喪ったからこそ存在の大きさを知った。喪ったからこんなにも叶わない未来を切望している。
 人間は本当に無い物ねだりだ。

「秋雄の夢は?」

「秘密ー」

 まるで距離を取られたようで寂しくなる。押し黙っていると秋雄は私の背中に頬を寄せた感覚がした。

「ありがとな。叶えてくれて」

 その言葉に、笑みが零れる。

「大袈裟だよ」

「でも、俺にとっては夢だったから」

 優しい声に秋雄が後ろで微笑んでいるのがわかる。

「ナツは、これから夢を持てよな」

「この歳で?」

「歳は関係ねーよ。生きている限り夢は持ち続けることができるだろ?」

 __生きている限り。
 秋雄は本当にわかってない。
 生きているからこそ、現実に絶望する。将来に希望を見出だせなくなる。

「次に会う時までの課題なー」

 なんて偉そうに言う秋雄に、片手運転は危険とわかりながらも一瞬手を挙げる。