数日、過ごした。
朝目覚め、シャーロッテの手料理を食べ、シャーロッテは猫々亭へ出勤し、お師匠様は部屋に引きこもって執筆活動に入り、僕とノティアは街を散歩――もとい巡回する。
そこら中で忙しくしている商人ギルドの人からの依頼があれば、道を敷いたり河川の枝を引いたり、区画整理をしたり。
昼は猫々亭で食べ、夕食前にはお屋敷に帰ってお師匠様とノティアと3人で『魔力養殖』。
胃の中がからっからになったら再び猫々亭で夕食、その後は入浴し、なんやかんやしているうちに就寝となる。
何度かノティアが夜這いしてきたけど、撃退した。
僕としては、幼いころにシャーロッテと交わした結婚の約束は、未だ有効だと思うんだよね……うう、言いつつ自信なくなってきた。
■ ◆ ■ ◆
そして、また朝。
自室を出ると、
「あ、おはようございます、ご主人様!!」
メイド服姿の女の子――先日雇ったエメちゃん13歳が元気に挨拶してくる。
こんな時間からもう、お掃除を始めているらしい。
「おはよう。あのー、『ご主人様』はやめてよ……」
「えへへ、でもご主人様はご主人様じゃないですか!」
「昔みたく『クリスにぃ』でいいよ」
「ん~、考えときます」
「朝も、こんなに早くから働かなくてもいいんだよ?」
「でも、ご飯は食べ放題、お風呂は入り放題、個室までもらえて日給10ルキももらえるなんて! しっかり働かないと申し訳なくって!」
「あ、あははは……」
快活に笑うエメちゃんを残し、食堂へ。
■ ◆ ■ ◆
西の森の隣。
何もなかった、小屋の1軒も建っていなかったこの土地に、『街』ができた。
僕が最初に敷いた、東西を貫く幅10メートルの街道が中央通りとなり、それを南北にまたぐようにして何本もの表通りが形成されつつある。
表通りができれば、自然、裏通りもできる。
僕とノティアが見回りをしていると――
「いやぁッ! 離してッ!!」
裏通りの方から女性の悲鳴が聞こえてきた!
「ノティア、行くよ!」
「分かりましたわ!」
僕は裏通りへと入り、声のした方――路地裏へと飛び込む。
男3、女1。
女性は組み敷かれ、衣服が乱れている。
「お前たち、そこまでだ!」
僕は震えそうになる声を必死に抑えながら男たちに告げる。
いかにもゴロツキ然とした男たちが僕の方を見て、やがてニヤニヤと笑いだす。
「ぎゃははっ、てめぇみたいなひょろっちい野郎に何ができるって?」
男のひとりが僕の胸倉をつかもうとして、僕はその手を払いのける。
僕だって、伊達にお師匠様に連れられて魔物退治に勤しんでいるわけじゃあない。
「ちっ――…うぜぇ」
男が腰から短剣を抜いた。
「【収納空間】!」
僕はその短剣を【収納】する。
「なっ!?」
「おい、何をもたついてやがる――」
もうひとりの男が、これも短剣を抜きながらこっちに向かってくる。
僕は丹田を意識して、ぐっと魔力を引き絞る。
「【無制限収納空間】ッ!!」
男たちの装備という装備、衣類という衣類がすべて消え失せた。
「「「え…………?」」」
全裸になった3人の男たちは束の間呆然として、それから、
「「「ひ、ひえぇ~~~~ッ!?」」」
裏路地の、もう一方の方へ逃げていき、そして、
「ぎゃっ」「ぐえっ」「ごはっ」
回り込んでいたノティアの、威力を絞った魔法でのされた。
「あのっ、大丈夫ですか!? 【収納空間】!」
毛布を取り出して女性に差し出す。
「あ、あ、あ、……ありがとうございます」
女性は震えていたけれど、やがて毛布を肩からかけた。
いやぁ、僕の【無制限収納空間】も随分と様になってきたよ。
お師匠様やノティアの【万物解析】がなくっても、目に見えているものなら取捨選択しながら【収納】できるようになった。
でも、制御を誤ったら相手の手足とか――…それこそ首すら【収納】し、相手を死に至らしめてしまうから、慎重に使わなくちゃならないんだけどね。
■ ◆ ■ ◆
女性はとある行商人さんの奥さんで、商人ギルドへ送り届けた。
そしてゴロツキたちは、縛り上げて城塞都市の衛兵の詰め所へ突き出す。
連れて行くのにはノティアの【瞬間移動】を使う。
本当は僕が【収納】できたらいいんだけど、スキルレベル4の【無制限収納空間】では、生きた物を生きたまま【収納】するのはまだ無理らしい。
いや、一角兎みたいに野生動物に近い魔物とかならいけるんだけど、ゴブリン以上の、ある程度知能と――ステータスの【精神力】を持ったのが相手だと、抵抗されちゃうんだよね。
殺せば【収納】できることは、奥義【首狩り収納空間】で証明済みなんだけれど……ね。
その奥義にしても、風竜のような強敵相手にはまだまだ通用しない。
「またあんたたちか……」
詰め所でゴロツキたちを突き出すと、衛兵さんに嫌な顔をされた。
……そう、ここのところ毎日、強姦やら強盗やら恐喝やらを見つけては、こんなふうにして捕まえているんだよね。
街の広がりとともに、あの場所の治安は急激に悪化した。
本当、誰かが意図的に無法者たちを送り込んでるんじゃないかって邪推したくなるほど、そういう事件が後を絶たないんだよね……。
その所為で、妻子持ちで最初は妻子とともに来ていた行商人さんの中には、妻子を置いてくるようになった人も多いらしく、商人ギルド支部には治安回復の嘆願が相次いでいるのだと、ミッチェンさんが嘆いてた。
■ ◆ ■ ◆
「戻りますの?」
詰め所から出てきて、ノティアが聞いてくる。
「ううん、せっかく城塞都市に来たから、冒険者ギルドに寄ろうと思う」
「冒険者ギルドに?」
「うん。ちょっと、依頼を発行しようと思ってね」
朝目覚め、シャーロッテの手料理を食べ、シャーロッテは猫々亭へ出勤し、お師匠様は部屋に引きこもって執筆活動に入り、僕とノティアは街を散歩――もとい巡回する。
そこら中で忙しくしている商人ギルドの人からの依頼があれば、道を敷いたり河川の枝を引いたり、区画整理をしたり。
昼は猫々亭で食べ、夕食前にはお屋敷に帰ってお師匠様とノティアと3人で『魔力養殖』。
胃の中がからっからになったら再び猫々亭で夕食、その後は入浴し、なんやかんやしているうちに就寝となる。
何度かノティアが夜這いしてきたけど、撃退した。
僕としては、幼いころにシャーロッテと交わした結婚の約束は、未だ有効だと思うんだよね……うう、言いつつ自信なくなってきた。
■ ◆ ■ ◆
そして、また朝。
自室を出ると、
「あ、おはようございます、ご主人様!!」
メイド服姿の女の子――先日雇ったエメちゃん13歳が元気に挨拶してくる。
こんな時間からもう、お掃除を始めているらしい。
「おはよう。あのー、『ご主人様』はやめてよ……」
「えへへ、でもご主人様はご主人様じゃないですか!」
「昔みたく『クリスにぃ』でいいよ」
「ん~、考えときます」
「朝も、こんなに早くから働かなくてもいいんだよ?」
「でも、ご飯は食べ放題、お風呂は入り放題、個室までもらえて日給10ルキももらえるなんて! しっかり働かないと申し訳なくって!」
「あ、あははは……」
快活に笑うエメちゃんを残し、食堂へ。
■ ◆ ■ ◆
西の森の隣。
何もなかった、小屋の1軒も建っていなかったこの土地に、『街』ができた。
僕が最初に敷いた、東西を貫く幅10メートルの街道が中央通りとなり、それを南北にまたぐようにして何本もの表通りが形成されつつある。
表通りができれば、自然、裏通りもできる。
僕とノティアが見回りをしていると――
「いやぁッ! 離してッ!!」
裏通りの方から女性の悲鳴が聞こえてきた!
「ノティア、行くよ!」
「分かりましたわ!」
僕は裏通りへと入り、声のした方――路地裏へと飛び込む。
男3、女1。
女性は組み敷かれ、衣服が乱れている。
「お前たち、そこまでだ!」
僕は震えそうになる声を必死に抑えながら男たちに告げる。
いかにもゴロツキ然とした男たちが僕の方を見て、やがてニヤニヤと笑いだす。
「ぎゃははっ、てめぇみたいなひょろっちい野郎に何ができるって?」
男のひとりが僕の胸倉をつかもうとして、僕はその手を払いのける。
僕だって、伊達にお師匠様に連れられて魔物退治に勤しんでいるわけじゃあない。
「ちっ――…うぜぇ」
男が腰から短剣を抜いた。
「【収納空間】!」
僕はその短剣を【収納】する。
「なっ!?」
「おい、何をもたついてやがる――」
もうひとりの男が、これも短剣を抜きながらこっちに向かってくる。
僕は丹田を意識して、ぐっと魔力を引き絞る。
「【無制限収納空間】ッ!!」
男たちの装備という装備、衣類という衣類がすべて消え失せた。
「「「え…………?」」」
全裸になった3人の男たちは束の間呆然として、それから、
「「「ひ、ひえぇ~~~~ッ!?」」」
裏路地の、もう一方の方へ逃げていき、そして、
「ぎゃっ」「ぐえっ」「ごはっ」
回り込んでいたノティアの、威力を絞った魔法でのされた。
「あのっ、大丈夫ですか!? 【収納空間】!」
毛布を取り出して女性に差し出す。
「あ、あ、あ、……ありがとうございます」
女性は震えていたけれど、やがて毛布を肩からかけた。
いやぁ、僕の【無制限収納空間】も随分と様になってきたよ。
お師匠様やノティアの【万物解析】がなくっても、目に見えているものなら取捨選択しながら【収納】できるようになった。
でも、制御を誤ったら相手の手足とか――…それこそ首すら【収納】し、相手を死に至らしめてしまうから、慎重に使わなくちゃならないんだけどね。
■ ◆ ■ ◆
女性はとある行商人さんの奥さんで、商人ギルドへ送り届けた。
そしてゴロツキたちは、縛り上げて城塞都市の衛兵の詰め所へ突き出す。
連れて行くのにはノティアの【瞬間移動】を使う。
本当は僕が【収納】できたらいいんだけど、スキルレベル4の【無制限収納空間】では、生きた物を生きたまま【収納】するのはまだ無理らしい。
いや、一角兎みたいに野生動物に近い魔物とかならいけるんだけど、ゴブリン以上の、ある程度知能と――ステータスの【精神力】を持ったのが相手だと、抵抗されちゃうんだよね。
殺せば【収納】できることは、奥義【首狩り収納空間】で証明済みなんだけれど……ね。
その奥義にしても、風竜のような強敵相手にはまだまだ通用しない。
「またあんたたちか……」
詰め所でゴロツキたちを突き出すと、衛兵さんに嫌な顔をされた。
……そう、ここのところ毎日、強姦やら強盗やら恐喝やらを見つけては、こんなふうにして捕まえているんだよね。
街の広がりとともに、あの場所の治安は急激に悪化した。
本当、誰かが意図的に無法者たちを送り込んでるんじゃないかって邪推したくなるほど、そういう事件が後を絶たないんだよね……。
その所為で、妻子持ちで最初は妻子とともに来ていた行商人さんの中には、妻子を置いてくるようになった人も多いらしく、商人ギルド支部には治安回復の嘆願が相次いでいるのだと、ミッチェンさんが嘆いてた。
■ ◆ ■ ◆
「戻りますの?」
詰め所から出てきて、ノティアが聞いてくる。
「ううん、せっかく城塞都市に来たから、冒険者ギルドに寄ろうと思う」
「冒険者ギルドに?」
「うん。ちょっと、依頼を発行しようと思ってね」