「もしかして、これが関係してるんじゃない?」

「お、これ」

 差し出した写真を秋雄は懐かしそうに目を細めながら眺めている。

「昨日も今日も、秋雄は写真を撮った場所に同じ服装で現れてる」

「本当だ」

「もし、それが真実なら明日は」

「びんずる」

 秋雄は写真を見せる前に即答した。
 びんずるとは、長野市を代表とする夏のイベントだ。毎年八月の第一週の週末に行われる有名なお祭りで、歩行者天国では色々な連合の人達が共通の踊りを踊りながら練り歩く。謂わば、大規模な盆踊り。

 しかしその踊りは独特で、しゃもじを打ち鳴らしながら踊る。なかなか難しく小さい頃はよく今は亡き祖母に教えてもらった。沢山の屋台も出ていて、長野市の子供達は毎年夏になるとびんずるを楽しみにしている。

「よく覚えてたね」

 秋雄にとったら昨日のような感覚なのだろうか。私にはわからないけれど、忘れっぽい秋雄が明日の予定を覚えていたことが意外だった。そう。秋雄は忘れっぽい。だから私の……。

「忘れるわけがないだろ」

 幽霊になった秋雄は何故か自信に満ちた顔をしている。

「だって、あれがナツとの初デートだったから」

 確かに付き合って初めて二人で出掛けたのが、びんずるだった。しかし秋雄がデートと捉えていたとは今知ったけれど。