聞き慣れた県歌が新幹線の車内に流れる。それを合図に荷物を手に席を立つ乗客達。夏休みシーズンということもあり帰省土産や大きな荷物が目立つ。私も凝った肩と重い首を回すとキャリーバッグを片手に立ち上がり通路にできた列に並んでいると、ゆっくりとスピードを落とした車内には到着のアナウンスが流れた。
開かれたドアから、もわりとした熱気が流れ込む。このまま冷房の効いた車内で優雅に涼んでいたいが私は足にへばりついた白いスカートの裾を振り払うと、溢れ出す人並みに流されながらキャリーバッグを片手に新幹線の改札口を出た。
「夏実!」
ガヤガヤとした人混みの中を掻き分けて聞こえてきた大きな声に思わず溜め息を漏らす。
グレーのTシャツにデニムという出で立ちの母が、こちらに向かって大きく手を振っていた。
「大きな声で呼ばないでよ。恥ずかしい」
咎める為にそそくさと近づくと、母はハッとした顔で口元を手の平で隠すと両肩をヒョイッと上げた。
「私だって、もう二十二歳なんだよ? 子供じゃないんだから止めてよ」
「ごめん。つい嬉しくて」
「たったの、一年ぶりでしょ」
「たったのって待っている方からしたら長いのよ。それに東京から長野なんて一時間半ぐらいよ? 近い方なのに」
「はいはい。学業に就活に忙しかったんだからしょうがないでしょ」と、もっともらしい理由にさすがの母も口を閉じた。
開かれたドアから、もわりとした熱気が流れ込む。このまま冷房の効いた車内で優雅に涼んでいたいが私は足にへばりついた白いスカートの裾を振り払うと、溢れ出す人並みに流されながらキャリーバッグを片手に新幹線の改札口を出た。
「夏実!」
ガヤガヤとした人混みの中を掻き分けて聞こえてきた大きな声に思わず溜め息を漏らす。
グレーのTシャツにデニムという出で立ちの母が、こちらに向かって大きく手を振っていた。
「大きな声で呼ばないでよ。恥ずかしい」
咎める為にそそくさと近づくと、母はハッとした顔で口元を手の平で隠すと両肩をヒョイッと上げた。
「私だって、もう二十二歳なんだよ? 子供じゃないんだから止めてよ」
「ごめん。つい嬉しくて」
「たったの、一年ぶりでしょ」
「たったのって待っている方からしたら長いのよ。それに東京から長野なんて一時間半ぐらいよ? 近い方なのに」
「はいはい。学業に就活に忙しかったんだからしょうがないでしょ」と、もっともらしい理由にさすがの母も口を閉じた。