紅色の髪にヘラヘラとした笑みを浮かべているくせに根は真面目で、頭の回転は速くスポーツもできて、誰にでも思いやりを持って接する。長年側にいても知り尽くすことのできない側面をもった秋雄を、知りたいと思ったら最後。どんどん嵌まってしまう。

「可哀想って言葉を使うなら「哀れみ」は可哀想にと相手を想い自分も心を痛めること。「同情」は可哀想にと相手を思いやろうとすること。どちらも共通することは他人事じゃないってこと」

「え?」

「無責任に、ただ可哀想と言ってるわけじゃない。自分のことのように心を痛めたり思いやろうとしている。それって本当に嫌なことか?」

 __相手の為に心を痛める。
 __相手のことを思いやる。
 その言葉は当然嫌な言葉ではない。

「母さんにも思ったけど、大人はプライドっていうつまらない物のせいで相手の気持ちを素直に受け取ることができないみたいだな。それって、つまらないよな。貰える物は貰っておけばいいものを」

 秋雄は、いつもの決まり文句を言うと芝の上にゴロリと横になる。

 確かに「ありがとう」と、素直に受け取ることができたら楽なのかもしれない。だけど大人になってからは「大丈夫?」と、いう労りの言葉すら素直に受け取ることができなくなってしまったように思う。
 子供の頃は心配されることも労られることも、気にしてもらえているようで素直に嬉しいと思えていたのに。