「確かに、今があるのは秋雄の勇気のお陰だよ。でも、どうして仲良くなれないと思いながらも話しかけてくれたの?」

 すると、切れ長の瞳をふっと優しく細める。

「仲良くなれないとか。分かり合えないとか。それ以前に、俺はナツと仲良くなりたかったし分かり合いたかった。だから、相手が理解してくれるかしてくれないかよりも自分の気持ちに素直に動いただけ」

 何だか秋雄らしくて思わず苦笑する。
 天の邪鬼で弱気な私には真似できない。今も私の方が歳上なのに、二十二歳になってもその考えに追い付くことはできない。いや、歳をとればとる程に秋雄からは離れていくのかもしれない。

「でも、これだけはナツに言いたい」

 秋雄は上半身を起こすと私の瞳を見据える。

「確かに傷つくことは怖いかもしれないし「どうせ、理解してくれない」って、思うのはナツの勝手だけど」と、言葉を切ると今にも泣き出しそうな顔で微笑む。

「本当は一人じゃないのにお前の居場所だってちゃんとあるのに、自分から逃げて孤独になる道を選んでは欲しくない」

「……逃げてなんか」

 その瞬間、ふとみんなの顔が浮かぶ。
 __農協の人々。
 __秋雄のおばさん。
 __真由。
 避けていたのは逃げていた証拠だ。

「もっと、周りを信じろよ」

「信じたら、それはいつか裏切られる日へのスタートだよ」

「うわ! ひねくれてる!」と、大袈裟に仰け反る秋雄をギロリと睨み付ける。だけど、やっぱり秋雄はいつも正しい。