化学室のノート



気付いてくれてない、よね。



しかたなく私はその人の左腕を、
右手の人差し指でトンと一回だけ叩く。



勇気が必要だ。
わたしはもともと人見知りで、
用事がない限りほとんど男子と話せないのだ。



「あの…すみません。
拾っていただけませんか?」



小声でささやくと
そのひとは一度私をチラリとみると、
無愛想に頷いた。



背が高いからか、少し窮屈そうにかがんで取ったシャーペンを手渡してくる。



「ありがとうございます」



ホッと一息ついて
彼を見上げて礼を言うと



その人は軽く会釈を返しただけで
ふい、とそっぽを向いてまた授業に戻っていった。



なーんか、ちょっとヤな感じ。




態度が無愛想なひとだ。
でも拾ってくれただけマシか、と思いなおし
気にせず私も授業に戻った。