古い教会をリノベーションしたマンダー家はヤズベルの邸宅から歩いて10分程の距離にあり、二階のステンドグラス窓からエナが顔を出し、赤いワンピースの姉ファラが通りから門に入るの見つけると、螺旋階段を早足で降りて玄関で出迎えた。

「お姉さま。どうでした?」

 エナは期待に胸を弾ませて笑顔で質問したが、ファラの曇った表情を見て声のトーンを落とす。

「父は?」
「地下室に居ます。遅いから心配したんですよ。それでキーは手に入りました?」
「ダメでした。ヤズベルを責め立てたけど、無いと言い張ってたわ」
「やはり、父しか持ってないのか?」

 エナが肩を落として溜息を吐き、スカートの裾を摘んで硬い鉄の下着の感触に唇を噛み、寄り添うファラと奥のキッチンへ向かうと、慌ただしく夕食の準備をしていた次女のウィンがエナを叱り、三女のアンも顔を顰めて睨む。

「エナ、なんでサボってるのよ」
「いつも、楽してるわね」
「ごめん。待ちきれなくてさ」
「お姉様。それで、どうでした?」
「お姉様達の予想通りだそうです。でも宝くじだって、買わなきゃ当たりませんのよ」
「鍵はともかく、面白い情報を仕入れたわ。夕食の時にお父様に伝えるので、機嫌を損ねないように支度を急ぎましょう」

 ファラがスープの味見をして調味料を足し、ウィンとアンがサラダとポテトとチキンを大皿に盛ると、エナが広いダイニングテーブルの上に料理を運び、フォークとスプーン、取り皿とワイングラスが次々と並べられる。

 マンダー家の四姉妹、長女ファラ、次女ウィン、三女アン、四女エナは父ランスの命令で鉄の下着を穿かされ、スペアキーを手に入れて一時でも解放感を得ようと、ファラが秘密裏に動いていたが鍵を手に入れる事は困難であった。

 古い柱時計の針が19時30分を指し示しすと、父ランス・マンダーが地下室の階段を上がるコツコツという音が響き、さっきまでお喋りをしていた四姉妹は緊張した表情で静まり返り、エプロンを外して衣服を整え、黒い司祭の服を着た父ランスがダイニングルームへ現れるのを壁側に整列して迎えた。