大西に復讐を果たしたことの余韻に浸った後も、俺はしばらくこの歓楽街(半壊状態)に居座っていた。
 ついさっき5人が釣れたが、これだけ騒ぎを起こせば、他の餌(もとクラスメイト)が釣れるのでは、と思ったからだ。

 まだ少し残っていた5つの死骸を蹴飛ばしたり小便をかけたりして、弄びながら待機していると、予想通り、ここに何人か駆けつけて来る気配がした。
 残念ながら、ドラグニア王国の兵士どもだった。まぁ、こいつらを殺し続けていれば、いつか本命が出てくるだろう。
 俺は適当に駆けつけた兵士たちを殺して回った。

待つこと30~40分程。今度は、50人規模の兵団が現れた。ここにいる敵がただ者ではないと思っての、この人数か。
 今の俺を押さえるには、あと1000倍以上の人数を仕入れないとな!

 「んー。まだあのゴミどもは釣れないかー。次も来なかったら、近くの村とかにも行ってみるかー」

 独り言を呟く俺を見て、何人かの兵士が驚愕の表情を浮かべている。その様子を不審に思って見返してやると、一人の兵士があっと声を上げた。

 「間違いない!この男、一月程前の実戦訓練で消えた異世界の人族だ!たしか、カイダコウガといっていたような...!」

 あ、身バレしちゃった。まぁ、これだけいたら、一人くらい知ってる奴はいるか。

 「あの廃墟から消えた異世界人か!?死亡したと聞いたぞ!?間違いじゃないのか!?」
 「俺はあいつの顔を覚えているぞ!あの実戦訓練でいちばんモンストールを狩っていたからな」
 「おい、お前!本当にあの消えた異世界人なのか!?ここで何が起こっている!?」

 口々に俺のことについて言い合い、ついには俺に話を振ってきた。正直、何も答える気はない。
 そして何よりも、俺はこいつらに慈悲の一切もかけるつもりはない。あの国の兵士どももなるべく殺そうと考えている。
 あいつらの魔法で、俺は地下深くに落とされたからな。その借りは、皆殺しにして返そうとずっと思ってきた。
 
 だから俺は、何の前ぶれもなく、一気に数人の首を刎ねた。
 いくつかの首が宙を舞っている間、周りの兵士も、刎ねられた首だけの兵士すらも、何が起きたのか分からない様子で呆然としていた。
 
 間髪入れずに、俺はその場で手をついて、大地魔法を放った。
 「“錬成”、剣群」

 大地魔法を極めると、錬成ができるようになり、土を鉄・鋼・金へと昇華が可能になる。そう唱えた直後、兵士どもの足元から、土でできた無数の鋭利な剣が大地を突き破るように飛び出す。無数の剣は、無慈悲に兵士どもを刺し貫いた。

 「「「「「ぎゃあああああああああああああああああ!!!」」」」」

 あちこちで奴らの断末魔が響く。僅か数秒で、この世に地獄ができた。
 一瞬で兵団が全滅した...ただ一人を除いて。
 あえて残したその一人は、さっき俺の名前と、あの実戦訓練の詳しい状況を知っていたような言動をとった男だ。俺より少し年上か。
 その男は、顔面蒼白で歯をガチガチならしてこちらを見ている。腰を抜かして座り込んでいる男に俺は尋ねる。

 「お前、あの時俺に魔法放った兵士どものうち一人か?」

 冷たい声音で淡々と尋ねる俺に完全に恐怖してまともに答えようとしない。
 ウザいので軽くどついた。歯が数本吹っ飛んでようやくまともに答えた。

 「あ、ああ。確かに俺はあの時、王子の命令で仲間と一緒にお前ごと廃墟を崩壊させた。仕方なかったんだ!災害モンストールが接近してたし、王子の命令だったし、そうだ!命令だったんだよ!俺は悪くないんだよぉ!」

 パニック気味に全て白状した。真偽を判定する“真実の口”が無反応だったから、本当のようだ。

 「頼む...許してくれぇ!お前を殺すつもりはなかったんだよぉ...悪いのはそうさせた王子なんだよぉ...!」

 なおも命乞いをする。が、俺に慈悲は無い。

 「確かに、あのクソゴミ王子は悪い。あいつもすぐに殺しにいくさ...。
 けど、やっぱりテメーら兵士どもも同罪だ。訓練の時もテメーらのほとんどが俺を見下していた...。忘れてねーぜ?どいつもこいつも、恵まれないステータスの俺の訓練に全く付き合ってくれず他の奴らに付きっきりでいたこと、その際俺を嘲笑っていたこと。俺にとってテメーらは有罪。
 だから、皆殺しだ!」

 最後に歪んだ笑みを見せて最後の兵士の胸を貫く。
 恐怖で張り付いた顔のまま、そいつは絶命した。

 兵団は全滅。これで事態が深刻なものだと悟り、戦力をここに投入するか、王国に固めるかのどちらかだな。

 兵士の死骸を燃やしていると、近くで声がした。

 「うわ!?んだこれ...地獄絵図だな。誰の仕業なんだよぉ...」

 震えた声、だがその声には覚えがある。嫌悪しているからこそ、覚えてしまっている。
 釣れたか。ついに。また当たりだ。絶対に殺したい奴がまたも現れてくれた。

 「てめぇ、まさか、甲斐田か...!?」

 須藤賢也(すどうけんや)。俺の目の前にのこのこ来てくれた。
 次の復讐回の幕開けだ...!