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 拝啓


 こちらはまだまだ肌寒いですが、時々道を歩いていると早咲きの桜を見かけます。もう春の気配はすぐそこですね。


 初めに断っておきますが、この手紙を敬語で綴っていることに大した意味はありません。なんだかいつもの口調で文を書くと、無性に照れくさくなってしまいそうでした。ただそれだけです。
 



 さて、本題に入ります。私は昨日たまたまあなたの部屋で一冊のノートを見つけてしまいました。


『どこにいても、何をしていても――』から始まる文が一ページ目に書き殴られたものです。



 勝手に読んでしまって本当にごめんなさい。


 でもどうしても読みたくなってしまった。そして苦痛にまみれた文章を繰り返し読むうちに、自然とペンを取りました。私の後悔、それからあなたへ今伝えたいことを綴ろうと思ったからです。


 自己満足といわれればもちろん自己満足です。


 だってあなたにこの手紙が届くことは決してない。



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