「あなたに問題」

 私は片手を腰に当てると、もう片方の手の人差し指をビシッと立てる。

「私達はずっと仲が良かった?」

 すると最初は驚いた顔をしていたが、すぐにソックリさんが口を開く。

「小学校の高学年の頃。一回、喋らなくなった時期があった」

「正解」

 多感な時期を迎えた私達は、少しづつ距離ができるようになった。いつも一緒にいることが当たり前だったはずが、何故か意識するようになった。そしてお互いの気持ちに気づき始めた。

「じゃあ、何がきっかけでまた話すようになった?」

 すると、今度は即答する。

「俺が中学の入学式の日に、また一緒に学校に行こうって言った。それから少しづつ一緒に過ごす時間が増えていった」

「正解。じゃあ、私達が付き合ったのは?」

「八月二日。昨日の公園で俺から告白した」

 十三歳の誕生日を目前とした十二歳の夏。九年前の昨日。私達は恋人同士になった。

 ソックリさんは信じようとしない私を不安そうな瞳で見つめている。しかし、もうここまで確かめたら認めざるを得ない。

「……本当に秋雄なんだね」

 恐る恐る差し出された手を掴もうとした瞬間、この手が秋雄の手をすり抜けていく。身体が透けているわけではないのに触れることはできないようだ。

「幽霊ってこと?」

「正解」

 昨日の問題に私がやっと答えると秋雄は笑みを浮かべながら頷く。しかし、すぐに綺麗な眉間に皺を寄せると薄い唇を尖らせた。

「昨日の時点で何で信じないんだよ」

「それは、さすがに無理があるよ」

「こんな瓜二つの人間なんてドッペルレンジャーぐらいだぞ?」

「それを言うならドッペルゲンガーね」

 戦隊もののような名前を口にする姿に愕然としながらも、まさしく秋雄本人だと確信する。

「昨日の時点では幽霊っていう根拠がなかったでしょ?」

 真面目に答えると秋雄は盛大な溜め息を吐きながら、やれやれと首を横に振る。