壇上には夥しい血が流れている。三人分の致死量の血が流れているのだから無理もない。
それだけの血を流させた当の本人...俺はケラケラと笑って愉快なご様子でいる。
ただの肉塊となった三人の遺体に俺は順番に小便をかけて亡骸を辱める。こいつら三人には散々不名誉不快極まりない呼び名で呼ばれたり見世物にされたりと俺の尊厳を汚し辱めてきた。だから俺は最後までとことんこいつらの全てを奪い汚して辱めることにする。
溜飲が下がったところで首以外の部位を焼却して、三人の首は隅に雑に置いてさらし者にしてやる。それを見たギャラリー生徒どもは指さして嗤い出す。これこそ“辱め”ってやつ!
床を掃除して初きれいに戻したところで、隅で震えているクソ女二人を中央に引き摺り出す。復讐もいよいよ大詰めや!
「いやあああああ!!やだあああああ...っ!!」
「死にたくない死にたくない!!あんな死に方、嫌ぁ...っ!!」
ジタバタ藻掻く二人を壇上に晒して重力で拘束する。うつ伏せ体勢のまま硬直させられて何も出来ないでいる二人の前に立って見下しながら話をする。
「よお、俺をパシリ扱いしていたクソ女ども。俺はお前らのパシリになんかは一度もならなかったけど、その度にお前らは俺が優しくないだの冷徹だの女の敵だのクズだの最低だの......挙げたらキリがねーくらいに、俺に関する悪辣なデマを学校中に広めて俺を貶めたっけ...?
そのせいで俺は同学年からはもちろん、上級生や今の二年生らからも俺を悪い奴として捉えるようになって、俺から避けたり俺を陰で非難したりと、校内での俺の評価は最底辺、いつもゴミ同然の酷い扱いを受ける嵌めになった...」
思い出を振り返る調子でかつて二人にされてきた嫌がらせ内容をポツポツと語る。二人は相変わらず涙を浮かべて震えるばかりでいる。ある程度語り終えたところで、俺は怒りの形相で二人の目前に剣を床に深々と突き刺す。
「「ひいぇああ!?」」
『なァ訊くけど......俺はお前らに暴力振るったっけ?正直に3秒で答えろ。じゃないと今度はコレをお前らに突き刺す。嘘はすぐに見破れるからな。はいさーん――』
剣を見せつけて尋問を始める。とりあえず公衆の面前でコイツらの悪行を晒してやることにした。
「―――ふ、振るわれてませんっっ!!ななたちは、杉山に暴力なんて振るわれたことありませんっ!!」
板敷が真っ先に答えを叫ぶ。状況次第では助かるとまだ思っているのか必死だ。
『うん、せやな。ホンマにブン殴りたかった気持ちやったけど結局はお前らにそういうことはしなかったよな俺は。暴力行使未遂は事実や!お前らは振るわれてもない暴力があったかのように吹聴していた!!』
俺が言い終わると同時に観客生徒どもから激しいバッシングが起こる。嘘つきだの悪女だのと、罵詈雑言の嵐だ。これは幻術によるものではなく、あいつらが実際にやってることだ。
けどさぁ、あいつらの半数人近くは今まで、このクソ女どものデタラメを信じてたよな。殺したくなるくらいの手の平返しみせやがって…!後で全員惨たらしく殺してやる。
『じゃあ次。俺は他の女子生徒にちょっかいをかけてましたっけー?』
『俺は下級生を脅したことあったっけー?』
『俺は誰かを貶めることなんかしたことあったっけー?』
と、今までコイツらが広めていた悪評の一つ一つを、本当か嘘かを二人に尋問していく。当然答えは全て噂はデタラメ、虚偽であり、この二人は大嘘つきだったってことを全校生徒・教師の前で暴露してやった。
《嘘つき!嘘つき!!クソ女!!》
ギャラリーどもが二人を非難しまくる。その圧力に板敷は泣いて震えて、吉原は逆ギレしてうるせェと怒鳴る、効果は全く無いけど。
「まぁお前らが如何に嘘つきで、俺を散々貶めて、俺が虐げられてるとこを嗤うような最低クズどもだってことがハッキリしたな?」
「「......!」」
「俺がお前らの命令に従わない、お前らの思い通りに動こうとしなかったという下らない理由で、理不尽に俺を潰すことにした。俺を底辺に突き落としてそれを楽しんで...随分とまぁ俺を散々お前らの玩具にしてくれたもんやなぁ?ほっっっんと、女って醜い生き物なんやって思ったくらいや......お前らのせいでっっ!!」
ズドンズドンッッ!!
「「ぎゃえあああああっっ!?」」
今度は銃を撃って二人の眼前の床に着弾させる。それだけで二人は情けなく喚く。
「......俺がさっきからお前らを殺したあいつらと違って甚振らへんのは何でか分かるか?」
銃をプラプラさせながら問いを出す。二人はブルブルと首を振る。恐怖で震えているだけなのかもしれないがとりあえず分かりませんという答えとして受け取ろう。
「いやさ?俺って女子に対してはさっきみたいな甚振り方は出来るだけやりたくはなくて?一応まだ紳士的要素が俺にはあるから?」
俺の発言に二人が顔を上げる(二度目の時は問答無用に痛めつけてたが)。もしかしたら私たちは酷い目に遭わされずに済むのかも、と期待してそうな様子だ。
「なァ、そもそもお前らは何で俺をパシリに行かせようとしたん?それも二度も三度も...しつこくしつこくさァ...。こういうのって普通一度断られたらもう関わろうとしないもんちゃうの?それも異性相手に...。何なん?理由あり?俺をパシリにさせたかった理由が」
二人は答えない。板敷に至ってはあからさまに顔を背けようとしている。この期に及んで後ろめたさで言うのが憚られてるのか。鬱陶しい。
「早よ言えや。死んだあいつらと同じ目に遭いたいんか、コラ?」
銃を頭に向けて脅すように言うと、板敷は観念したように、頬を赤く染めて(?)白状した。
「な、ななが...杉山を何度もパシろうとしたんは...............。
す、杉山をななのモノにしたいと思ったからっ!」
「あ?」
思わず呆気に取られてしまい間が抜けた声を出してしまった。誰を誰のモノにするって?俺があのクソ女のモノにやと??
「ななは、杉山のことイイかもって、せやからアンタをななのモノ...男にしようって!でもなながそう思ってた時には、杉山は皆から嫌われて...虐められてて..。ななの男になる人があんな目に遭ってるのは嫌やったから、なながアンタを虐めから守ったろと思って、それで...パシリとかから始めて、皆に杉山がななの男やって分からせて虐めを止めさせようと考えたんよ!?」
「.........」
「せやのに...肝心の杉山はななのそーいう気持ち全然分かろうとせずにななに反抗して協力せーへんくて...ななに全然なびいてくれへんくて...!言うこと全然聞いてくれへんかった!ななが杉山をどうにかしてあげようって思ってるのに杉山全然空気読まへんし!ただでさえ陰キャのアンタとスクールカースト上位のななとじゃ釣り合わへんのに!ななから歩み寄ってあげたのに、アンタが生意気にもななの誘い断るから!!」
「.........」
「ボッチで陰キャのアンタはただ素直になならの言うこと聞いてたら良かったんや!そうすればななが杉山のこと虐めから守ってやってたのに!その代わりにななが杉山のこと可愛がってあげてたのに!何でななのパシリにならんかったんや!?ななは自分なりに杉山のこと考えてたのに!
せやからななは、アンタがななのところに来るまで、皆と一緒になって虐め...ううん、なならのは虐めですらない。ただ嘘の噂を流しただけ!せやのにアンタはそんなことも分かろうともせずにこんな...こんな残酷な仕返しをして...!なならにもこんな酷い仕打ちまでしてっ!!」
板敷は自分の気持ちを、俺を虐げた理由をややヒステリックになりながらも告げて、最後は逆ギレ気味に俺を睨んで叫ぶ。
要するに、板敷は俺に好意を寄せていた。それで俺を自分のモノにしようとパシリから始めて俺を私物化しようと近づいた。けど肝心の俺はそんな板敷に反抗して奴の思惑通りに動かなかった。それが気に入らなかった板敷は、俺が従う気になるまで嘘の悪評を広めて俺を虐げ続けていた
と、いうわけ。
........................ふざけてやがる。
「ちっとも理解できへんのやけど?それでどうして俺がお前のところに行くという結果になれると思ってんの?はぁ?俺がどんだけ傷ついて辱められてきたのか理解しようともせずにさァ?」
「知らん、知らんわ!陰キャのアンタは立場が上のななに素直に従ってたら良かったのに!!下の人が上の人に従うのは当たり前やんか!!もうアンタなんか好きでもないわ!!死ね!!!」
「......おいおいおい。自分に従おうとせず自分になびかないから虐めに加担して、しかも今も俺を下に見てるんかよ...。同級生やのに立場が上とか下とか...。
何やねんコイツ。どこまで自分勝手な女なん...?」
――こいつはどれだけ俺に憎悪と殺意を抱かせるのか......
再び沸々とこみ上げる憎悪を感じながら、ずっと黙ったままでいる吉原に目を移す。
「で、お前はソイツの補助という形で俺を同じように虐げてたってやつか?」
「は、はい......ななに協力して、杉山の悪評を広めて...。それでななが付き合えるからって、ななが言ってたから......協力して......」
「ハァ………。どいつもこいつも」
ほんま...マジで。特に板敷というクソゴミ女...。こいつマジでアカンなァ。