数十分前、夕空から舞い降りたに白い伝書鴉が窓枠にとまり、妖精の族長チャチルはアルダリから書簡が届いたかと近寄ったが、エロガラスはチャチルのフェロモンに興味を示さず、翼を広げて室内を逃げ回る。

「これ、妖精の熟女だぞ。胸も立派なもんだ」

 チャチルは両手を広げてエロガラスを捕まえると、首を締め上げて無理やり胸の谷間を見せつけ、ブェッと書簡を吐き出させた。

[王の死は精液から発生する腐食の呪い。妖精族に不安はなかろうが注意せよ。そしてその呪いと戦う勇者の選出を妖精族からもお願いしたい。]

 唾液で粘って丸まった紙片を指で広げて読み、「エロババア」と悪態をついて暴れるエロガラスを籠に入れ、窓から山間に沈む夕日を眺めて嘆く。

「王が亡くなったと王女から聞いたが、精液で腐って死んだとはのう……」

 その時、集落の外れの方から騒がしい声がして、籠の中でエロガラスが「ハメたら死ぬぞー」と喋った。

 チャチルは嫌な予感がして書簡を投げ捨て、剣と弓を手にして部屋を出ると、早足で住まいの繋がる木製の長い通路を歩く。

 ポンヌがその慌ただしい姿を見て引き止める。妖精の族長チャチルは緑色のドレッドヘアーをした老婆であるが、剣と弓の腕は衰えず、このままではソングとチーネの仲が引き裂かれると心配した。

「チャチル様。落ち着いてください」
「しかし、怪しげな声が聴こえたぞ」
「たぶん、チーネとソングが遊んでいるだけです。お互い好きらしくて」
「まさか、ソングとチーネがエッチしとるのか?」

 ポンヌは問い詰められてチーネとソングがSEXをしている事を白状し、チーネの祖母チャチルが寝取られて怒っていると思ったが、実際は心配で駆け付けたのである。

「やめろ!魔の呪いで腐るぞ」

 ドアを蹴破ってソングの部屋に登場したチャチルは弓を構えて叫び、ポンヌはその背後で剣を持ち、魔の獣が現れたら斬り殺せと言われた。

「えっ?」と、パンツを穿いていたソングが振り向き、ハンケツで両手を上げて唖然としている。

「えっ?なに?ごめん、チャチル。マジで怒ってんのか?ポンヌまで、どうした?」
「ヤッタな?」
「いや、まー。でも、そんな怒ることか?それに呪いって?」
「チンコを見せろ」

 チャチルは弓の矢をソングの股に向け、魔の呪いの気配を探っている。長年の経験から、邪悪な匂いを嗅ぎ取り、精霊の宿る目で黒い獣を映し出す事ができる。

「なんでだよ?」
「ポンヌ」
「は、はい」

 チャチルに指示されたポンヌが剣先を向けてソングに近寄り、パンツを引き下げようとするが、ソングは文句を言って抵抗した。

「妖精は純粋な愛を受け入れるんだろ?俺はマジでチーネを好きなんだぜ」
「いいから、パンツ下げなさい」
「チーネ。チーネは何処におる。姿を見せろ」

 部屋の隅の天井付近に飛んでいたチーネが一瞬にして蝶から元の姿に戻り、恥ずかしそうにチャチルの前に全裸で現れた。

「そんな騒いだら照れるだろ?呪いなら、ソングの体の中に潜むドラゴンが防いだ。完全には焼き払えなかったけどね」

「もしかして、コレのこと?」

 ソングがパンツを膝までずり下ろし、炭黒く腐食して第二関節から崩れ落ちてしまった小指を立てて苦笑し、チャチルもポンヌもソングのチンコから視線を小指に移し、弓と剣を下ろしてケラケラ笑った。