砂場と狭いグランドにはベンチが一台。遊具もないこの公園で小学生の頃はよく秋雄と一緒に木登りをしていた。秋雄と一緒なら道具なんて必要なかった。どこにいても楽しかった。
 今なら、この公園を告白の場所に選んだ秋雄の気持ちがわかる気がする。
 __過去との決別。
 幼馴染みとしての思い出が残る場所で、秋雄は過去の私達の関係と決別をした。そして私も、そうなることを望んだ。秋雄の特別になりたかった。
 だけどもし、そんなことを望まなかったら?もし、私達が幼馴染みのままだったら?秋雄は今でも……。

「ナツ」

「はい?」

 名前を呼ばれ条件反射で振り返る。しかし私の名前を「ナツ」と呼ぶ人物はこの世界にはもういない。

「お、俺が見えるのか?」
 
 戸惑っているその人の顔を見た途端、思わず息を止める。
 秋の色に似た紅色の髪。少しつり目がちな瞳。キラリと光る八重歯。その全てを私は知っているけれど……。

「……ありえない」

 パニックに陥る私の姿に相手は盛大な溜め息をつく。

「こんな、ソックリさんなんていないぞ?」

「いや。だって……」

「死んだ人間が現れたとしたら、それは何でしょう?」

 突然、片手を腰に当て片方の手で人差し指を立てる。それは紛れもなく、私にナゾナゾを出す時の秋雄のお決まりのポーズだった。

「……待って。あなたが秋雄だなんて絶対にあり得ない」

「何で?」

「だって、秋雄という人物は死んだから」

 すると、目の前にいるソックリさんは不服そうに唇を尖らされる。