(みやび)杏奈(あんな)、喧嘩しないの」

「「……先生」」

先生と呼ばれた人は彼女たちにそう優しく言うと不思議と喧嘩が止まった。

「これ以上喧嘩をするなら、私は怒るよ」

「「ご、ごめんなさい!!」」

私は唖然とした。なんと先生の鶴の一声で喧嘩が止まったのだ。

「私は良いから、まず迷惑をかけた食堂にいるみんなに謝ってね」

「「本当に、すみませんでした!!」」

喧嘩していた二人は、先生にそう言われた途端みんなに謝っていた。その様子を見ていた私は驚かずにはいられなかった。

「そう言えば、あのせんせい? って呼ばれてた人、喧嘩をあっさり止めたよね」

私たちは昼食を食べ終わったので、教室に向かって歩きながら、さっきの出来事について話していた。

「しかも、あの二人は海部、陸部の部長で喧嘩を始めたら止まらないって噂になるほど犬猿の仲だし」
「え、そうなの?!」

キクのその言葉を聞いて、さらに私は驚いた。

「じゃあ、その犬猿の仲の先輩二人の喧嘩を止めたということは……」
「うん、相当な権力者じゃないとそんなことを出来ないよ」
噂をすればなんとやら、私たちの前から先生が歩いてきた。
「こ、こんにちは」
「こんにちは!」
「やぁ、こんにちは。君たちは……さっき食堂にいた子たちだね」

私は何だか違和感を覚えた。先生はただ私たちと話しているだけなのに、何故だか先生の話し方にトゲがあるように感じたのだ。
だけど先生の声を聞いていると、何だか頭がボーッとしてホワホワして気持ちがとても安らぐのだ。

「ん? どうかしたの?」
先生が問いかけてきたので、私は首を振って何でもないと答えた後、私は何故だかこんなことを言ってしまった。

「先生、あなたは一体何を企んでいるの?」