「大人って、つまらないな」
「え?」
「証拠とか根拠とか。子供の時にはそんなものに縛られずに、自由な答えがあっただろ?」
「そ、それは」
言い返す言葉が見つからなかった。秋雄の言う通り幼い頃の私は「幽霊がいたらいいな」って思っていた。だから「幽霊はいる」と信じていた。そこに、根拠も証拠も存在しない。ただ自分が望む答えを信じる自分が存在していた。
「でも、私はもう二十二歳だから。大人には根拠と証拠が必要なの」
「へえ。二十二歳ね。何か老けたもんな」
ニヤニヤと笑う姿にムッとしていると、父が真っ赤な林檎が沢山入ったコンテナを抱えて秋雄のすぐ後ろを通りすぎていく。
「夏実。そんな所で何突っ立てるんだ?」
「いや。ちょっと」
言葉を濁すと不思議そうな顔をしながら、裏にある倉庫へと去って行った。
「俺はナツにしか見えないみたいだな」
「そうみたいだね」
「不思議だよなー。どうなってんだかなー」
秋雄は顎に手を当てながら明後日の方向を向いている。
「昨日も気づけば公園にいたし。今日なんて気づけばナツの家の玄関の前にいたんだぞ? これこそ、真のミステリー。だっだっだーん!」
「……はあ」
陽気な幽霊は火曜日にやるサスペンスドラマのミュージックを口ずさんでいる。しかし、呆気にとられながらも私には一つの仮説が浮かんでいた。
「ちょっと、待ってて」
「おう」
急いで家の中に戻ると自室の机の上にあった写真を手に取る。そして、咄嗟に左手の薬指から婚約指輪を抜き取ると引き出しの中にしまった。
「お客さんでも来たの?」
「ううん。何でもない!」
リビングを通りすぎる時、変わらずテレビに夢中になっていた母が私に声をかけてきた。けれど、適当に誤魔化して玄関へと戻る。
「え?」
「証拠とか根拠とか。子供の時にはそんなものに縛られずに、自由な答えがあっただろ?」
「そ、それは」
言い返す言葉が見つからなかった。秋雄の言う通り幼い頃の私は「幽霊がいたらいいな」って思っていた。だから「幽霊はいる」と信じていた。そこに、根拠も証拠も存在しない。ただ自分が望む答えを信じる自分が存在していた。
「でも、私はもう二十二歳だから。大人には根拠と証拠が必要なの」
「へえ。二十二歳ね。何か老けたもんな」
ニヤニヤと笑う姿にムッとしていると、父が真っ赤な林檎が沢山入ったコンテナを抱えて秋雄のすぐ後ろを通りすぎていく。
「夏実。そんな所で何突っ立てるんだ?」
「いや。ちょっと」
言葉を濁すと不思議そうな顔をしながら、裏にある倉庫へと去って行った。
「俺はナツにしか見えないみたいだな」
「そうみたいだね」
「不思議だよなー。どうなってんだかなー」
秋雄は顎に手を当てながら明後日の方向を向いている。
「昨日も気づけば公園にいたし。今日なんて気づけばナツの家の玄関の前にいたんだぞ? これこそ、真のミステリー。だっだっだーん!」
「……はあ」
陽気な幽霊は火曜日にやるサスペンスドラマのミュージックを口ずさんでいる。しかし、呆気にとられながらも私には一つの仮説が浮かんでいた。
「ちょっと、待ってて」
「おう」
急いで家の中に戻ると自室の机の上にあった写真を手に取る。そして、咄嗟に左手の薬指から婚約指輪を抜き取ると引き出しの中にしまった。
「お客さんでも来たの?」
「ううん。何でもない!」
リビングを通りすぎる時、変わらずテレビに夢中になっていた母が私に声をかけてきた。けれど、適当に誤魔化して玄関へと戻る。