戦士の面接試験を合格したソングが審議室を出て、チーネと通路を歩きながら両手の指を広げて嘆く。アリダリの忠告は理にかなっていたが、快感を知った若者には残酷な宣告である。

「チーネとしたら、また指を失うってことか?」
「ソングったら、今頃気づいたの?下手したら死ぬかもよ。それよりエッチなことばっか考えてないで、スーッと背骨の剣を抜く練習しなさいよ。このままでは宝の持ち腐れだぞ」

 チーネは指南役として背中から剣を抜く構えを見せたが、『あの時のドラゴンを想い出すと、愛液でアソコが濡れて紐の下着が食い込み、変な気分になる』と苦笑する。

「チーネ、ほんとは俺のドラゴンが使えないのが残念なんじゃねーのか?」
「バカね。とにかく、全部使えないとダメだろ」

 ソングがチーネの耳元で囁き、チーネが怒ってソングを突き飛ばし、先に歩き出したので背中にテントウムシがついているのをソングが見つけ、足の吸盤を不審に思って床に落として踏み潰す。

「なに?」
「いや、変な虫がいた」

 その時、通路の先の曲がり角でヘッドホンをしたトーマが、盗聴器が壊れた衝撃音で悶絶して床に倒れ込む。

「ソング、合格したようだね」
「おめでとう。これで一緒に戦えるな」

 ジェンダ王子とエリアンが笑顔で出迎えたが、王子は素早く弓を構えて矢を放ち、エリアンは王子と放たれた矢を見返し、一直線にソングへ向かった矢は顔の手前で薔薇の花に変化した。

「僕のプレゼントだ」
「ふん、乙女チックな魔法だな?」

 ソングは空中に静止した一輪の薔薇を手にし、足早に近寄るジェンダ王子が握手を求めて花を取り上げ、ウェディングブーケのように背後に投げてエリアンの胸の谷間に挿す。

『なんだ?』

 エリアンは薔薇を胸から抜き取り、「変なことすんな」と王子に投げ返そうとしたが、触れた瞬間に電流が走って心臓がドキッとした。

 その光景を目で追っていたチーネは『恋の魔法か?』と、ジェンダ王子がキューピッド の弓を使って、エリアンのハートに恋の魔法をかけたと見破る。

 何も知らないトーマは起き上がってヘッドホンを首に掛け、両耳を手で押さえながらふらふらとチーネとソングに近付き、改めてソングに挨拶した。

「鍵師トーマだ。よろしくな」

 ソングと握手してチーネにヘラヘラと微笑みかけ、「俺に開けられない金庫はねーからよ」と自慢する。

 ジェンダ王子はエリアンから薔薇の花を回収し、変化した矢を元に戻して背中の革ホルダーに収めた。

 チーネは一癖も二癖もありそうなメンバーが揃い、『揉めなければいいけど』と顔を曇らせ、万全な体制で暗黒の魔術師と戦えるのか不安視した。