真夜中の出来事である。黒いビロードのように揺れる湖面をアヒルの被り物をしたトーマが群れに紛れて泳ぎ、城壁はトカゲの被り物に取り替えてペタペタと登って行く。
(魔変の被り物により、足の指が変形して足ヒレになり、粘着力のある爬虫類の指にもなる。)
狭間窓から忍び込んだトーマは見張りを避けてパラス(居館)へ入り、寝静まった城内の通路を忍び足で歩いて行く。
黒服にショルダーバックとゴーグルをしたトーマは小柄で臆病な男であるが、盗みに関しては天才的で開けられない金庫は無いと自負している。
お目当ての豪華な王室へ入ると、奥の壁に巨大な金庫を見つけて、首に掛けていたヘッドホンを装着して聴診器を扉に当てる。
『頼むぜ……』
胸の十字架のペンダントを鍵穴に差し込むと、イモムシのように鍵穴に合わせて変形し、トーマは微かな音を聴き分けて、三個のダイヤルを回して数字を合わせ、ロックが開錠する音を聴いて微笑む。
『よっしゃ〜』とサイレントで呟き、扉を開けて中を調べたが、金貨数枚と黒いケースしかなくがっかりする。
『まったく、王のくせにしけてやがる』
金貨を布袋に入れて、黒いケースを手に取って開けると、褐色の男性器の玩具が横向きに仕舞われてあり、皮膚感も生々しく、イボイボもあるのを見て『本物みてえだ』呆気に取られ、短剣を持って背後から近寄る者に気付かなかった。
「すぐにケースに戻しなさい」
「わ、わかりました」
トーマは短剣を首に当てられ、上品なケースの蓋を閉めて金庫の中へ戻し、扉をきっちりと閉ざしてから、両手を上げてゆっくりと振り向き、透け透けの寝巻き姿で短剣を構えてて睨む王女エッダに謝罪した。
「王女さま……口が裂けても、欲求不満だなんて言いません。絶対に秘密にすっから、お許しください」
王女エッダは許しを乞うトーマを見下ろし、怒りで短剣を持つ手を震わせながらも、恥ずかしさで顔を赤らめていた。
数時間前、ヤズベルから購入した自慰道具を早速試し、あまりの生々しい使い心地に怖くなり、王女の威厳を守るべく金庫に隠したのである。
アリダリとケインが王室の居間に駆け付け時には、王女エッダとトーマは密約を結び、トーマは命と引き換えに秘密を封印し、戦士チームに入隊して能力を生かすと誓った。
「王室の金庫を開けたのか?」
「ええ、まー、軽いもんです」
トーマは侍女四名に押さえ付けられて剣を向けられていたが、悪びれた様子もなく鍵師の能力を自慢している。
「コイツ、魔変の道具を持ってますよ」
ケインがショルダーバックを開けて、アヒルとトカゲの被り物を取り出してアルダリに見せ、「これを被って城に侵入したか?」と問い詰め、トーマは「フン」と鼻で笑った。
「イモムシの十字架といい、ドワーフの血を引いておるな?」
ドワーフは高度な製造技術を持ち、鍛治の炎で道具に命を吹き込むと云われている。孤児として育ったトーマは苦笑いして答えなかったが、王女エッダがアルダリに冷徹な表情で指示した。
「アリダリ。このトーマという鍵師を戦士チームに加えなさい。役立たずであれば、殺しても構いません」
「なるほど、面白い。この男をチームに加えるとしましょうぞ」
アルダリがイモムシの十字架をトーマの首に戻してやり、侍女からも解放されたトーマは立ち上がって黒服の埃を払い、ショルダーバックを開けてケインに被り物を戻させる。
「んじゃー、飯でも食わしてくれっか?腹減って死にそうだぜ」
(魔変の被り物により、足の指が変形して足ヒレになり、粘着力のある爬虫類の指にもなる。)
狭間窓から忍び込んだトーマは見張りを避けてパラス(居館)へ入り、寝静まった城内の通路を忍び足で歩いて行く。
黒服にショルダーバックとゴーグルをしたトーマは小柄で臆病な男であるが、盗みに関しては天才的で開けられない金庫は無いと自負している。
お目当ての豪華な王室へ入ると、奥の壁に巨大な金庫を見つけて、首に掛けていたヘッドホンを装着して聴診器を扉に当てる。
『頼むぜ……』
胸の十字架のペンダントを鍵穴に差し込むと、イモムシのように鍵穴に合わせて変形し、トーマは微かな音を聴き分けて、三個のダイヤルを回して数字を合わせ、ロックが開錠する音を聴いて微笑む。
『よっしゃ〜』とサイレントで呟き、扉を開けて中を調べたが、金貨数枚と黒いケースしかなくがっかりする。
『まったく、王のくせにしけてやがる』
金貨を布袋に入れて、黒いケースを手に取って開けると、褐色の男性器の玩具が横向きに仕舞われてあり、皮膚感も生々しく、イボイボもあるのを見て『本物みてえだ』呆気に取られ、短剣を持って背後から近寄る者に気付かなかった。
「すぐにケースに戻しなさい」
「わ、わかりました」
トーマは短剣を首に当てられ、上品なケースの蓋を閉めて金庫の中へ戻し、扉をきっちりと閉ざしてから、両手を上げてゆっくりと振り向き、透け透けの寝巻き姿で短剣を構えてて睨む王女エッダに謝罪した。
「王女さま……口が裂けても、欲求不満だなんて言いません。絶対に秘密にすっから、お許しください」
王女エッダは許しを乞うトーマを見下ろし、怒りで短剣を持つ手を震わせながらも、恥ずかしさで顔を赤らめていた。
数時間前、ヤズベルから購入した自慰道具を早速試し、あまりの生々しい使い心地に怖くなり、王女の威厳を守るべく金庫に隠したのである。
アリダリとケインが王室の居間に駆け付け時には、王女エッダとトーマは密約を結び、トーマは命と引き換えに秘密を封印し、戦士チームに入隊して能力を生かすと誓った。
「王室の金庫を開けたのか?」
「ええ、まー、軽いもんです」
トーマは侍女四名に押さえ付けられて剣を向けられていたが、悪びれた様子もなく鍵師の能力を自慢している。
「コイツ、魔変の道具を持ってますよ」
ケインがショルダーバックを開けて、アヒルとトカゲの被り物を取り出してアルダリに見せ、「これを被って城に侵入したか?」と問い詰め、トーマは「フン」と鼻で笑った。
「イモムシの十字架といい、ドワーフの血を引いておるな?」
ドワーフは高度な製造技術を持ち、鍛治の炎で道具に命を吹き込むと云われている。孤児として育ったトーマは苦笑いして答えなかったが、王女エッダがアルダリに冷徹な表情で指示した。
「アリダリ。このトーマという鍵師を戦士チームに加えなさい。役立たずであれば、殺しても構いません」
「なるほど、面白い。この男をチームに加えるとしましょうぞ」
アルダリがイモムシの十字架をトーマの首に戻してやり、侍女からも解放されたトーマは立ち上がって黒服の埃を払い、ショルダーバックを開けてケインに被り物を戻させる。
「んじゃー、飯でも食わしてくれっか?腹減って死にそうだぜ」