翌日の放課後、懲りずにまた美術室に行った。何ができるってわけじゃないけど、このまま通うのを止めたら、見放したってことになってしまうかも知れないから。外は雨が降っていて風も強かった。不安なぐらい窓が揺れる。蕾は一人で絵を描いていた。また一から構図を練っているようだった。けど、手はどことなく震えていた。蕾はこちらに気がついて、手を止めた。
「...また来たんだね。」
いつも聞いている言葉と違って、何処か痛みを感じる。そっけなく、うんと答えることしかできなかった。
 僕は近くの椅子に座ると、絵をじっと見た。またしても、素人目線ながらいい絵に思える。けれど、蕾はまた手が震えて、鉛筆を落としてしまった。あっ、と思わず声を出すと蕾はこっちを見てぎこちなく笑い
「ははっ...このままだと、間に合わなくなっちゃうよね...!急がなきゃね...!
そう無理に取り繕って見せていた。けれど、やっぱり我慢できなくなったのか、涙が見えてきた。蕾はそれに気がついたのか、慌てて目を拭って、けど、溢れ出す涙を止められなくて、
「ごめんね...!泣いちゃ迷惑かけるって分かっているんだけどさ...なんだか、怖くなっちゃって...!」
そう泣いた。泣いてしまった。お誂え向きに、部屋の電気が消えて、外の明かりだけが頼りだった。
 僕は手を取った。何を考えたのか分からない。絶対後先なんて考えて無かった。恥ずかしいとか、そういう考えは無かった。
驚いている蕾に構わず、僕は言った。