正式な名簿用紙が元老院(げんろういん)と王女エッダに提出され、アルダリも会議室に呼ばれて戦士チームの適正審議が行われ、ソングの選出だけが四名の議員から反対された。

「人間の子供が魔術師と戦えるものか?」
「ふむ、他のメンバーに異論はないが、この少年は問題があるな」
「それにゼツリはこの国を捨て、ミズガルズに住みおった」
「叛逆の疑いさえあるではないか?」
「それは誤解じゃ。勇者ゼツリは最期まで我らの為に戦い、正義を死守しようとした」

 アルダリは憤慨して反論したが、元老院は空論だと聞き入れず、王女エッダの提案でソングは面接試験をして決定する事になった。

「では、他のメンバーは招集して構いませんね?」
「ふむ、問題ない」
「それでは即刻、通達を出しましょう」

 アルダリが議員を睨んで退席すると、王女エッダは元老院の機嫌をとって雑談し、戦士選手の通達が発信された事を確信すると、地味な外出着に着替えて石畳の回廊を早足で歩き、一人で城の周辺にある酒蔵へ向かった。

 長いスカートの裾を上げて王女エッダが酒蔵入り口の階段を上がり、樽から葡萄酒を瓶詰めしている店主にジェンダ王子の居場所を聞く。

「王子を見てないか?」
「王女様。ジェンダ王子ならあそこにお泊りです」

 店主は王女を見て驚き、口止めされていたが宿舎の二階を指差し、王女が顔を顰めて階段へ向かう。

「思った通りだわ」

 ジェンダ王子は戦士チームに選ばれた自覚もなく、若い男の子と一緒に酒蔵の二階の部屋で遊んでいた。王女は王子が戦士として戦えるか不安で、居ても立っても居られずに駆け付けたのである。

『王が愛人に産ませた一人息子で、ブロンド長髪のイケメンであるが、性自認が男性にも女性にもあてはまらず、天使のように愛を振り撒いて遊んでいる』

「やべえ、母上だ。じゃー、当分会えないと思うけど、元気でな」

 ジェンダ王子が全裸でベッドから起き出して、まだ寝ている男の頬にキスをして別れを告げ、慌てて服を着てキューピッドの弓と剣を持って部屋の出口へ向かう。

「父上が腐って死んだというのに、まだ遊んでいるのですか?」

 ドアを開けると、前に立つ王女と出くわして詰め寄られ、ジェンダ王子はブロンドの髪を掻き上げながら後退した。

「いや、寸止めすれば安全なのです。それに僕は性欲より、美しい愛に憧れている」
「兎に角、もっと男子らしくしなさい。先々、貴方は王にならなければなりません」
「はい。戦士チームの件なら喜んで戦いますから、ご安心ください」

 ジェンダ王子は戦士チームの名簿用紙を見せ付ける王女に背を向け、窓へ走り出してジャンプした。

「こら、待ちなさい」

 王女が窓に駆け寄って叫び、華麗に着地したジェンダ王子は手を振って逃げて行く。

「まったく」と、ため息混じりに王女が呟き、ベッドに寝ている若い男の子をチラッと見て注意する。

「SEXすると、精液でアソコから腐るのよ。暫くは禁欲しなさい」
「わかりました。でも王女さまとなら、死んでも構いませんよ」

 王女は微笑む若者を無視して部屋を出たが、股間に見えたモノを想像してつい顔が綻び、王と愛人の哀れな死に様を思い返して気を引き締めた。