに今回は、今挙げた連中になり得る予備軍も、この世から消し去ってやった!本の力で将来俺の前に現れるとされてるヤニカス・違反者予備軍を炙り出して、同じように消してやった。
そして喫煙や車以外の要素で、将来俺に不快感を与えるであろう人間をも殺してくれていた。
言うなればこれは予防接種のようなもの。将来この身を脅かす可能性があるウイルスに蝕まれない為の予防と同じことをしたまでだ。
どんな小さな火種も、早いうちに消しておかないとな。
ちなみに、俺の母と姉も、今のレーザーの犠牲となっていた。
家族を殺したことに、何の感情も湧いてないこない。あいつら二人も死んでほしいと、生前何度も思っていたからな。本当に死んだと知っても「ふーん、そう」としか言葉が出てこない。
反対に、「神による選別」を免れたのは、どれだけいて、どういう奴らが生存を許されたのか。
「神による選別」を免れた人間は、まず……食い物を生産・管理している連中、水と電気とガスと薬などを管理している連中など。
要は、生活必需品の生産と管理、生活基盤を管理して制御…といった、人間の基本的で一般的な生活の維持に欠かせない仕事をしている人間を、第一の生存対象としている。
そういう仕事をしている人間をたくさん消してしまうと俺の生活がだいぶ不便なことになり得る。ヤニカスとかじゃない限りは、基本生かしてやっている。
次に挙げるのは……俺の趣味であるアニメ、漫画、小説(ラノベ)、ゲーム制作に関わっている人間である。
彼らも当然生かさなければならない。特に俺が好きな漫画やゲームといった作品の制作者たちを殺してしまったら、今後の人生が一気につまらなくなってしまう。
日本の文化…特に二次元は世界トップクラスだ。それを廃れさせることはあってはならない。よって俺にとって害悪になりかねない奴らだけ消して、残りはほとんど生かしてある。
あとは、アニメや面白い番組を流す媒体...テレビ局に勤めてる人間もある程度は生かしてある。食品、薬品、完成した書籍やゲームなどをも全国各地へ届ける運輸する人間もある程度は必要だ。生かして大丈夫な奴だけ生かしておいてやろう。
ああそうだ、まだ一つあった。それは“エロ”だ。
エロも人生には欠かせない要素だ。俺はもちろん、人間誰しにも《《性》》活は不可欠だ。それを糧に生きている奴だっているくらいだし。
というわけで外見が俺好みで、さらに性格などの中身も無害できれいな女だけ、職業問わず生かしておこう。
それにしてもスゲーな。俺の今後の人生において不必要な人間をどれだけ消しておくべきとか、欠かせない人間をどれだけ生かしておくべきとか全て、この魔本に記載されてやがる…。有能過ぎて怖いくらいだ。
「……!おお、凄いことになってるな!」
魔術を行使してからまあまあ時間が経った。気が付けば1億数千万人はいた日本の今の人口がなんと、3割も減っていた。3000万人以上死んだのかー、凄いな。
ドローンカメラを大量に飛ばしてやって、各地の様子を見てみる。
悲鳴、怒号、絶望、怯え、パニックなど負の感情をまき散らす者もいれば...
「ははは...僕を虐めてたから殺されたんだよ、ざまーみろ!あはははははは!誰だか知らないけどありがとうっ!!」
「うはははははっ!やったぜ!!俺の大切な同僚を過労死させたクソ上司が死んだ!人を道具のように扱って、命を粗末にしたことに対する当然の報いだっ!!」
「アスリートである私にとってタバコの煙は本当に迷惑で害だったのよね。清々したわ!」
などといった、かつての俺と同じような人間の歓喜の声も聞こえる。ただそういった人間は比較的少なく、混乱、恐怖、絶望といった感情の方がほとんどだった。
ふざけたことに、ほとんどの日本人が、今の日本に満足してたようだ。日本だけじゃない、世界中そうかもしれない。俺には微塵も理解できないが。
何はともあれ、これで“選別”は完了。日本国内限定で俺にとって害にしかなりかねな不要な人間どもは全てこの世から消してやった。
この日本だけ、俺を不快にさせる人間はもう一人として存在していない!!
「理想の日本が、見えてきた...!」
残すことは、この国の制度の改造や...。
『消費税を撤廃することを決定。明日から消費税は無くなります』
『自家用車とバイクの撤廃により、電車とバスの運転数を増加させることを決定』
『学校や職場で起こる虐めやパワハラに大して刑罰を科すことに......即死罪と決定』
『残業を1秒でも行った場合、それを強制した者は懲戒免職もしくは死罪が科されることを決定』
『警察組織と自衛隊を解体。新たな組織を代わりに結成する方針だ』
などと、色々好き勝手に書き換えてやった。宣言したのは俺の傀儡と化した感情の無い大臣どもだ。俺が考える、国民に優しい法を新たにつくってやったぜ。
さて……「神による選別」を行使したことで、日本の人口がもの凄く減ってしまったな。これでは人手不足で国が機能しなくなってしまう。
ではどうするか?
「“錬成”.....アバター作成」
無人の広い荒野に移動して、そこで俺は錬成魔術を行使した。
すると地面から幾万ものアバター人間が這い出てきた。こいつらも俺に忠実な人形、しかも一般の日本人より頑丈で強い。
食い物も水も摂らなくても消えない、動力源は定期的な魔力の注入で良い。大体月に1回でオーケーだったはず。
「お前らの仕事は単純だ。俺がこの世から消してしまった人間どもがやっていた仕事をするんだ。
人手が不足してしまっている地域に行って、死んだ連中に代わってお前らが働いて、国を支えるんだ。
お前らが俺が改造したこの日本を機能させていけ。いいな」
命令をとばすと同時にアバターどもは各地へ移動した。これなら労働不足に悩むこともない。人がいくら死のうが、俺の魔術でいくらでも補填できる。これで日本が破綻しないで済むはずだ。
「理想の日本が、完成したぞ...!」
感激して少し泣いてしまった。これからは幸せで楽しい人生が待っている。復讐を終え、粛清と改造も終えた後は、楽しく生きるだけだ!!
*
あれから数年――。
「ん......ぁはあ♪楽しかった...気持ち良かった♪また私と遊んで下さいね、友聖君♡」
「おーう。今日も良かったで。またよろしく」
今日も行きつけの風俗で色々発散してから帰宅。
新作ゲームをプレイ。
美味い物を食う。
毎日娯楽尽くしの最高の日々を過ごしている。
「神の選別」を行使した日、アバターたちが死んだ奴らになり代わって働くようになった日から数日間の間。
やっぱりというか、選別を免れた人間のほとんどはしばらく働こうとはしなかった。
大量殺戮を行った俺に対する不満や憎悪を露わにしていて、中には暴動を企ててる奴らもいた。
しかし本当に暴動に移すことは、誰もしなかった。誰もが俺を憎むだけに止めていて、徒党を組んで俺を抹殺しようといった不穏な事態は全く怒らなかった。
だから俺もこれ以上は誰も消すことはしなかったが、俺が残した爪痕は思った以上に生き残りの奴らを傷つけてしまっていたようだ。このままでは国が機能しなくなる可能性が出てくる。
だから、国民全てに“催眠”をかけることにした。アバターたちを媒体にして催眠魔術を各地の人間たちに放って、こう念じた。
「俺が今まで行ってきた殺戮と粛清に関すること全て忘却する 今の日本に何の違和感も不満も抱かなくなる」
しばらくして、全ての人間が以前と同じ生活に戻っていった。
はいこれで今度こそ全てやり終えた。
俺は幸せやし、他の国民らも嫌な気持ちにならない、丸く治まったね!
という感じで国を運営して楽しい生活を送っている。海外諸国の目も何やかんやで誤魔化して平常通となっている。
むしろ先進国の中で経済レベルがアメリカや中国に比肩するくらいにまで成長して、大躍進している。
何の害も不快感も無い生活。美味い食い物と娯楽に溢れた家。外に出ても敵はいない、障害も無い。楽しい、楽しくて仕方がない!幸せ過ぎる!!
楽しい、幸せだ!この気持ちに間違いは無い。嘘じゃない。食い物もアニメもゲームも漫画も小説もその他番組もエロも、全てが充実している。そこには不満は無い。あるわけがない。理想が叶って毎日が最高の一日だ!
だが......俺はどこまでも欲深い人間だったのだと、ここにきて改めて気付かされた。
「.........足りない」
まだ、満出来ていない―――
*次回 第一部最終話