「ナツは素直に感情を言葉で表現した方がいい。あと、元気だと思われたくないなら元気そうにするな」

「だって、哀れまれたり同情されるのは嫌だから」

 秋雄が死んで幾度となく「可哀想に」と、いう言葉を浴びた。しかし、その言葉は何の意味も持たない。
 __無責任で無意味な言葉。

「哀れみと同情って、そんなに悪いものか?」

 秋雄は、どこまでも澄んだ真っ青な空に向かってうんと伸びをする。

「父さんが病気で死んでから親戚の人達がこぞって「可哀想に」って、俺にお菓子やら玩具やら買ってくれたから。逆に有りがたかったけどな」

「はあ」

 何とも幼稚な考えに間抜けな返答をすると秋雄はケラケラと笑っている。

「ナツは、ひねくれてるから」

「さっきから色々と失礼だな」

「お前だって、人の足が臭いだの失礼だろ」

「だって本当のことだし」

「俺だって本当のことだし」

 そう言い切ると今度は真面目な顔で私の目を見つめる。

「ナツは哀れみと同情の意味をちゃんと理解してるか?」

「どちらも、相手のことを可哀想と思うことじゃないの?」

「まあ、そうだけど。ただ可哀想と思うだけじゃないんだぞ?」

「え?」

「俺もさ、父親が死んだ時に母さんが同情だの哀れみだのって言葉を遣うもんだから辞書で調べたんだよ」

 その行動が何とも秋雄らしい。
 気になったことは、すぐに自分で調べて知識として蓄える。