どこにいても、何をしていても、いつもどこか息苦しい――こんな自分のことが大嫌いだ。
 しとしとと雨の降るどこかどよんだ街をバスの中から見上げながら、そう思った。
 「ねぇ、昨日部活の先輩がさ〜」
 「えぇ〜、あの子あの人と付き合うの?」
 キャラキャラと金平糖のように光る言葉を発する同年代の女の子達が、皮肉なほど輝いて見えて。私は湿気にうねるストレートの黒髪を指に巻き付けたりなんかしながら、Bluetoothイヤホンを耳に差し込んだ。
 真っ黒いイヤホンからは色とりどりの音が零れては弾けていく。自分には何にも色が無い、だからこそこうして色に染まってしまいたくなるんだと思う。
 誰かに咎められた時のように言い訳をしてはそっぽを向くように窓の外を眺めた。アナウンスが聞こえて、バスがブレーキをかける。
 俺、小里祈織(こざといのり)は午前中をサボった学校に行くために今バスを降りたところだった。傘を開いて空を見上げるとパラパラと白い音を立てて透明な傘を水滴が覆っていく。何となく憂鬱な気持ちを抱えながら厚底靴で1歩を踏み出した。