「いきなりは変われないから、私はこれからも人を疑うと思う。理解されないってひねくれた考え方もやめられない。でも、逃げるのだけはやめる」

 __過去から。未来から。そして、秋雄から。

「孤独に浸るのはもうやめるから、そんな顔しないでよ」

 泣きそうな顔をするなんて狡いと思った。だけど、秋雄は私の未来を心配してくれているのだ。
 学生時代から秋雄に引っ付いていないと、クラスにも馴染めなかったし友達もできなかった。けれど、もう秋雄はいない。こうして、また再会できても二度目の別れが訪れることを私達は知っている。

「大人なんだから一人立ちしてもらわないとな」と、笑う姿に胸が軋む。
 一人立ちなんかしたくない。もう少し困らせていたい。そうしたら秋雄は、まだ側にいてくれるかもしれない。そう思いながらも、悲しませたくない気持ちも本当で静かに頷く。

「……頑張るよ」

 呟いた瞬間、そっと頬を撫でる優しい風に顔を上げる。すると、秋雄は何の前触れもなく消えていた。

「……また、明日」

 私は秋雄の真似をして芝の上にゴロンと横になる。もう綺麗な姿を見せたい相手はいない。ならば、何も気にすることはない。大の字をかいて思いっきり深呼吸をする。

「……気持ちいい」

 真上にはどこまでも蒼い空が広がり、真っ白な雲が浮かんでいる。
 __この風景を秋雄と見たかった。
 後悔しても遅い。私は景色の共有よりも、自分が可愛く見られる方を優先した。そして結果失敗に終わった。