「やっぱり、ナツは食ってる時の顔が一番可愛いよな」

 なんて、テーブルに頬杖を付きながら私の顔を眺めている。
 __可愛い。
 何故、秋雄に言われるとこんなにもムズ痒く頬が緩むのだろう。

「照れてる?」

「煩い」

 外方を向く私を指差しながらケラケラと笑っている姿を横目に、残りのかき氷を口の中に掻き込んでいると秋雄が何か思いついたようにニカッと笑う。

「ナツ。チャリ乗りたい」

「運転できるの?」

「無理。だから、ナツの後ろに乗る」

 そう言うと、突然秋雄が外方を向く。

「……二人乗りって、憧れてたんだ」

 綺麗な横顔を隠す髪からチラリと見える少し尖った耳は、ほんのりと赤みを帯びている。
 __二人乗り。
 そんなベタなシチュエーションに憧れていたなんて知らなかった。

 確かに私達は割りと良い子に分類される人間だったから、学校で禁止されている行為を人目を盗んでまでやることはなかった。だけど、今ならその願いを叶えてあげることはできる。

「いいよ。幽霊は軽いから」

「幽霊じゃなくてもナツより軽い」

「煩い」

 お会計を済ませると秋雄と他愛のない話をしながら店を出る。
 __今度、訪れる時は一人。
 そうやって、突然意識が未来へと向いてしまうからタチが悪い。今を大切にしたいのに、いつか訪れる別れを意識せざるを得ない。何故なら、自室の引き出しにしまった写真の枚数はあと……。

「ナツー! 本屋あったぞー!」

 少し先で立ち止まる秋雄は、まるで私を夢の中に引き戻すように手招きをしている。

「瞬間移動禁止!」

 文句を言いながら自分から駆けていくその場所は、いつだって優しさで溢れている。