元老院(げんろういん)の老齢議員は神の能力を失いながらも、数千年もの間権力の座に居座りつ続け、封建的な考えで権力を行使して、腐敗し始めた世界を改善しようとしなかった。ラグナロクの神々の最終戦争は、このような年老いた強欲な権力者によって巻き起こったと云う者さえいる。

「ソング。その小指は腐食の呪いによるものだろう?」

 錬金術師アルダリがソングの欠損した左手の小指を拡大鏡で見て、炭黒い残り滓が傷口に付着してある事を調べた。

「まさか、あの性器から腐る恐ろしい呪いから逃れたと言うのか?」
「信じられぬ。どうやったのだ?」

 元老院(げんろういん)の議員が顔を見合わせて驚き、ソングは小柄で禿頭の動転振りに、火星人みたいだと吹き出しそうになる。

「タ、タコジジイ……」
「ソング。失礼だよ。えーと、どうと言われてもこまりますが」
「そうね。私から質問します。ソングとチーネはSEXをしたけど無事だった。言いづらいと思うけど、詳しく説明してくれないかしら?」

 王女エッダが無能な議員に代わり、どうやって腐食の呪いを免れたか問い質す。

「マジで聞きたいのか?いやー、自慢話になるけどいいのかよ。とにかくもう、最高の初体験で……スゲー、気持ちい……」

 ソングが身振り手振りで喋るのをチーネが手を伸ばして口を塞ぎ、「バカ」と睨み付けて股間を足蹴りにし、王女と元老院に頭を下げてから話し始める。

「チーネもその時に初めて知ったのですが、ソングの体の中には剣と盾が隠され、アソコには毒煙を焼き払うドラゴンが潜んでいます」
「なるほど。ドラゴンの神器、ゼツリの仕業じゃな?」

 席に戻ったアルダリが白髪を手で撫でながら聞き返し、チーネは蝶に変身してソングの精霊秘体に侵入し、ドラゴンが火を吐いて、湧き上がる毒煙の獣を消し去るシーン想い浮かべた。

「ソングの性器に潜むドラゴンは、蜜液を放出する前に湧き上がる呪いを焼き払ったのです。それでチーネも助かり、ソングは小指だけに呪いを受けた」

 チーネの背中にテントウムシがとまり、その盗聴器から通路にいるトーマのヘッドホンに伝わり、ジェンダ王子とエリアンが奪い合って耳に当てて聴いている。

 トーマは傍聴席から出される時、ショルダーバッグから虫型の吸盤をチーネの背中に貼り付けた。(テントウムシは五センチ程のブローチであるが、マイクが仕込まれてヘッドホンに音声が届く。聴診器の先端にセットする器具で、コード接続すると高感度な鍵師アイテムになる。)

「でも、今のところはドラゴンも武器も上手く使えないのです」
「つまり……ソングとなら、SEXしても大丈夫」

 王女エッダの呟きが、通路の隅に集まってヘッドホンに聞き耳を立てるジェンダ王子とエリアンに伝わり、意味深な言葉を交わす。

「男に興味はないが、ドラゴンは気になる」
「僕も試してみたいよ」

 トーマは腐食の呪いを知らず、興奮気味な二人を見て首を傾げた。

 王女はソングの股間を横目で見て、『凄そうね……』と顔を上気させ、考え込んでいた錬金術師アルダリがソングに苦言を施す。

「ソングよ。このままではお前は指を全部失い、剣を持つ事もできなくなるぞ。欲望に走らず、禁欲を心がけて、ドラゴンと剣と盾の使い方を学ぶが良い」

 アルダリは羨ましくもあるが、ソングは愛と禁欲の狭間で難しい選択をし、最強の戦士へと成長しなければならないと推察し、アドバイスを受けたソングは複雑な表情でチーネと見つめ合う。

 そして元老院(げんろういん)の四名がこそこそと話し合い、議長が「ソングを合格とする」と告げて閉廷した。