今の俺の正体、復讐、目の前にいる人型モンストール(?)等々…気になることはいくつかあるが、今は後に回そう。さっきから俺に殺気を向けてくる気配がいくつもある。
さっき蹴り飛ばしたTレックスモンストールが戻ってきて、俺に爪と牙を見せつける。そして背後からも複数のモンストールの気配が。
どれもTレックスと同じサイズのモンストールで、強さも同じくらいだ。
特撮でよく見る怪獣型、翼竜型、初クエストで討伐したエーレよりも一回りデカいサイズのペガサス型、ゴリラと鬼を割って足したような奴などなど。
俺が死んだ瘴気まみれの地底で遭遇したモンストールどもよりも更にデカいサイズとステータスレベルだ。こいつらが一斉に暴れると、国一つなど簡単に滅ぼせるだろう。
そんな奴らが一斉に俺に殺意を向けている。明らかに俺だけを狙っている形だ。
「随分な戦力だな?まさか俺一人を相手に、そこまでするとはな。少し過剰じゃないのか?」
「俺の肉を喰ったんだ。あの時点で既にこいつらと同じレベルの強さを得ていたはずだ。あれからひと月程経った今、こいつら数体投入しても過剰ではあるまい?今のお前がどれくらい強くなったか興味もあるしな」
あいつの肉の一部を喰っただけでそこまでの影響があると自負していやがる。戦力によほど自信があるようだな。俺の成長具合に興味を持つなど、余裕さえ見えるくらいには、な。
そして、Tレックスが先陣を切って、俺に襲い掛かってきた。俺とSランクモンストールどもとの戦いが始まった。
Tレックスは、その見た目からは予測できないくらいのスピードで向かってくる。死んだ元クラスメイトどもの「加速」を軽く上回るくらいに速い。
それでも俺には止まって見える。「複眼」で全てを見切る。
Tレックスが繰り出した右腕のクローをひらりと躱し、がら空きの横腹に「硬化」を纏った左ボディブローを叩き込む。
リミッター200%解除して、腸を飛び散らせるつもりで殴ったのだが、さっきと同じ、数メートルくらいの吹っ飛ばしで終わり、Tレックスの身体を破壊することはできなかった。
「Sランクまでくると、流石に簡単には殺せないか。久々に力をより解放できそうだ!」
これまでGランクモンストールですらもワンパン・ツーパンで殺せていたけど、今回はそうはいかなかった。数発殴っても中々殺せない。
そのことに対し俺は、歯応えのある敵と遭遇したと、嬉しく思った。
もっと力を解放しても、相手は倒れない。本気でぶっ飛ばしにいける。
「無限に強くなれる俺にどこまでついて行けるか試させてくれよ!
脳のリミッター500%解除」
今の俺の身体が耐えられるリミッター解除は、1000%くらいまでだ。それを超えると、身体がはじけ飛んで自滅、復活に時間がかかる。身体が完全に壊れないギリギリのところを見極めねばならない。
今度は俺がTレックスに向かって駆ける。500%の「瞬足」の速度は音に並ぶ。Tレックスに俺の動きは捉えられない。隙だらけの足元目がけてローキックを放つ。
不意打ち同然の蹴りをくらったTレックスはその場でバランスを崩して前のめりに倒れる。
その頭上から雷電属性の魔力光線を撃ち落とす。超高圧電流を纏った極太の黄色い光線がTレックスを貫く。雷鳴が鳴り響く中、Tレックスの断末魔の叫びが聞こえた。
光線が収束する。その場にいるのは胴体に大穴が空いて感電状態で死にかけているTレックスだった。まだ息絶えてはいないが、あと数秒の命。次の標的は誰にするかと目を離した、その隙をTレックスは見逃さなかった。
最期の力を振り絞って、「縮地」で俺に急接近して、Tレックスの最大の武器である巨大で強力な顎で俺を嚙み砕きにきた。
不意を突かれて、俺はTレックスの牙にぶっ刺されたままその口に拘束された。ただの噛みつきではない。その牙には炎が纏っていて、噛みつかれたまま焼かれるという状況に陥った。
ゾンビなので灼熱の炎に怯むことはないが、強力な咬合力による拘束は容易には解けなかった。
さらにリミッターを50%解除して、強引にTレックスの口から脱出する。Tレックスは絶命していた。俺は体勢を立て直そうとしたが、次の相手たちはそれを待ってくれはくれなかった。
Tレックスによる拘束の隙に、残りのモンストール全員が俺を囲み攻撃態勢に入っていた。人型の指示か、あいつらに備わってた知恵によるものか。Sランク以上になると、互いに連携がとれるくらいには賢くなっているみたいだ。
怪獣型が炎熱属性の魔力光線を放ち、上空から翼竜型が嵐魔法による鋭利な刃をとばし、ペガサス型がその特徴である角にありったけの魔力を纏って突進してきて、ゴリラ鬼がゲームに出てくるゴーレムみたいに、岩石を張り付けた巨大な剛腕を俺目がけて振り下ろす。完全に袋叩きに遭う構図になり、このままくらえば、流石に身体がバラバラになってしまう。
四方向からの攻撃に対し、俺は咄嗟に《《自身の身体に魔力障壁を纏わせた》》。
周囲を囲う障壁を出す場合、その範囲が狭いほど防御力が増す。俺は自身そのものに障壁を張る形にした。その防御力の数値は一時的に桁が1つ増えただろう。
魔力障壁を張った直後、俺の体はもの凄い衝撃と斬撃と打撃にもみくちゃにされる。
が、俺の体がバラバラになることはなく、どうにか攻撃を防いでいる。
四方向からの攻撃で体があちこち弾かれたり叩きつけられたりしているが、何とか魔法攻撃を放つことに成功する。
重力魔法“拒絶”
重力を操ることで、俺に襲いかかる攻撃を全て弾いて拒絶する為の強力な斥力を発生させ、俺を襲っているモンストールの攻撃を全て弾いた。
炎熱光線が上空に飛ばされ、その先に滞空していた翼竜に直撃してしまい、翼竜は墜落。ペガサスはその巨体丸ごと高く吹き飛んだ。ゴリラ鬼の殴りつけた方の片腕が大きく弾かれ、その拍子に腕がもげた。
どうにか、全員の攻撃を凌いだ。流石はSランク。気を抜いたら戦闘不能にさせられていた。少し舐めていたというか、遊び気分だったみたいだ。
「危なかったー。Sランク5体にお遊びで相手するのはダメだな。もう様子見は終わりにして、一気に片づけてやる…!」
脳のリミッター700%解除。全身「硬化」 さあ、蹂躙するとしよう。