「か......勝手に家に上がり込んできて、暴力か...。お前、昔と何も変わってないな。そんなだったから、お前は無様に虐められて――」
 「うっせぇ喋んなカス! “お前に俺を侮辱する権利を奪う” 」

 ――――――

 「―――がッ!?声、が、出てこな......があああああああああ!!?」
 「お前今、何て言おうとした?また俺を侮辱しようとしたな?だからお前の喉は今、焼けるような痛みに襲われているんだ」
 「な”ぁ!?何でぞれをじっで...!」
 「知るか自分で考えろクズが」
 
 ガァン!「ぎゃあ”ァ!!」

 額部分に拳をぶつけてリビングまで吹き飛ばす。無様に仰向けで倒れてる姿を見て声出して嗤ってやった。そう...昔の奴が俺を見て嗤ったように。
 因みにさっき清水が喉にダメージを負ったのは、権利が無いのにそれを行おうとしたからである。奴にはペナルティが課せられた。
 “権利剥奪” 無属性魔術の究極魔術だ。名前の通り、相手が最初から持っているあらゆる権利を、俺の意思の下で消していくものだ。
 今の清水みたいに「人の悪口を言う権利」とか「特定の食べ物を食べる権利」(豚肉やお米など)とか、「自慰行為する権利」なんてことさえも剥奪できる魔術だ。剥奪された権利は永久に戻ってこない。今の清水はもう一生人の悪口を言えない人間になっている。良かったなー。会社とかの同僚や後輩から聖人だとか評価されるぞ。
 まぁ......そんな機会は訪れないけど。今から死ぬんだし。

 「おい、俺に何か言いたかったんじゃなかったのか?言ってみろよクソ野郎」
 「て、めぇ...!この―――っか!?......ぐあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!の”、どがあ”あ”あ”あ”あ”!!あ”づい”!や”げる”よ、うだ...!!」
 「いや実際に焼けてるんだよ馬鹿が。昔みたいに俺を侮辱しようとするからそうなってんだろうが気づけよ間抜け、がよっ!!」

 ドシュ...!「い”、だああああ”あ”あ”!!」

 両腕に剣をぶっ刺して適当に蹴り転がす。随分雑な制裁だがこんなもので良いだろ、復讐なんて。俺が面白い、気持ちいいと思えるならそれで良い。

 「お前がっ!遊び気分でデタラメ吹聴したからっ!周りまで俺を馬鹿にさせるようになって!虐めの主犯どもを煽らせて!俺を苦しめたんだよなぁ!そうだろ?清水博樹ぃ!!」

 ドガッ!ドスッ!ゴスッ!グシャ...!ズチィ...!

 「あがっ!ぐへぇ...!や、や”めで...!助けて!おげぇ...!」
 「何が鼻くそだ!あの時、俺の鼻にデカい鼻くそなんてあったか?ティッシュで拭っても取れないような鼻くそだったか?俺は鼻くその感触で遊ぶ変人だったか!?言ってみろ!このホラ吹きクソ野郎が!!」
 「あげぁっ!あ、ありませんでしたぁ、ぐぼぉ...!あの時杉山の鼻にそんな鼻くそは、まったくありませんでした!!げぇえあ”...!嘘です、杉山があんな奇妙なことをする人間なんかじゃありません、全部俺が言った嘘で、す...!いだああああ!!」
 「そうだよなぁ?なのにお前は面白いとかそういう下らない理由で、俺を名誉毀損レベルの侮辱をやらかして、虐めの材料を増やしていったんだぁ。良くないことだって、当時のお前でも分かってたはずだよなぁ、虐めはさぁ?サッカー部だったお前には俺を虐めてた主犯格が何人かいたが、そいつらの仲間としてお前は間接的に俺を虐げていたんだ。これは俺の中では死罪確定だ。よって清水博樹!たった今からお前を残酷に殺すに処す!」
 「だ...誰かァ!!助けてくれぇ!!警察と救急車をぉ!!殺される!!こいつに、杉山友聖という男にころされるうう!!助けを呼んでくれええええ!!」

 清水が真っ青な顔で助けを求めて叫ぶが、反応は一切無し。俺の笑い声以外なんの音もしないことに、清水がさらに絶望する様を、俺は嗤ってみせる。
 
 「だはははははははは!!そうそう!昔の俺は、今のお前みたいに無様には叫ばなかったが、みんなに助けを求めてた。けど誰も助けようとはしなかった!今のお前はなぁ!あの時の俺と同じ底辺に墜ちてるんだよぉ!どうだ!?必死に助けを求めても誰も応えてくれないというこの痛み・屈辱はぁ!!これが俺が受けた全てだ!!自慢すべきことじゃないけどなぁ!」
 「あ、あああ...ああ......」

 現実を突きつけられた清水は、もう叫ぶ気力さえ失せて、無様に涙を流すことしかしなくなった。助けが来ないのは、この部屋に防音・防振動結界を張ってるからなんだが。というかコイツ、俺のこの力を目にしても何も言わねーな。それどころじゃないってか。
 
 「それにしても、良い部屋に住んでるなぁ。お前の仕事は...サッカー担当のスポーツ雑誌の編集者かぁ。お前サッカー上手かったもんなぁ。全日本中学の何とか連盟に召集されたんだっけ?俺を虐めておきながら随分リア充してきたんだなぁ...」
 1LDKの部屋全体を見回して部屋に入っていく。そして部屋の壁に貼ってある写真をてにして...

 「おやぁ??この写真は、なーにかなぁ!?」
 「そッ!それはぁ...!!」

 清水が狼狽した声を上げるが無視して、部屋に置いてあった写真を全て見た。
 
 「......いやいやおいおい。お前マジか?未だに人が虐げられてるところを愉しむことしてるんだ?まさかその様子を写真にしてるとかマジかよ。しかも小動物までいるし。うわぁ...。人としてどうなのそれ」
 「ぐ......うぐぐ...!」

 俺が目にした写真は、どれも数人に暴行されている人間(中には子猫や子犬も)の姿だった。血を流し、泣いていて、苦悶に満ちた表情をしてる男(動物)の顔をドアップしたものもあった。

 「中学時代の俺の件で味を占めたのか、高校・大学、そして現在もそうやって虐げられている者の様を安全な場所で嗤って見てたのか。うん、俺のこの行いは正しいってこと、証明できるね!」
 「お......お前も俺と同じじゃねーか!!理由は知らねーが強くなったお前は、弱い俺をこんな風にして、殺そうとまでしている!楽しそうに甚振ってるお前も、俺と変わらないじゃねーかよ!!」
 
 開き直って俺を糾弾するが、今ほど滑稽という言葉が似合うことなど果たしてあるだろうか?

 「お前のやってきたことは、“罪無き”者を虐げたことだ。俺の場合は“罪人”をこうやって正当な制裁を与えているだけだ。まぁ、楽しんでるという点は否定しないが。そこんところの違い分かる?いずれにしろ、お前が今も陰でやってたことは、人として最低でクズだということだ。そんな奴は社会から消えるべき......そしてこの世から消えるべきだ。というか...」

 清水の髪を掴んで頬を乱暴に掴んで持ち替える。頬の骨が軋む音を聞きながら俺は冷たい声音で告げる。

 「俺に悪意を持ってちょっかいをかけた、嫌がらせした、虐めを助長させた。俺がお前をこうして一方的に虐げて殺す理由は、それで十分だ。
 “お前が意見する権利は、ねーんだよ” 」
 「......!!」

 顔を青白くさせる清水を見て俺はゴミを見る目で嗤い、地面に叩きつける。仰向けになった清水の腹に、剣を向けながら俺は嗤って告げる。

 「まぁ...お前は中学の中で殺そうと決めてる中ではそこまで恨みは深くはないから、あまり時間かけずに殺してあげるよ。目障りだしな。じゃあ、死ね」
 「ま、、待って―――」



 中学時代の復讐対象 一人目殺害達成。