「どうしよう……1本も採取できなかった」
「しーっ! マジックバッグの中に未納品のが1本ある。どうせあいつらは0本なんだ。これをさっき採取したって言えば――」
「ちょっとエンゾ、いくらクリス相手だからって、もしバレたらどうするつもり!?」
お師匠様の【万物解析】は遠い場所の音すら拾う。
そして、【聴覚共有】でお師匠様の聴覚を借りれば、エンゾたちの悪だくみを聞き出すこともできる。
しばらく森の外で待っていると、果たしてエンゾたちが出てきた。
3人そろって露骨にこちらから視線をそらしている。
3人は同い年――つまり僕よりいくつか年下だ。こうやって落ち着いて見てみると、まだまだガキなんだなって思える。
「よ、よぉクリス……お前、相変わらず0本なんだろう? こっちは――」
「――【収納空間】」
手のひらに、治癒一角兎のツノを1本、出して見せる。
「えっ!? ……は、はん! まぐれか何かで1本手に入れられたみたいだけど、こっちだって――」
「【収納空間】」
もう1本。
「えっ――」
「【収納空間】」
足元に数十本のツノを出現させる。
「なっ――」
「……【収納空間】」
エンゾたち3人を取り囲むようにして、残りの数百本を出現させる。
「合計、349本だよ。――それで? 君たちの成果は?」
「「「――――……」」」
ドナとクロエは、エンゾの後ろで震えている。
一方、呆然自失、といった様子のエンゾが、
「~~~~~~~~ッ!!」
やがて顔を真っ赤にしてから、
「……………………――――すみま、せん、でした」
頭を、下げた。
「――――ッ!!」
全身に鳥肌が立つ。
脳がしびれる。
この感覚は、いったい何なんだろうか。
とにもかくにも、エンゾの一言で、いままでずっと胸の奥底でもやもやしていた感覚がすっと晴れたのは確かだった。
「はぁ、もういいのかい?」
隣ではお師匠様が呆れている。
「人がいいと言うか何と言うか……もっとこう、頭を踏みつけてやったりとか、蹴飛ばしてやったりとかさ、そういうのはないのかね、この子は」
「…………物騒なこと言わないでくださいよ、お師匠様」
ほら、エンゾが泣き出しそうになってる。
……いきがって見せても、所詮は僕より数歳年下の、まだまだ子供なんだから。
■ ◆ ■ ◆
「そ、それで……このツノはどうやって集めやがった……んですか、クリスさん?」
エンゾがビビって敬語を使ってくる。
「お師匠様が探査系の魔法が得意でね。お師匠様が探査した結果を共有して、僕の【無制限収納空間】でこう、がばっと」
「「が、がばっと……」」
ドナとクロエが呆然と呟く。
「それで、勝負の結果についてなんだけど……」
「ひっ……」
エンゾの悲鳴。
「こっちもツノがたくさんあって実入りは十分だから、銀貨は要らない。代わりにちょっと手伝って欲しいことがあって」
「な、なんだよ……ですか?」
「【目録】――ほらここ、生きたままのヒール・ホーンラビットが300匹以上【収納空間】の中に入ったままなんだよ」
「「「い、生きたまま……ッ!?」」」
目を剥くエンゾたち。
「さ、さ、最高級のマジックバッグだって生物は入れられねぇんだぞ!?」
「わ、私、本で読んだことがある……聖級に至った【収納空間】使いは、生物をも【収納】できるって」
「じゃ、じゃあクリスは聖級魔法使い様!?」
「お~い」
「「「は、はいっ!」」」
直立不動の3人。ちょっと面白い。
「それで、キミたちも知っての通り、僕って……ほら、狩りとか、苦手だろう? だから、こいつらをちょっとずつ取り出すから、狩るのを手伝って欲しくて」
「え!? いや、その……クリス、さんの頼みならその、できれば聞きたいっすけど」
エンゾがもじもじしてる。こうして見てみると、可愛いもんだね。
「300匹以上ってのはさすがに……その、タダ働きってのは……ねぇ? 小銀貨5枚に見合わないと言いますか――」
「あぁ、それは心配しないで。肉は、とどめを刺した人の取り分にしていいよ」
「「「――えっ!?」」」
喜色満面の3人。
ま、そりゃそうだろう。食ってよし卸してよし、300匹のうちの何十匹になるか百何十匹になるかは現段階で分からないにせよ、それだけの肉が手に入れば、当分、食の心配は無くなる。
「その代わり……その、僕にさ、ホーンラビットの狩り方を、教えてもらいたいんだよ」
「「「喜んでッ!!」」」
「しーっ! マジックバッグの中に未納品のが1本ある。どうせあいつらは0本なんだ。これをさっき採取したって言えば――」
「ちょっとエンゾ、いくらクリス相手だからって、もしバレたらどうするつもり!?」
お師匠様の【万物解析】は遠い場所の音すら拾う。
そして、【聴覚共有】でお師匠様の聴覚を借りれば、エンゾたちの悪だくみを聞き出すこともできる。
しばらく森の外で待っていると、果たしてエンゾたちが出てきた。
3人そろって露骨にこちらから視線をそらしている。
3人は同い年――つまり僕よりいくつか年下だ。こうやって落ち着いて見てみると、まだまだガキなんだなって思える。
「よ、よぉクリス……お前、相変わらず0本なんだろう? こっちは――」
「――【収納空間】」
手のひらに、治癒一角兎のツノを1本、出して見せる。
「えっ!? ……は、はん! まぐれか何かで1本手に入れられたみたいだけど、こっちだって――」
「【収納空間】」
もう1本。
「えっ――」
「【収納空間】」
足元に数十本のツノを出現させる。
「なっ――」
「……【収納空間】」
エンゾたち3人を取り囲むようにして、残りの数百本を出現させる。
「合計、349本だよ。――それで? 君たちの成果は?」
「「「――――……」」」
ドナとクロエは、エンゾの後ろで震えている。
一方、呆然自失、といった様子のエンゾが、
「~~~~~~~~ッ!!」
やがて顔を真っ赤にしてから、
「……………………――――すみま、せん、でした」
頭を、下げた。
「――――ッ!!」
全身に鳥肌が立つ。
脳がしびれる。
この感覚は、いったい何なんだろうか。
とにもかくにも、エンゾの一言で、いままでずっと胸の奥底でもやもやしていた感覚がすっと晴れたのは確かだった。
「はぁ、もういいのかい?」
隣ではお師匠様が呆れている。
「人がいいと言うか何と言うか……もっとこう、頭を踏みつけてやったりとか、蹴飛ばしてやったりとかさ、そういうのはないのかね、この子は」
「…………物騒なこと言わないでくださいよ、お師匠様」
ほら、エンゾが泣き出しそうになってる。
……いきがって見せても、所詮は僕より数歳年下の、まだまだ子供なんだから。
■ ◆ ■ ◆
「そ、それで……このツノはどうやって集めやがった……んですか、クリスさん?」
エンゾがビビって敬語を使ってくる。
「お師匠様が探査系の魔法が得意でね。お師匠様が探査した結果を共有して、僕の【無制限収納空間】でこう、がばっと」
「「が、がばっと……」」
ドナとクロエが呆然と呟く。
「それで、勝負の結果についてなんだけど……」
「ひっ……」
エンゾの悲鳴。
「こっちもツノがたくさんあって実入りは十分だから、銀貨は要らない。代わりにちょっと手伝って欲しいことがあって」
「な、なんだよ……ですか?」
「【目録】――ほらここ、生きたままのヒール・ホーンラビットが300匹以上【収納空間】の中に入ったままなんだよ」
「「「い、生きたまま……ッ!?」」」
目を剥くエンゾたち。
「さ、さ、最高級のマジックバッグだって生物は入れられねぇんだぞ!?」
「わ、私、本で読んだことがある……聖級に至った【収納空間】使いは、生物をも【収納】できるって」
「じゃ、じゃあクリスは聖級魔法使い様!?」
「お~い」
「「「は、はいっ!」」」
直立不動の3人。ちょっと面白い。
「それで、キミたちも知っての通り、僕って……ほら、狩りとか、苦手だろう? だから、こいつらをちょっとずつ取り出すから、狩るのを手伝って欲しくて」
「え!? いや、その……クリス、さんの頼みならその、できれば聞きたいっすけど」
エンゾがもじもじしてる。こうして見てみると、可愛いもんだね。
「300匹以上ってのはさすがに……その、タダ働きってのは……ねぇ? 小銀貨5枚に見合わないと言いますか――」
「あぁ、それは心配しないで。肉は、とどめを刺した人の取り分にしていいよ」
「「「――えっ!?」」」
喜色満面の3人。
ま、そりゃそうだろう。食ってよし卸してよし、300匹のうちの何十匹になるか百何十匹になるかは現段階で分からないにせよ、それだけの肉が手に入れば、当分、食の心配は無くなる。
「その代わり……その、僕にさ、ホーンラビットの狩り方を、教えてもらいたいんだよ」
「「「喜んでッ!!」」」