頑丈な鎖が真っ二つに切れて石床に転がり、カッコよく両足を広げて着地したソングであるが、切り捨てスマフグの尻尾を踏み付けてピクピクと動き「うわっ、生きてんのか?」と飛び退いてころび、「ソング、返して」とチーネが巻きスカートを奪って腰に付け、ソングは下半身丸出しになり、慌てて自分のパンツを取りに走った。

「別に、負けを認めたわけじゃねーぞ」とスマフグが鎖を蹴散らして戦士チームへ迫り、エリアンとジェンダ王子とトーマが対峙して文句を言う。

「まだ、やる気か?」
「往生際が悪いっすね」
「ソング。やっぱ、首切った方がいいかもよ」

 ソングは何も言わずにチーネの衣服を拾って渡し、火の消えたベッドを懐かしむように精霊秘体の中を浮遊した体験を思い起こし、チーネと一緒に服と防具を装着した。

「ソング。また指欠けたね」
「ああ、体の中でドラゴンが呪いを焼き払ってんだな。隠された武器にも驚いたぜ。チーネ、導いてくれてありがとう」
「うん、間に合って良かった」

『フム、誰もが最強の武器を手にすると傲慢になるのだが、ソングには優しさが溢れておる。チーネともいいコンビじゃ……』

 アリダリがスマフグの前へ出て、布袋から金貨を七枚取り出して差し出し、スマフグは赤い褌一枚のアルダリを見下ろす。

「スマフグよ。これでおまえは自由だが、改めてウルズの泉の門番を続けるが良い。そしてわしらをこの金貨で通してくれぬか?」
「しょうがねー。アリダリがそこまで言うなら、許してやるか」

 スマフグは今更地下の棲家から出て、空も飛べないのに地上で権威を振るえるとは思えず、門番の仕事を辞める気はなかった。

「それに俺はこの仕事が気に入っている」
「おおー、それは良かった。では、少し休んだらウルズの泉へのゲートを通らせてもらうぞ」
「アルダリ。人間界へ何をしに行くのか知らないが、ヤズベルという商人と闇に堕ちた錬金術師には気をつけろ」

 スマフグは解放してくれたお礼として、アルダリに忠告し、敢えて名前は出さなかったが、錬金術師ランス・マンダーが罠を仕掛けた首謀者である事を匂わせた。