四名の元老院(げんろういん)、王女エッダ、アルダリが一段高い議員席に座り、ソングだけがぽつんと前に立たされ、秘書官から配られたプロフィール用紙に目を通すと、老齢の議長が儀礼的に質問して面接試験がスタートした。

「安室尊具で間違いないかね?」
「うん。ソングって呼んでくれ」

 ソングは特に緊張感もなく笑顔で答え、背後の傍聴席には妖精のチーネ、鍵師トーマ、ジェンダ王子、女戦士エリアンが見学している。

「なんであいつだけ面接してんだ?」

 アヒルの被り物をした鍵師トーマが隣のチーネに質問して、ジェンダ王子と女戦士エリアンをチラッと見て警戒した。

「たぶん、態度が悪いからよ。ってか君、それ脱ぎなさいよ」

 チーネが無理やり被り物を剥ぎ取り、トーマは恥ずかしそうにゴーグルだけして凌ぐ。盗賊の癖に人見知りで臆病者なのだ。

「トーマだっけ?なんで君がすんなりメンバー入りして、ソングがダメなのか不思議」
「アイツ、弱いからだろ?」
「どう見ても、トーマめっちゃ弱そう」

 チーネにバカにされて苦笑いしたが、トーマはチーネとは仲良くなれそうだと思った。可愛いし、本音で話してくれる。

「ソングは人間の血を引き、しかも父親がゼツリだからだ」
「なに、あの伝説の勇者ゼツリの息子か?」

 ジェンダ王子の答えに前の席に足を投げ出していた女戦士エリアンが驚き、身を乗り出してソングに興味を示す。

「ゼツリは王お気に入りの最強の勇者であったが、人間界の女と結婚して、王国を見捨てたと噂された」
「ふん、神族ってのは心が狭いんだね。偏見で真実が見えてない」

 チーネが鼻を鳴らして批判したので、トーマも頷いて手を上げる。

「そうすっよね。俺もドワーフの血が流れってからよく分かる」
「そうなんだ」
「プライドが高いのさ。妖精族は昔から人間界と交流があるが、神族は人間は信じられないと毛嫌いした」

 ジェンダ王子が小声で解説し、元老院(げんろういん)の議長が席を睨んで木槌を叩き、「静粛に」と注意してからソングに質問した。

「それでソングとやら、人間界から精霊の地へ来て何年が経つ?」
「よく覚えてねーし、そこの爺さんの方が詳しいと思うぜ。異世界には恋人募集中の可愛い子が、山ほどいると誘われたからな」

 元老院(げんろういん)の四人が一番端に座っているアルダリを睨み、その隣の王女エッダが頭を抱え、アリダリは苦笑いして「ふむ、少年には夢が必要じゃ」と呟く。

 傍聴席ではチーネが花冠の耳を真っ赤にして顔を両手で隠し、ジェンダ王子とエリアンがそれを横目で見たが、トーマは妖精族の内情を知らずに素直に憧れた。

「恋人募集中、なのか?」
「ち、違う。んなわけねーだろ」

 チーネが否定するのも気にせず、ソングは堂々と自分の力をアピールして、母の名誉の為にも面接試験を突破したかった。

「そんな事より、俺が強いか知りたいんだろ?母が人間だからって、馬鹿にされたくはないんでね」

 ソングは首のペンダントを手で握りしめ、母の思いを感じ取る。父の写真が入った母の形見はいつもソングを勇気付けた。

「俺は誰よりも強い」

 クリスティアーノ・ロナウドがサッカーの両手を広げて仁王立ちするゴールパフォーマンスをアレンジし、両手の親指で股間を指し示して背筋を伸ばす。

「ドラゴンのパワーを感じろ」
「な、なんじゃ」

 アルダリがすぐに反応して身を乗り出し、ソングの股間がキルトの生地を押し上げ、膨れ上がっているのに気付いて唖然とした。