数日、魔王国中を飛び回った。
僕はただただお師匠様とノティアとともに指定された場所に飛んで、指定された建物を【収納】し、ここまで運んで指定された地区に出した。
僕が建物を出現させるたびに、野次馬たちは「家神様ぁ~!!」と大興奮。
この場所には毎日建物が増えていき、建物と建物の間が自然と通りになっていき、宿屋が増えるや否や、見る見るうちに行商人たちが増え、その護衛の冒険者たちも増えていった。
西の森の隣に出現した『市場』は、いまや『街』になっていた。
まず、街の中心になっているのが、西の森から城塞都市にまで真っすぐに伸びた広い街道。
西の森の街道と同じ要領で、僕が敷いたものだ。
そして、西の森から東へ1キロメートルほど――徒歩10分――歩いたら川が見えてきて、その川の東隣には猫々亭。
道と、川。
このふたつが交錯地点が、人通りの多さと利便性の上で、いわばこの街の一等地。
その一等地を中心にして、マス目上に様々な宿や店舗、工房が配置されている。
どの地区に誰の建物を配置すればよいのか――店の規模や希望、他の店との力関係なども含めて――は、すべてミッチェンさんが調整してくれた。
僕はもう本当に、ミッチェンさんに言われるがまま、道を敷いて建屋を移築するだけ。
ありとあらゆる交渉、折衝、統治はすべてミッチェンさんがやってくれている。
彼は本当にすごいと思う。
■ ◆ ■ ◆
「さぁクリス様、さきほど【収納】して頂いた豪邸を、この場所に出してください!」
ミッチェンさんが指定した場所は、川沿い、猫々亭のさらに上流――ここは北の山からずっと傾斜になっているので、街全体を見下ろせるような場所だ。
「う、うん……お師匠様、お願いします」
「はいよ。【赤き蛇・神の悪意サマエルが植えし葡萄の蔦・アダムの林檎――万物解析】からのぉ【視覚共有】!」
僕は、
「【無制限収納空間】」
でお師匠様が指定した部分の土を削り、
「【無制限収納空間】」
で大きめの石、小さめの石、砂利の順に穴へ敷き詰めていき、
「【無制限収納空間】」
で生セメントを流し込み、
「【無制限収納空間】」
で石畳を敷き詰め、
「ノティア、お願い」
「分かりましたわ! ――【火炎の壁】」
いつものように焼き入れ。
そして、完成した基礎の上に、
「【無制限収納空間】!」
出てきたのは、大きな庭付きのまさに『豪邸』と呼ぶにふさわしいお屋敷。
「「「「「うぉぉぉおお!? お屋敷神様ぁ~~~~ッ!!」」」」」
いつものようにいる野次馬たちを尻目に、改めてお屋敷を見上げる。
3階建てで、部屋がものすごくたくさんありそうだ。
大きな庭がついていて、庭を取り囲む立派な塀まで一緒に移築できるのは、僕の【無制限収納空間】ならでは。
しっかし大きいなぁ!
王都の貴族街で、言われるがまま【収納】してきたんだけど……立地と言いお屋敷と言い、まるでこの街の主とか支配者が住みそうな感じなんだよね。
街の支配者と言えば、街の運営の一から十までを担っているミッチェンさんってことになるんだけど……ま、まさか。
「あのぉ……このお屋敷、誰が住むんですか?」
ミッチェンさんがにっこりと微笑み、
「あなたですよ、町長様!」
……………………は?
「えぇぇええええええぇぇぇえええええええええええええッ!?」
「このお屋敷は、ほんのお礼です。ここで上がった利益の1割は今後も収めます続けますので、ご心配なく、町長様!」
「な、ななな……ちょ、町長って――」
「あははっ! お前さん、まんまと担がれたね!」
楽しそうに笑うお師匠様と、
「あらあら、楽しそうじゃありませんか!」
ほがらかに笑うノティア。
「い、いやいやいやいや他人事だと思って!? 僕、街の統治なんてできませんからね!?」
というか、統治という意味ではお姫様であるノティアの方が向いてるんじゃないの!?
「街の運営はわたくしと商人ギルド『西の森交易路権益確保の会』で今後ともしっかりやらせて頂きますので、ご心配なく。クリス様は、我々の求めに応じて家の移築や道の敷設などをして頂けさえすれば、あとのことはすべてわたくしどもで責任もって行います」
「そ、そういうことなら……」
「さあさ、中へ! この小高い丘に立つ屋敷から、我々下々があくせく働く姿をお眺め下さいませ!」
「言い方!」
僕はただただお師匠様とノティアとともに指定された場所に飛んで、指定された建物を【収納】し、ここまで運んで指定された地区に出した。
僕が建物を出現させるたびに、野次馬たちは「家神様ぁ~!!」と大興奮。
この場所には毎日建物が増えていき、建物と建物の間が自然と通りになっていき、宿屋が増えるや否や、見る見るうちに行商人たちが増え、その護衛の冒険者たちも増えていった。
西の森の隣に出現した『市場』は、いまや『街』になっていた。
まず、街の中心になっているのが、西の森から城塞都市にまで真っすぐに伸びた広い街道。
西の森の街道と同じ要領で、僕が敷いたものだ。
そして、西の森から東へ1キロメートルほど――徒歩10分――歩いたら川が見えてきて、その川の東隣には猫々亭。
道と、川。
このふたつが交錯地点が、人通りの多さと利便性の上で、いわばこの街の一等地。
その一等地を中心にして、マス目上に様々な宿や店舗、工房が配置されている。
どの地区に誰の建物を配置すればよいのか――店の規模や希望、他の店との力関係なども含めて――は、すべてミッチェンさんが調整してくれた。
僕はもう本当に、ミッチェンさんに言われるがまま、道を敷いて建屋を移築するだけ。
ありとあらゆる交渉、折衝、統治はすべてミッチェンさんがやってくれている。
彼は本当にすごいと思う。
■ ◆ ■ ◆
「さぁクリス様、さきほど【収納】して頂いた豪邸を、この場所に出してください!」
ミッチェンさんが指定した場所は、川沿い、猫々亭のさらに上流――ここは北の山からずっと傾斜になっているので、街全体を見下ろせるような場所だ。
「う、うん……お師匠様、お願いします」
「はいよ。【赤き蛇・神の悪意サマエルが植えし葡萄の蔦・アダムの林檎――万物解析】からのぉ【視覚共有】!」
僕は、
「【無制限収納空間】」
でお師匠様が指定した部分の土を削り、
「【無制限収納空間】」
で大きめの石、小さめの石、砂利の順に穴へ敷き詰めていき、
「【無制限収納空間】」
で生セメントを流し込み、
「【無制限収納空間】」
で石畳を敷き詰め、
「ノティア、お願い」
「分かりましたわ! ――【火炎の壁】」
いつものように焼き入れ。
そして、完成した基礎の上に、
「【無制限収納空間】!」
出てきたのは、大きな庭付きのまさに『豪邸』と呼ぶにふさわしいお屋敷。
「「「「「うぉぉぉおお!? お屋敷神様ぁ~~~~ッ!!」」」」」
いつものようにいる野次馬たちを尻目に、改めてお屋敷を見上げる。
3階建てで、部屋がものすごくたくさんありそうだ。
大きな庭がついていて、庭を取り囲む立派な塀まで一緒に移築できるのは、僕の【無制限収納空間】ならでは。
しっかし大きいなぁ!
王都の貴族街で、言われるがまま【収納】してきたんだけど……立地と言いお屋敷と言い、まるでこの街の主とか支配者が住みそうな感じなんだよね。
街の支配者と言えば、街の運営の一から十までを担っているミッチェンさんってことになるんだけど……ま、まさか。
「あのぉ……このお屋敷、誰が住むんですか?」
ミッチェンさんがにっこりと微笑み、
「あなたですよ、町長様!」
……………………は?
「えぇぇええええええぇぇぇえええええええええええええッ!?」
「このお屋敷は、ほんのお礼です。ここで上がった利益の1割は今後も収めます続けますので、ご心配なく、町長様!」
「な、ななな……ちょ、町長って――」
「あははっ! お前さん、まんまと担がれたね!」
楽しそうに笑うお師匠様と、
「あらあら、楽しそうじゃありませんか!」
ほがらかに笑うノティア。
「い、いやいやいやいや他人事だと思って!? 僕、街の統治なんてできませんからね!?」
というか、統治という意味ではお姫様であるノティアの方が向いてるんじゃないの!?
「街の運営はわたくしと商人ギルド『西の森交易路権益確保の会』で今後ともしっかりやらせて頂きますので、ご心配なく。クリス様は、我々の求めに応じて家の移築や道の敷設などをして頂けさえすれば、あとのことはすべてわたくしどもで責任もって行います」
「そ、そういうことなら……」
「さあさ、中へ! この小高い丘に立つ屋敷から、我々下々があくせく働く姿をお眺め下さいませ!」
「言い方!」