***


 私を闇の中をさまよい、苦しんでいた私をいとも簡単に掬いあげてくれた旭。



 すべて、すべて、旭のおかげでした。その正義感に、その優しさに、その強さに、たくさん救われた。

 嫌なんて思うわけありません。



 それなのに一生分の感謝を伝えても、伝えきれない旭を、あろうことか私は傷つけてしまいました。


 これが私の後悔です。



 本当はあなたに『どうか私と同じ未来を辿らないで』と伝えようと考えていました。
 

 でもやっぱり気が変わりました。今苦しんでいる、春原香音へ。未来の春原香音からあなたに伝えたいことは、『絶望しないで』ということ。


 終わりのない苦しみはない。必ずどこかに光はある。


 旭を傷つけ、元々の関係に戻れない今の苦しみも、永遠に続くわけではない。絶望せずに、私は私にできることをすればいい。


 長い時間をかけてそんな考えに至りました。

 
 この手紙はあなたに、そして私の弱い心に戒めとして届けます。


 私は私の手で未来を切り開いていく、という決意を曲げないように。


 そしていつか自分だけではどうしようもない問題に直面している、あなたのような人がいたら、手を差し伸べられる旭のような人でありたい。


 あなたがいたから、今の私がある。ありがとう。過去の苦しみさえも糧にして私は前を向きます。



追伸

 コロナのせいで最悪なスタートを切ったこの3年間も、コロナのおかげで私はできないことが多い中、日常に溢れる小さな幸せをたくさん見つけられました。
 

 明日卒業式を迎える今日、それをしみじみと感じます。


 あなたには明るい未来が待っています。どうか希望を捨てないで。



 2020年某月 春原香音へ


 2023年3月 春原香音より



***