颯爽と前に進み出てスマフグに剣を向けたジェンダ王子であったが、「美味そうな奴だな」と脅かされ、すごすごと後退してトーマと一緒にエリアンとチーネとソングの陣形に隠れ、遺恨を残す女同士の争いに耳を傾ける。

「そんなか細い剣が刺さるかしら?」
「フン、そのぶっとい剣で尻尾を切り落とすことを願ってるわ」

『了解』とエリアンが筋肉を盛り上がらせて片手で太い剣を一振りし、チーネは『眼に突き刺す』と身を低くして蜜蜂の剣を頭上に構え、ソングは『下は俺に任せろ』とアイコンタクトした。

「いくわよ」とチーネが走り出してジャンプすると、ソングは前転してスマフグの足に斬りかかり、エリアンは背後に回り込んで地竜の尻尾に剣を振り下ろす。

「愚かな奴らだ」

 スマフグは久しぶりの戦いを愉しみ、空中で顔面に剣先を向けるチーネを軽く振り払い、チーネは寸前で躱したが、裏拳で叩き落とされて、ソングが剣を持つ手を痺れさせ、火花が飛び散るのを石床に倒れて見た。

「鋼の鱗で剣が弾かれる」
「堅すぎだ」

 エリアンの太い剣でさえ皮膚に傷も付けられず、荒ぶる尻尾に壁際まで弾き飛ばされてしまう。ソングはジャンプして避けたが、チーネが踏み潰されそうになり、寸前で抱き上げて岩陰へ避難する。

「くそっ、腹を切り裂いてやるぜ」
「ソング。その剣では無理だ。背骨の剣を抜き、臀部の盾を使うのよ」
「いや、そう言われても。また、恥ずかしい思いをするだけだぜ」

 ソングはドラゴンの神器が使えるなら、カッコよく取り出して戦っていたが、面接試験の時も失敗したし、体の中に剣と盾がある感覚さえなかった。

「アリダリ、余分の金貨はないのか?このままでは全滅だ」
「実は帰りの金貨も覚束無(おぼつかな)い」

 岩室の隅っこで、ジェンダ王子がアルダリに全額を支払えと提言したが、アリダリは金貨の入った袋の中を覗いて嘆き、城の金庫を開けたトーマが「王国は財政難っす」と呟く。

「チーネが時間を稼ぐから、ソング、なんとかして背骨の剣を抜きなさい。この危機を乗り越えるにはそれしかないよ」
「いや、でも……」

 ソングに抱えられていたチーネが立ち上がり、隅の壁に座り込むエリアンも三角の耳とパンクヘアーを逆立たせて、チーネと一緒に剣を構えてスマフグへ立ち向かう。

「わかった。やってやるぜ」

 ソングがチーネとエリアンの背中に声を上げ、両手を広げて仁王立ちになり、アソコにエネルギーを集中させる。しかし体の中の武器をイメージするが、森の湖に霧がかかったように背骨の剣も臀部の盾も見えてこない……。