家族全員が食卓に着くと父ランスが自らワインボトルのコルクを抜き、五個並べたグラスに赤ワインを注ぎ入れて、長女ファラ、次女ウイン、三女アン、四女エナと順番に回し渡すと、グラスを軽く掲げてマンダー家の晩餐が始まる。

「マンダー家が王国を支配する日は近い。不自由をかけるが、お前たちのエナジーが栄華を得ると、我が娘として生まれた事に誇りを持つが良い」

 テーブルの下ではファラがロングスカートを膝まで捲り上げて股間に風を送り、ウインは膝を整えているが同じくスカートを捲り上げ、アンは足を組んで股間を解放し、エナは股を全開して鉄の下着を脱いだ解放感を味わっている。

「お父様。異界の戦士たちとの戦いが始まるのでしょうか?」
「戦士を率いるアルダリはお父様と同じく、錬金術師なのですよね?何か因縁があったのですか?」
「過去はどうでもいい」
「アン。夕食の時くらい楽しく話そうよ。いつも毒づいてばっかじゃないか」

 ボソッと呟いたアンにエナが注意したが、父ランスはワイングラスを傾けながら、服の上ボタンまで留めていたボタンを外し、異様に骨の浮き出た胸を露わにし、鼻髭をツンと指で伸ばして質問に答えた。

「確かに過去よりも現在が大事だ。アルダリとは学生時代に錬金術の勉学に励んだ仲であるが、マンダー家の力を見せつけてやろうではないか」

 ランスはヤズベルに罠を仕掛けて人間界への侵入を阻止するよう依頼したが、異界の戦士チームが現れたと聞き、四姉妹の力を試す絶好の機会だと考え直す。

「やっぱ、戦うんだ?」
「エナ、遊びじゃないのよ。それにあなたまで、順番が回るかしらね?」

 陽気で自由奔放なエナは異界の戦士と対戦を楽しみにしていたが、生真面目なウィンは妹を危険な目に合わせずに勝利し、父に認められる事を願っている。

 そしてアンは別の意味合いで、「お姉さまが全員倒して終わる……」と、料理を食べながら俯いて呟き、長女ファラが唇の端を吊り上げて答える。

「では私が一番強い戦士をひとり殺して、ウィンにバトンタッチしましょう」
「じゃ私は二番目に強いやつを殺す」
「ヤダ〜、お姉さまったら怖い。じゃーエナは一番のイケメンをやっつけるぞ」

 エナがスプーンをペロッと舐めて笑い、アンがフォークでチキンを突き刺して「エナには回さない」と顔を顰めた。

 長女ファラは父に厳しく育てられ、普段は清純な眼鏡美女を装っているが、性欲が高まると男性への恨みが爆発する。
 次女ウインは金髪を三つ編みした生真面目なしっかり者で、四姉妹のバランスを保つ事に努力した。
 赤毛の三女アンはファッションも地味で背も低く、劣等感から暗い性格になり、誰からも可愛がられるエナを嫌っている。
 四女エナはパープルメッシュのショートヘアで、陽気で明るい性格ではあるが、密かに父への反抗心を抱く危険な存在であった。

「それよりお父様、料理も食べてください」
「そうですわ。ワインを飲んでばかりで、せっかくの料理が冷めてしまいます」
「うん。飲み過ぎ……」
「同感ですー」

 普段は身だしなみにも気を使う厳格な父ランスであるが、酒が入ると表情が緩んで崩れ始め、過去の怨恨を持ち出して悪態を吐く事もあり、自由なひと時を楽しみにしている四姉妹はうんざりしていた。