昔は田畑ばかりだった地帯には大きなスーパーやパチンコ店にカラオケ。そしてホームセンターに衣料品店が立ち並ぶ。幼い頃に蛙を捕まえた小川はもうなくなってしまった。しかし遠くの山々だけは、今も変わらずこの町を見守っている。
 私は、ふと運転席でハンドルを握る父の横顔を盗み見する。

 ……恥ずかしいは言い過ぎたかな。

 幼い頃はいつも大きな声で笑う元気な母と手拭いを首に巻き軽トラックを運転する父が自慢だったのに……。

 __私もまた、この町と同じように変わってしまった。

「夏実。今日は八月二日でしょ? 今年はお盆が終わるまでこっちにいるって言ってたけど平気なの?」

 後部座席から身を乗り出す母に苦笑する。

「あれ程までに帰って来て欲しいって言ってたじゃない」

「それは嬉しいんだけどね。いつもはお盆の三日間だけで帰っちゃうから」

「たまには、いいかなって」

 本当は「あの件」があったから、いつもより早く実家に戻った。だけどそれは言いたくないから無理に笑顔を造る。
 
「まあ、大丈夫ならいいんだけど。啓太(けいた)君は元気?」

 ドキリと跳ねる心臓に思わず視線を窓の外に向ける。今は母の顔をまともに見られない。
 
「うん。帰り迎えに来てくれるから、その時に顔を出すと思う」

「そう」

 ホッとしたのか嬉しそうに笑った母は、やっと前のめりになった上半身を後部座席に預ける。そして私は人知れず溜め息を吐いた。