「本日の主役」
すぐに戻ってくると、手に持っていた写真立てをテーブルの真ん中に置く。それは、おばさんの家にあった秋雄の写真と同じ。
「実は毎年、秋雄の命日に家で集まってたの」
緊張した面持ちでソファーに腰を下ろした真由に、驚きながら隣にいる佐藤を見るとそっと微笑む。
「最初はもっと人数がいたから居酒屋とかでやってたんだけどな。それぞれ地元を出たり結婚したり環境が変わって、人数が少なくなってからは毎年家でやるようになったんだ。秋雄のおばさんも参加してくれてたんだけど、七回忌を目処に「もう充分だから」って」
「俺達のことを気遣ってくれるのは嬉しいけど充分なんてことはない。だから、これから何十年経とうが集まる気でいるんだ」
ぶーちゃんと佐藤と真由。三人は顔を見合せると互いに頷き合う。
私は知らなかった。関係が異なるように、死を偲ぶ手段も様々あるということを。きっとみんなのことだから、こうして集まって秋雄の話に花を咲かせていたに違いない。ジメジメとした雰囲気を嫌う秋雄にとっては、これが一番の弔い方なのだろう。なのに私は……。
「今年は、命日の日に手伝いが入っちゃってさ。秋雄に祟られるわー」
場の雰囲気を和ませるように、ぶーちゃんが私の背中をバシリと叩くと豪快に笑う。だけど上手く笑うことのできない私は、もう無理に笑顔を造ることはやめた。
“__いいね。あんなことが「あった」なんて。簡単に過去にできる人は”
どうして、自分の悲しみにしか気づけなかったのだろう。
恋人を亡くした私。
幼馴染みを亡くした真由。
親友を亡くした佐藤。
クラスメートを亡くしたぶーちゃん。
それぞれ立場が違うだけで大切な人を失ったことに変わりはない。秋雄の死を悲しんでいないわけがないのに。
「みんな、忘れてないよ」
真由が私の目を見つめながら震える唇でそっと呟く。
「忘れられるはずがないよ」
俯き細い肩を震わせる姿に自分の愚かさを知る。真由の言葉が全てのように感じた。
みんな、乗り越えたわけじゃない。乗り越えようとしているんだ。
すぐに戻ってくると、手に持っていた写真立てをテーブルの真ん中に置く。それは、おばさんの家にあった秋雄の写真と同じ。
「実は毎年、秋雄の命日に家で集まってたの」
緊張した面持ちでソファーに腰を下ろした真由に、驚きながら隣にいる佐藤を見るとそっと微笑む。
「最初はもっと人数がいたから居酒屋とかでやってたんだけどな。それぞれ地元を出たり結婚したり環境が変わって、人数が少なくなってからは毎年家でやるようになったんだ。秋雄のおばさんも参加してくれてたんだけど、七回忌を目処に「もう充分だから」って」
「俺達のことを気遣ってくれるのは嬉しいけど充分なんてことはない。だから、これから何十年経とうが集まる気でいるんだ」
ぶーちゃんと佐藤と真由。三人は顔を見合せると互いに頷き合う。
私は知らなかった。関係が異なるように、死を偲ぶ手段も様々あるということを。きっとみんなのことだから、こうして集まって秋雄の話に花を咲かせていたに違いない。ジメジメとした雰囲気を嫌う秋雄にとっては、これが一番の弔い方なのだろう。なのに私は……。
「今年は、命日の日に手伝いが入っちゃってさ。秋雄に祟られるわー」
場の雰囲気を和ませるように、ぶーちゃんが私の背中をバシリと叩くと豪快に笑う。だけど上手く笑うことのできない私は、もう無理に笑顔を造ることはやめた。
“__いいね。あんなことが「あった」なんて。簡単に過去にできる人は”
どうして、自分の悲しみにしか気づけなかったのだろう。
恋人を亡くした私。
幼馴染みを亡くした真由。
親友を亡くした佐藤。
クラスメートを亡くしたぶーちゃん。
それぞれ立場が違うだけで大切な人を失ったことに変わりはない。秋雄の死を悲しんでいないわけがないのに。
「みんな、忘れてないよ」
真由が私の目を見つめながら震える唇でそっと呟く。
「忘れられるはずがないよ」
俯き細い肩を震わせる姿に自分の愚かさを知る。真由の言葉が全てのように感じた。
みんな、乗り越えたわけじゃない。乗り越えようとしているんだ。