今よりぽっちゃりとした身体。ボサボサの眉毛。毎日キャラ物のTシャツとジャージを着て、身嗜みを気にせずに生きていた。今思うと相当ダサい。
 だけどこの心は、今よりも多くの幸せを感じていた。人目も気にせずに好きな服を着て。好きな物を食べて。好きな人達と笑い合って……。

「所で啓太さんとは結婚の話は進んでるの?」と、尋ねる母に私は心の中で溜め息をつく。

 いつから、未来の話に心が弾まなくなったのだろう。
 将来何になりたいのか。将来何をしたいのか。どんな大人になりたいのか。昔は、友達と未来を想像しては心を踊らせていた。
 なのに、実際大人になってみるとその先の未来に不安しか抱かない。
 __老後のこと。
 __農園のこと。
 現実的な問題がこの身体と心に重くのし掛かる。

「まだ、忙しいし無理かな」

 __忙しい。
 お決まりの言い訳をする自分自身に、また溜め息が漏れた。
 しかし母は、ただ「そう」と返事をしただけで深く尋ねてくることはなかった。
 
 “__秋頃、籍を入れないか”

 啓太は忙しいのに、その合間にも二人の未来のことを考えてくれている。それはとても幸せなことだとわかりながらも、この心が動くことがないのは何故だろう。
 同棲。結納。式場探し。結婚式。
 いざ結婚となれば、これから考えなければならないことが増えるから?このままの距離感が、心地よいから?
 正直、自分の気持ちが私にもよくわからないのだった。