「はっ! はっ! 早く、早く戻らねば」
隊長は指笛で呼んだ馬に乗り、駐屯地に向かって走らせていた。

「司令、あれを使いましょう!!」
「そうです! あれを使えば奴らなんて敵ではありません!」
「ダメだ。あれを使えば少なからず、わしらにも損害が及ぶ」
「しかし!」
「司令、失礼致します」
「おぉっ、隊長殿生きておったか。して、他のみなは?」
「前線部隊は、うぐっ……私以外……壊滅、うぐっ……しました……」
「……そうか、分かった。明日に備えて、今日はゆっくり休め」
「司令、ま゛だ゛……話゛が……残゛っ゛て゛……お゛り゛ま゛す゛」
隊長は、涙を手で拭い自分にあった出来事について話し始めた。

「つまり、死神の鎌を持った少女に助けられなければお主は死んでいたと……」
「はいっ、その少女は《《アイフォーン》》を私の目の前で一掃して去って行きました。奴らを斬る姿はまるで、バターをナイフでスライスしたかのように美しく、とても綺麗でした」

「はぁっ、はぁっ、今日も美味しそうな、はぁっ、魂が、はぁっ、捕れた♡」
レンガの屋根上に座りながら雨に打たれ、
右手を頬に当て恋する乙女のような顔で捕れたばかりの魂を左手で見つめていた。
「おい、少し狩りすぎだ!」
「あっ、ごっめーん。アイフォーン見ると、つい……ね」
少女は鎌を持った少年に対して、両手で軽いノリで謝った。
「何が『つい……ね』っだよ。まったく」
すると少女は、ゆっくりと立ち上がり被っていたフードを取りながら、雨が降る月明かりがない空を見つめた。その姿は短髪のピンク色の獣耳で、明るく鮮やかな水色の目をしていた。
「お前って奴は……まあいい。早くゲートで戻るぞ」
「……分かってるよ」