私は全部で十一枚ある写真を一枚一枚フローリングの上へと並べていく。キラキラとしたあの頃の日々は、今の私には眩しすぎて思わず目を細めていると……。

「……あった」

 見つけたのは、あの公園のベンチに座って二人で撮った写真。右手でピースをしながら八重歯を見せて笑っている秋雄。その隣で今よりも純朴な笑みを浮かべる私。

 __2014.8.2

 写真の裏に書かれた日付けは、ちょうど九年前の今日だった。そして、私は写真に映った秋雄の服装を凝視する。

 「……やっぱり」

 襟縁と袖口だけが紺色の半袖の白シャツに紺色のデニム。それは、今日あの公園で出会ったソックリさんと同じ服装だった。

「……何なのよ」

 過去の秋雄と同じ顔をして同じ服を着て同じ場所にいた。しかし、それだけで本人だと断定はできない。

「……はぁ」

 何だか一気に疲れが襲ってきた。私はベッドの上に、そのまま仰向けに倒れ込む。
 炎天下の下で我武者羅に自転車を漕いだ。おばさんと久しぶりに話して公園ではソックリさんに遭遇して。久しく微動だにしなかった心が忙しなく動いたせいかもしれない。
 そっと目を閉じると瞼の裏には紅色の髪が揺れていた。

「……秋雄」

 試すようにそっと呟いてみる。しかし本人は現れない。そんな子供染みた実験をしている自分に苦笑しながらベッドに身を委ねていると心の中の荒波が穏やかになっていく。長年愛用しているベッドは違うな。と、そんなことを思っているうちに気づけば心地よさに負けた私はそのまま眠りについていた。