対象 中村一輝

 「やれぇ!手足を潰して動けなくなるくらいまで痛めつけろ!止めは俺らがやる!!」

 前原がそう命令すると同時に、鉄パイプやナイフと手にしたチンピラどもがまず勢いよく突進してきた。

 「あーあ~~。大人数でそんな武器持って突っ込んでくるのはダメだろぉ~~。そんなことしたら、さぁ!」

 チンピラどもがぶつかってくる直前、俺は地面を強く蹴って、瞬時に真上へ跳んだ。突然の回避にチンピラどもはもちろん対応出来るはずがなく、勢いそのままお互い武器を構えたまま......

 「「「ぎゃああああああああああああ!!!」」」

 囲んで突っ込んできたチンピラどもは、互いの武器...鉄パイプやナイフ、木刀なんかをモロにくらう羽目に遭い、自爆した。

 「集団で一人をボコる時は、ただ囲んで突っ込めば良いってものじゃない......まずは敵の動きを封じるべく押さえ込みに行かなければならない。中学や高校の頃はよくそうやって俺を動けなくしてたよなぁ前原くーん?」
 「ぐ...!馬鹿かお前ら!!考え無しに突っ込むな!まずは杉山の動きを止めろ!!」

 「でもな。俺に限っては、どんな作戦も意味無ねーんだわ」

“筋力操作” 筋力を本来の強さに回帰。

 ブンッ!!「「「「「ぐぎゃああああああああああ!!!」」」」」

 久しぶりに、自分のフルパワーを解除して、鋭い蹴りを放った。その風圧だけでチンピラどもは宙に舞って戦闘不能。蹴りをモロにくらった奴は、みんな即死した。こいつらは復讐対象でも何でもないただの虫けらだし、さっさと殺しちゃおう。

 「な...!?え.........」
 「そんな、嘘...だろ...?」

 中村と前原は俺の異常な力を目にして狼狽する。無理もない、こんなの漫画や特撮か何かでしか見たことない...実際こんなことが出来る人間なんて存在しない、それが常識だって確信しているのだろうから。

 「でも残念!これは現実だ!ほらこうやってお仲間どもが無惨に殺されてるだろ!?」

 ゴウッ!ベシャァ!!
 ブォン!グチャァ!!
 ズドドドドドドドド!!!ブチャベチャゴチャァ...!!

 腰をしっかり回転させての剛腕ストレートパンチ、全身の筋肉を使った回転蹴り、一撃一撃に全力と殺意を込めたラッシュ。俺を囲んでいた敵どもはたちまち屍肉と化して斃れていく。その惨状を目にした生き残りのチンピラと黒服どもはすっかり戦意を失くして、恐怖に震えて俺から離れていく。
 しかし一度敵意を以て俺の前に立った以上、戦意を失っていようがそれらを逃がしてあげる程、俺は甘くはない。

 「こらこら。ちゃんと最後まで戦いなさい...っと!」

 ズパン!ドゴォ...ン!!

 「「「「「あぎやああああ”あ”あ”あ”あ”あ”...!!」」」」」

 どデカい風の刃を飛ばして切り裂いたり、大規模の火炎爆弾を投下して消滅したりと、あとは広範囲の殺人魔術を適当に撃って殺した。これで前原が寄越した刺客は全滅したみたいだな。久々の全力運動が出来て楽しかったぜ!

 「ば、化け物だ...!殺される......う、うわああああああああああ!!!」

 中村がさっきまでの態度から一変して、俺を恐怖して悲鳴を上げてここから逃げ出そうとする。が、すぐにその進行は妨げられる。見えない壁にぶつかった中村は、鼻血を出してやや吹き飛んだ。
 いつもの結界を張って、さらには前原と小西の全身を鎖で簀巻き状に拘束した。今回は3人いるからな......順番に復讐して回らなければならないから、残りはこうやって邪魔されないよう拘束しておかなければな...!

 「というわけで、まずはお前からだ......中村一輝君」
 「ひっ!あぁあ......来るな!!来るんじゃねぇ!!」

 追い詰められてヤケを起こした中村は、俺に殴りかかってくる。ハッwwあの時と同じだ。一人だとこいつは本当にただの雑魚だ。何の脅威も無い、ゴミクズ野郎だ。
 とんできた拳をしっぺの要領で叩き落とす。それだけで奴の手首が砕ける音がした。

 「ひぎぇあああああああああ!!?」

 たかが手首が壊れたくらいでいい年こいた男が情けなく絶叫する様は小物そのもの。俺はあの6年間、こんな小物で雑魚で卑劣野郎に虐げられていたのかと思うと、激情に駆られてしまう。こいつには思いつく限りの拷問で苦痛を与えなければダメだ。

 「分かってても......ああダメだ。お前を前にすると、今すぐ死体に変えたくて堪らなくなるっ!!」

 ズバァン×5、ザクザクゥ!!

 「い”や”あああ”あ”あ”!!腕がぁ脚がぁ!!腹を斬られたぁ!おぇっ、し、死ぬ、ぅ...!!」

 気が付くと中村の全身をやや深めに斬ってしまっていて、血をたくさん流させてしまっていた。慌てて治療して出血を止める。
 ダメだダメだ......もっと冷静に怒《いか》るべきだ。コイツを如何に地獄を見せて残酷に殺すのかを考えながら怒るんだ。頭の中まで血に染めてはいけない......よし、もう行ける。

 「あっ、えああ......!ご、ごめんなさい。ごめんなさい...!」
 「......何への、ごめんなさいなんだ?」
 「ひっ!?その...舐めた態度取って、口きいてすみませんでしたっ!もうしません、ごめんなさい...!」

 ガタガタ震えるこのキモいおっさんを冷徹な目で見下しながら、俺はため息を吐く。

 「お前さぁ、俺がどうしてこういうことしてるか分かってる?前原、そして小西もだ。俺さっき言ったよね?復讐するって。つまりそういうこと。お前らには強い恨みがあって、殺したいくらいの憎悪を抱いているわけ。だから謝罪とか、そーいうクソみたいな言葉は求めてねーんだよ」

 「う、恨み?憎悪?復讐?.........あ、ああ...!」
 「そうだ、お前らが俺にしてきたこと、思い出したよな?6年に亘ってお前ら3人中心に俺を理不尽に虐げてきた。そのせいで俺はロクな人生を送れなかった。進学できず、ロクな雇い先しか見つからず、心と身体が潰れてしまった!お前らから受けた傷は!とても深く深く、人生を狂わせる程だった!!」
 「ひぃいいいいい!!」
 「う...ぐ!」
 「う、あああ...!」

 俺の怒りのシャウトに、中村はビビりまくり、前原は身に覚え有りといった様子で閉口し、小西も同様に思い出して顔を蒼褪めさせている。

 「お喋りは以上だ......... “苦しめ” 」