エリアンが防御に徹して剣と盾でスマフグの打撃を食い止め、身軽なチーネが猛スピードでスマフグの背中を駆け上がり、後頭部から蜜蜂の剣を半円に曲げてスマフグの眼を剣先で突き刺す。

「ムッ?」

 死角か襲う剣の軌道にマフグが蒸気の息を吐き出し、一瞬、片眼に刺さったと思われたが、瞼を閉じて跳ね返され、首を振ってチーネを後頭部から投げ飛ばす。

『えっ?』

 チーネはスマフグの耳に掴まって必死耐えていだが、アリダリの叫び声に気を取られ、空中で暗唱して石床に落下した。

『時間稼ぎは我々がする。チーネはソングとSEXをして、剣と盾を出現させるんじゃ』

 ソングも炎で型だったベッドを振り返り、「冗談だろ?」と呟いたが、アルダリは真剣な表情でソングとチーネを睨む返す。

 しかもスマフグは蒸気の輪っかを鼻から吹き出し、息をいっぱいに吸い込んで火炎を吐き出す動作を始めた。(頬をプクッと膨らます事からスマフグと呼ばれ、喉ちんこの火種で、発酵アルコールを発火させて一気に吐き出す。)

「チーネ、逃げろ」

 ソングの叫びと同時に、エリアンがチーネの腕を掴んで退避し、アルダリの手前でスマフグが吐き出した火炎を盾で受け、炎の波を堰き止めたが、エリアンのパンクヘアーとアリダリの髭がチリチリに焼け焦げてしまう。

「火はすぐには吐けまい。王子とトーマはヒットアンドウェイじゃ」
「了解した」
「しょうがないっすね」

 スマフグの足は鎖に繋がれているのを見てアルダリが指示を出し、ジェンダ王子が剣を抜いてスマフグに近寄り、トーマも仕方なくショルダーバッグから出したトカゲの被り物をして、爬虫類の腕でカンフーの構えをする。

「アリダリ、俺は?」
「わしとエリアンは火炎を防ぎ、ベッドを死守する」
「わかった。しかし盾が保つかな?」

 盾はさっきの火炎で黒焦げになり、アリダリが一角獣の杖を向けて霊力のバリアーを張り巡らしたが、それとても火炎に耐えられる時間は少ない。

「フム、三十秒じゃ。次の火炎より三十秒で絶頂に達し、剣と盾を手にせよ」

 走り出したジェンダ王子とトーマはアリダリの声を背中で聴き、スマフグの前で左右に分かれて、振り払う腕を躱して壁際に散らばった。

「それがタイムリミットか?」
「短すぎだろ?」

 チーネとソングは三十秒以内に絶対に達し、ドラゴンの神器を発現させる事以前に、戦いの最中にSEXする事でさえ無理難題に思えた。

「しかも、上手くいっても指を失う」
「最悪、体まで腐って死ぬ」
「でも、ヤルしかねーか?」
「そうね」

 チーネとソングはジェンダ王子が剣を回転させながら逃げ回り、トーマは壁を這って天井へ退避し、アリダリとエリアンが陣形を作ってベッドを守るのを見て覚悟を決めた。

「ソング。やるよ」とチーネがソングを火に囲まれたベッドへ誘い、「ここでか?」と渋ったソングを押し倒して宣言する。

「愛が有れば場所は関係ない。それにソング、あなたは愛の戦士になると誓った。恥ずかしがるより、勇者としてチーネを抱きなさい」