「その答えはつまらない」

「はい?」

「だから、ナツの答えはつまらない」

「つ、つまらないって! それが真実なんです!」

 思わず声を荒げる私に今度はやれやれと首を横に振る。

「昔のナツは幽霊を信じてたじゃないか。夜中に家を抜け出して林檎農園を散歩して一緒に幽霊を探しただろ?」

「そ、それは子供の頃の話! って、何であながそのことを知ってるんですか! もう意味がわからないっ!」

「え、ちょっと!」

 私はソックリさんから逃げるように走り出すと、公園の前に止めていた自転車に飛び乗る。そして立ち漕ぎのままガムシャラに全速力で家まで戻った。

「た、ただいま!!」

 勢い余って玄関に雪崩れ込むと、母が心配そうにリビングから小走りでやってくる。

「お母さん! さっき公園に変な人がいた!」

 すると母はエプロンで手を拭きなが小首を傾げる。

「公園? あんた、北村さんの家に行ってたんじゃないの?」

「行ったよ! その後に駅前にある小さな公園に寄ったら、秋雄を名乗るソックリさんがいて! それで!」

 酸素の足りない金魚のように口をパクパクと動かしながら、必死に説明する私の顔を見て何故か母がそっと優しく微笑む。

「帰って来てるんじゃない? そろそろお盆だしね」

 そう言うと、そそくさとリビングに戻って行く背中を呆然と見つめる。

 “__ナツ”

 確かにあの人は秋雄と同じ顔で。秋雄と同じ声で。秋雄と同じように私の名前を呼んだ。そして、秋雄との過去の思い出も知っていた。