「林檎娘。お前も喉乾いただろ」

 我が物顔で、ソファーにふんずり返っていたぶーちゃんが立ち上がる。

「ここは、ぶーちゃんの家なの?」

「まあ、毎年集まってるからな。そんなようなもんだ」

 そう答えると真由のいるキッチンへと消えていった。
 __毎年?
 真由と佐藤とぶーちゃん。三人は小学校から一緒だったとはいえ、毎年集まる程に仲が良かった記憶はない。

「こっちは、準備できたぞ」

 ぶーちゃんが、硝子ビンに入った黄色いジュースと人数分のコップを手に戻って来る。

「うちの林檎ジュース?」

 咄嗟に小林農園のラベルを見つけた私にぶーちゃんが「さすがー」と、笑う。

「マオもー」

 どこからやってきたのか私の顔を見てニコッと笑う。先程の険悪な雰囲気は伝わっていなかかったようでホッとする。
 キッチンから色々なおつまみの乗ったトレイを片手に戻ってきた真由は、テーブルの真ん中に櫛形にカットされた山盛りの林檎の乗ったお皿を置く。その光景は、まさにデジャブ。実家にいるような気分だ。

「ナッちゃん。はい」

 マオちゃんが私のコップに林檎ジュースを注いで渡してくれる。

「あ、ありがとう」

 よくわからずキョロキョロしていると、反対側のソファーに腰を下ろした佐藤が笑いながら口を開く。

「真由が、毎年この林檎とジュースはママの親友の夏実の家が作ってるって教えてたら……」

「……夏実が言えなくて、ナッちゃんになったの」

 途中で言葉を紡ぐ真由は私の顔をチラッと見る。
 __親友。
 連絡をとらなくても私のことをずっとそう思っていてくれたなんて……。

「……真由」

「よし! じゃあ今年も秘密兵器を出しますか!」

 また、ぶーちゃんによってタイミングを失った。愕然としていると、それがわかったのか佐藤はクスクスと笑いながら隣の部屋へと消えていった。