「ピンク色の長い髪の子がセン。私のお姉ちゃんのような存在。
黒髪でいちばん背が高い男の子がロン。里では足が速いことで有名だった。
銀髪の男の子がギルス。いちばん年下。
センと同じピンク髪でその長さはちょっと短めの女の子がガーデル。センの妹。
黒髪の娘がルマンド。魔力が凄く高くて魔法の扱いも鬼族の中ではトップクラス」
感動の再会を果たしてからしばらく経ち、落ち着きを取り戻したアレンは俺とクィンに五人の鬼族たちの紹介をしてくれた。彼らは全員アレンと同じ年齢層のようで、15~18才という俺とほぼ同年代だ。
その間、五人とも俺のことを見つめたり臭いを嗅いでみたりとやたら興味を示してくる。洞窟で出会った時のアレンと同じ反応だ。
「君……生きているの?死んでるの?こんな生物、初めて見るなぁ……え、人族?人族ってこんな変な色してるんだー」
ガーデルと呼ばれている鬼娘が俺を見てそう言った。やっぱり鬼にはかすかな死臭を嗅ぎ分けられるみたいだ。
「こらガーデル、失礼でしょ。ごめんなさい。君は、アレンをここまで連れてくれて、それ以前に、ここまで守ってくれた人なのよね。
ありがとう。アレンとこうしてまた会えるのも、君の存在があってのことだわ」
センと呼ばれた鬼娘がガーデルを窘めて、俺にアレンのことで礼を言う。残りの鬼も次々に礼を言った。
「どういたしまして。いちおうお前らの疑問に答えようか。俺は死んで、ゾンビとして再び人間と同じ生活が出来るようになった、いわゆる歩く死体ってわけだ。身体は清潔にしてるつもりだから、そんなに臭わないとは思うのだが…。臭ってたらまぁ、すまん」
ちらとアレンを見る。意図を察してくれたのか、首を横に振る。悪臭はしないようだ。
五人とも、へーってな感じで納得した。
「さて、よければ彼らがどういった経緯でここに来たのかを話す機会でももうけようか?」
一区切りついたところで、エルザレスがそう切り出した。アレンはお願いと返事した。そしてセンが代表して、鬼族が襲われて散り散りになったあの日のことを話す。
鬼族の里が滅んだのは、今から約2年前のこと。里に突然モンストールどもが侵略しにきて、そいつらに全て奪われ滅ぼされた...。その中に、異質で次元が違う化け物のモンストールがいて、主にそいつにたくさん仲間が殺されたそうだ。おそらく災害レベルの中でかなり強い個体の奴だったのだろう。
大人が半分以上殺されるという凄惨な出来事だったそうだ。彼らの中には今の生き残りの鬼たちの親もいたそうだ。
里が滅び、鬼たちは散り散りになってそこから逃げた。アレンとセンたちは一緒に行動していたが、途中モンストールや魔物の襲撃で、アレン一人とセンたちとではぐれてしまった。そこからは、アレンも知らない話になる。
彼らもモンストール、魔物、さらには他の魔族に攻撃された。その魔族とは、族長がさっき言っていた魔族……獣人族だったそうだ。そいつらによってさらに仲間が犠牲になったそうだ。
彼らは敵からの攻撃から逃れるため、海に出た。ルマンドの魔法で海を渡る乗り物をつくりあげ、それで逃れたようだ。
因みに、アレンは逆の方向、サント王国方面へ逃げてきたようだ。
命懸けの航海を経て、アルマー大陸に上陸。行く当てもなくさまよって、気付くと、ここサラマンドラに着いた。彼らを発見した族長の家族がここまで運び、そのまま保護することになり、今に至る。
「センたちを今まで保護してくれて、ありがとう」
センが語り終わった後、アレンが族長に感謝の礼を述べる。
「鬼族とは敵対していたが、良いライバルでもあった。そんなお前らが滅んでしまっては、モンストールを殲滅した後、寂しくなるからな。まぁ、奇縁というやつだ。とにかく、獣人族中心の魔族や魔物、そしてモンストールからは守っててやるよ」
エルザレスはサバサバとそう答える。因みにこのオッサン、アレンたちの再会シーンを見てちょっと涙ぐんでいた。人情深い竜人だ。
「私は、いつか世界のどこかにいる生き残りの仲間たちと再会して、みんなと協力して鬼族を復興させる。それまではみんなのこと、お願いする」
アレンは前から言っていたことを族長に強く宣言した。
「アレン...。あなたそんな立派なことを考えて...」
センが感激していた。残りもアレンの言葉に賛同した。
「一族を復興する、かぁ。金角鬼のお前ならできるやもしれんな。その時を楽しみにしているぞ」
族長がニヤリと牙をのぞかせて好戦的に笑う。
「お母さんとお父さんが言ってた。あなたたちは本当に強かったって。私にも分かる。戦闘態勢に入ってもないのに覇気が凄い。戦気も強く感じる」
アレンはエルザレスを見上げて敬意を感じさせながら彼を評価する。
「お前を見てるとかつて何度も戦ったあの女……お前の母を思い出す。
どうだ?少し力試しでもしてみるか?」
ギラリと歯をのぞかせてエルザレスは挑発的に笑う。彼のオーラにあてられたのか、アレンはやや気圧されてしまう。センたちも同様の反応を見せる。
「…なんてな。せっかく仲間たちと再会したんだ、今日はそいつらとゆっくり過ごすといい」
そう言って、エルザレスは穏やかに笑うのだった。
ひとまず、アレンの件はこれで解決したな。
そろそろ、俺の本題に移らせてもらおう。