大通りにはスパイダーマンの被り物やファンタジー系のコスプレをした若者達で賑わい、渋谷のスクランブル交差点程ではないが、お台場のパレードも盛大だと注目されている。

「今日だけは異世界の戦士も目立たないってことか?」

 ソングは砂浜をデート中の若者が自分たちを見ても驚かなかったのは、ハロウィンの仮装と勘違いしたからだと思った。

「王の葬儀にも出席せず、急いで旅立ったのはハロウィンの日に人間界に到着したかったからじゃ。予定時間より遅れたが、なんとか間に合った」

 アルダリが前に立つエリアンとジェンダ王子を掻き分けて堂々と歩き出し、ソングとチーネとトーマもゆっくりと後に続き、ちらほらと砂浜に佇む人間を見ながらソングに質問する。

「それでハロウィンって何?」
「コスプレをして楽しむ日だよ。妖精とか神族への憧れかもな」
「ふーん、人間って変わってるわね」
「とにかく、問題なさそうっす」

 ジェンダ王子とエリアンはスマホを向けて写真を撮る人間を警戒し、アルダリの両サイドで剣と弓を構え、ソングがチーネとトーマの肩を叩いてくすくすと笑う。

「それでアルダリ、これからどうするんだ?ハロウィンとかいう平和協定も今日だけなんだろ?」
「俺たちは人間との戦いに来たわけではないぞ」
「そう心配するな。わしたちもコスプレをして、逆に人間になりきるのじゃ。皆んなで買い物に行くぞー」

 戦士チームはアルダリを先頭にしてお台場海浜公園から大通りへ出て、ハロウィンのパレードに混じって歩き始め、「ダイバーシティ東京 プラザ」の玄関口へ入り、フロアの案内板でファッション売り場を探し、エレベーターに乗って五階で降り、ユニクロの店内に散らばって服を選んで試着した。

 店員と他の客が不審な表情で二度見したが、ハロウィンだから変な外国人客がいると思われ、戦士チームの買い物は順調に進む。

「ソング、なんか楽しいね」
「チーネ、もう少し地味な服にしろって」

 チーネは人間のルールを知らないので、下着になって歩き回り、カラフルでスポーティーな服に着替えてソングに見せびらかし、ソングが呆れるのも気にせず笑っている。

「戦闘服は無いのか?」とエリアンが店員に文句を言い、試着室を占領する戦士チームに店員も困惑し始めると、アリダリが「早く決めろ」と急かして何とか購入服が決まり、精算しに行くのアルダリの耳元でソングが囁く。

「アルダリ、分かってるよな?金貨は使えないぞ」
「心配ない。コレがあるわ」

 アルダリはリュックから出したクレジットカードで支払い。ソングはカードの名義が母親の名前『ユイ・アムロ』になっているのを見て苦笑し、数分後に着替えた戦士チームがユニクロを颯爽と出て来る。

 アルダリはサングラスをして赤いジャケットとチノパンを着込み、以前の服と武器はスポーツバッグに入れて各自に持たせてあった。

 エリアンはビッグサイズの黒いパーカーにスウェットパンツ。ジェンダ王子は白いシャツにデニムのジャケットとジーンズ。トーマは黄色いフリースにカラーパンツ。ソングはブルーのプルパーカーにジョガーパンツを穿き、チーネはワイヤレスブラとレギンスを着てピンクのパーカーとミニスカートを重ね着している。

 しかしエリアンの盾と剣はバッグに入らず、戦士チームが異世界から来たとバレるのは時間の問題であり、腐食の呪いを蔓延させた魔術師の捜索が不安視された。