「夏実ちゃん。相変わらず下手っぴだねえ」

「本当だな。そのへっぴり腰は治らんのかねえ」

 容赦のない言葉に幼い頃を思い出し苦笑する。

「もっと、腰を落としてごらんなさい」

「……はい」

「もっと、しゃもじを動かして」

「は、はい」

「ほれ。しっかり音楽を聴いて」

「は、はい!」

「そうそう。良くなってきたじゃないかい」

 みっちりと、行列の中でレッスンを受けた私は最後にはまだ見られる程度には成長していた。

「随分と上達したねえ」

「昔から、素質はあるとは思ってたんだよ」

 農協の人達は笑いながら首に掛けた手拭いで汗を拭っている。そして、私に連合の名前の書かれた真新しい手拭いを差し出した。

「一生懸命踊ってくれた記念。ほれ、これで拭きな」

 躊躇することなく手拭いを首に巻くと、一応メイクだけは落ちないように汗を拭う。

「お陰様で、にいい運動になりました」

「それは良かった。楽しかったかい?」

「はい。参加できて良かったです」

 素直に答えると農協の人達はみんな豪快に笑っている。
 前までの私なら、その姿を見て恥ずかしいと思ったに違いない。だけど今は、心の底から楽しそうに笑うその顔がとても眩しく見えた。

「また、参加してねえ」

「お父さんとお母さんによろしくね」

「はい。ありがとうございました」

 挨拶をしてから列の外に出ると、すぐ横で見ていた秋雄がまだニヤニヤと笑っている。

「どう? 大人の底力よ」

「まあ、最初は変わりなかったけどな? でも、頑張ってたな」

「うん。頑張ったし楽しかったよ」

 正直、一人で参加するなんて有り得ないと思っていた。けれど、久しぶりに再会した農協の人達が温かく迎え入れてくれた。そして躍りを教えてくれた。結果、楽しい時間を過ごすことができた。